image はまぐりご飯 800x350 - 〈 復興わがまち ご当地ごはん! 〉<br> 【第68回】<br> 茨城県「はまぐりご飯」

Photo by くにろく

文・料理:大塚 環(本紙特約ライター/防災士)

 茨城県ではマグニチュード(以下、M)5~6の地震は断続的に発生していますが、M7.0以上の地震は数十年間発生していません。政府の地震調査研究推進本部のホームページ(以下、HP)茨城県の地震活動の特徴によれば、同県に被害を及ぼすのは、海で発生する地震(関東地方東方沖合や相模湾から房総半島南東沖のプレート境界付近で発生する地震)と、陸で発生する地震で、特に県の南西部では地震活動が活発だとのことです。

 過去に県内で発生した規模の大きな地震の一つが、明治28年(1895年)の「霞ケ浦付近の地震」(M7.2)です。これは平成7年(1995年)の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)と同規模のマグニチュードでしたが、死者は4名、家屋全壊は37戸でした。また大正10年(1921年)の「竜ヶ崎付近の地震」はM7.0ですが、この時も被害はほとんどなかったと言われています。昭和49年(1974年)8月4日の茨城県南部の地震はM5.8、震度4、死者1名、負傷者1名となり、瓦が多数落下しました。

 そして平成23年(2011年)3月11日に東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)が発生しました。震源地は三陸沖で離れていましたが、M9.0の巨大地震だったために茨城県でも震度6弱を記録し、同県にも大津波警報が出されました。大洗町には5回も津波が押し寄せ、高台への避難を呼びかける消防のサイレンが鳴り響いていたそうです。
 茨城県の犠牲者は震災による直接死が24名、震災関連死が42名、行方不明1名、重傷34名でした(茨城県HP平成23年東日本大震災の状況について 平成30年2月7日現在 参照)。また、住宅被害は家屋全壊2634棟、家屋半壊2万4994棟、一部破損19万1221棟と大きな被害になりました。

 直近では平成28年(2016年)12月28日に茨城県北部が震源のM6.3、震度6弱の地震が発生し、負傷者2名、住家半壊1戸、住家一部破損が25戸でした(水戸地方気象台HP 茨城県の地震災害の記録 参照)。

 茨城県は2021年に地震被害想定調査を実施し、7つの想定地震の被害想定結果や想定手法を「茨城県地震被害想定調査詳細報告書」にまとめました。「地震から自分や大切な人のいのち、くらしを守るために」の中では、津波への備えや地震に強い家づくり、各家庭でできる減災の工夫が分かりやすく丁寧に書かれています(茨城県地震被害想定について 参照)。

●料理名:はまぐりご飯(茨城県)

 今回の郷土料理に選んだのは「はまぐりご飯」です。茨城県の大洗から千葉県の犬吠崎までの太平洋側では、はまぐりの中でも大玉の「鹿島灘はまぐり」が獲れ、全国屈指の水揚げ量を誇ります。はまぐりは大きさで値が決まるため大玉に育つ鹿島灘はまぐりは高級品です。中玉は7~8㎝、大玉となると握りこぶしより大きなものになります。
 現在は国産はまぐりの収穫量が減ったため、大洗町・鹿島灘・はさきの3漁協では計画的な漁や保護区域の設定をして、国産の鹿島灘はまぐりを守っているのです(いばらき食と農のポータルサイト 茨城をたべよう参照)。

 鹿島灘はまぐりの旬は6月~7月と、まさに今の時期! もし魚屋さんやスーパーで見かけたら、ぜひ買って食べてみてください。特に漁師さんのおすすめは中玉の7~8㎝だそうで、身が軟らかくて食べやすいそうです。今時期は産卵前で身が太って絶品です。

 ちなみに今回作った「はまぐりご飯」の貝は、鹿島灘はまぐりが手に入らずに三重県の地はまぐりを使用しました。地はまぐりも、鹿島灘はまぐりも和名は「チョウセンハマグリ」。名前を聞くと輸入品だと思う人が多いため、平成7年(1995年)に「鹿島灘はまぐり」と名付けてブランド化しました。
 昔はよく獲れたため、味噌汁や酒蒸し、はまぐりご飯にして、地元では日常的に食べていた貝です。今回のレシピは農林水産省 うちの郷土料理はまぐりごはん 茨城県を参考にしています。

はまぐりご飯 - 〈 復興わがまち ご当地ごはん! 〉<br> 【第68回】<br> 茨城県「はまぐりご飯」
茨城県 はまぐりご飯

★プリプリ濃厚でうまみがたっぷり

 はまぐり料理といえば、お正月やひな祭りのお吸い物が思い浮かぶ方も多いかと思います。私もそうで、炊き込みご飯にはまぐりなどの貝を入れて炊いたことがなく、どんな味になるのだろうと思いました。レシピでは、しいたけとニンジン、剥き身のはまぐりを一緒に油で炒め、だし汁とともに炊き込みます。今回は、中玉かそれより少し小さいくらいのサイズの貝を殻付きで購入しました。  

 まずは殻同士をこすり洗いした後、野菜洗い用にしているタワシでさらにゴシゴシ洗いました。それから茹でて貝の口が開いてから身を取り出します。この時に出た貝汁は出汁がわりに使用しました。はまぐりの身は弾力があってプリプリで、見るからに美味しそうです。殻付きにしたために鮮度が良かったのかなと嬉しく感じました。油で炒めた身と野菜、調味料と先ほどの貝汁を一緒にお米に入れて、炊飯器のスイッチを入れました。

 良い匂いがしてご飯が炊き上がりました。かき混ぜると、おこげもあって美味しそう。貝のいい香りと椎茸のうまみが絶妙で、生臭さも全くない上品な炊き込みご飯です。家族にも大好評で、出来立てを夜ごはんとしていただきました。こんなにも美味しいはまぐりご飯。せっかくですから旬の中玉の鹿島灘はまぐりでも作って食べてみようと思います!

〈2022. 07. 07.〉

 

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