ブレイン社の地震予報―
天気予報的「予報」なら “いいね!”…
「リスク・コミュニケーション」のツールとしての
「地震予報」活用可能性
わが国では『2〜3時間から2〜3日以内に大地震が起きる可能性がある』と発表する直前“地震予知”について、国の地震本部が公式にその可能性を否定している。その代わり、南海トラフ巨大地震については「臨時情報」、日本海溝・千島海溝巨大地震については「北海道・三陸沖後発地震注意情報」という、異常現象が観測された場合の“注意情報”が発出されることになっている。
本紙はこれまで何度か「トランスサイエンス」というテーマを取り上げてきた。「トランスサイエンス(trans-science)」とは、私たちがどの程度のリスクなら受け入れるのかという科学者・研究者だけでは解決できない問題を言う。
さて、『2〜3時間から2〜3日以内に大地震が起きる可能性がある』と発表する直前“予知”は現在の技術で不可能とされているが、国は“予測”については「臨時情報」、「後発地震注意情報」を設けることで否定はしていない。それでは、天気予報ならぬ、“地震予報”はどうだろう――直近のプレスリリースは、「令和6年能登半島地震」を“予報”したというのだ。

● ブレイン社が 能登半島地震発生の8時間前に予報成功
これは、地磁気・地電流異常、低周波音、前震活動の3種の前兆を分析する「3種前兆地震予知法」を唱えるブレイン社(静岡市、代表:内山義英氏)が昨年(2024年)12月25日に配信したプレスリリースで、「2024年1月1日16時10分頃に発生した能登半島地震Mw7.5(最大震度7)を、地震発生の8時間前に予報成功した。震災発生から1年が経過し、能登半島地域での結末と教訓を活かすべく、震災による被害、とくに人的被害低減に注力している。この地震予知技術は、人的被害と社会的損害の軽減に向けた新たな一歩となる」というもの。
同社では、2016年から予知結果を全国のエンドユーザーに向けてメールやアプリにより配信(有料)する地震予報ネットワークを実用化した」としている。

同リリースによると、「3種類の前兆現象のうち、低周波音は地震発生の1カ月〜2カ月程度前に発生するため、中長期地震予知に適用し、地磁気・地電流異常(左図参照)は1週間〜2週間程度前に発生するため、短期地震予知に適用する。前震活動は地震発生の数時間〜数日程度前に発生するため、直前地震予知ならびに発生した地震がその後収束するか、あるいはさらに規模が大きい本震につながるかの判定に用いる」という。
この「地震予報」の実績、精度については、2016年熊本地震以降に国内で発生したM5.0以上、または最大震度5弱以上の地震に対する予報成功率は、2024年6月30日現在で94.4%。最大震度7、またはM7級大地震の予報成功事例として、2016年熊本地震(Mj7.3、最大震度7・試行段階)、2018年北海道胆振東部地震(Mj6.7、最大震度7)、2021年宮城県沖地震(Mw7.0、最大震度5強)、2022年台湾島東部地震(Mj7.3、最大震度6強)、2024年能登半島地震(Mw7.5、最大震度7)をあげている。
なお、北海道胆振東部地震において最大震度7(改正メルカリ震度階級Ⅹ以上)の大地震が短期予知・予報されたのは、世界的に前例がなく初の事例だとする。
ブレイン:能登半島地震 地震発生の8時間前に予報成功 大地震予報の結末と教訓


同社の地震予知法の特徴は従来の「VAN法」などとは基本的に異なり、地震前兆波形の周期特性及び振幅量を中心パラメータとした比較的簡明な原理及び予知ロジックに基づく独自手法だそうだ。本紙は地震予知について専門的な知見はないため、このプレスリリースの信憑性について評価はできない。しかし、“地震予知”ではなくて“地震注意予報”であれば、さらに実績を見たうえで受け入れていいのではないか。
旧聞に属するが、本紙は米国カリフォルニア州が取り組む地震防災情報「地震アドバイザリー(Earthquake Advisory)」を7年ほど前に紹介、この情報が、科学者と緊急事態関係者、地方自治体、市民の間のリスク・コミュニケーションの強化につながっているとした。
まさに、リスク・コミュニケーションの強化につながるのであれば、良しだろう。

防災情報新聞(旧サイト 2017年8月24日付け):カリフォルニア州「地震アドバイザリー」情報とは
〈2025. 01. 08. by Bosai Plus〉