持続可能社会におけるレジリエンス
《本紙特約リポーター:片岡 幸壱》
公開シンポジウム「震災記憶の継承と地域社会」(主催=兵庫県立大学政策科学研究所)が去る(2024年)12月14日、御影公会堂(兵庫県神戸市)で開催され、学生、一般などを含む約50人が参加した。
神戸市東灘区は阪神・淡路大震災の被害が最も甚大であり、高速道路高架の倒壊が記憶に残る。震災から30年が経過し、震災体験のない世代・外国人住民の増加が進み、被災体験者から生の声を聞く機会が減っている。シンポジウム「震災記憶の継承と地域社会」は震災記憶の継承と地域住民の結びつきについて考えることを目的として開催された。
■基調講演、講演、パネルディスカッション
基調講演は中村稔氏(兵庫県立大学客員教授・同政策科学研究所特定研究員)が「持続可能社会におけるレジリエンス ~震災の教訓の継承と地域社会~」、講演は小菅康生氏(神戸市教育委員会事務局学校教育部部長)が「0からの出発」、松本宣子氏(住吉歴史資料館 事業推進委員)が「私の震災記憶」、馬場美智子氏(兵庫県立大学大学院減災復興科学研究科教授)が「近年の防災行政と地域社会―震災から30年経過した地域コミュニティの今―」をテーマに登壇。

中村氏は「阪神・淡路大震災の教訓は建物の耐震化・家具の転倒防止・速やかな救助・自主防災活動の重要性だった」、小菅氏は「美術の授業で描いた絵が震災を語り継ぐ役割となった」、馬場氏は「緩いつながり・多様なつながりにおいて、どのように人と人が関わる接点を作るかが重要だ」などと語った。また松本氏は、資料集に収録されている体験内容を話した。
パネルディスカッションは前出の小菅氏、松本氏、馬場氏、討論者として和田真理子氏(兵庫県立大学大学院社会科学研究科准教授)、特別パネリストに甲南女子大学文学部津田ゼミナールの学生3人が加わり、「震災記憶の継承と地域社会」をテーマに話し合った。

和田氏は「持続可能な地域社会には、多世代・新旧住民や様々な組織がつながることが大切」と述べた。甲南女子大学の学生たちは「阪神・淡路大震災30年番組制作プロジェクト」として震災体験者を取材したり、「女性、障がいを持つ人、教育や防災グッズ」に焦点を置いて、つなぎ伝えていく活動をしている。
■「つながり」の大切さ
阪神・淡路大震災から30年になり「地域とのつながりの大切さ、緩やかにつながりやすい場が必要」なことを考えさせられるシンポジウムだった。
取材した片岡(本稿リポーター)は、阪神・淡路大震災翌日にガス漏れで同会場の裏に避難した当時のことを思い出しながら講演を聞いていた。今後、震災を知らない世代が、次の世代へどのように伝え、つなげていくか注目したい。


※掲載写真については主催者の掲載承諾を得ています(片岡幸壱、編集部)。
▽本紙特約リポーター:片岡 幸壱
神戸市在住。中学2年のとき阪神・淡路大震災に遭遇、自宅は全壊したが家族は全員無事避難。学生時代より取り組んでいる防災を仕事と両立しながら、ライフワークとして、ユニバーサルデザイン(UD)などのイベント・ボランティア参加を続けている。聴覚障がいを持つ防災士としても活躍中。
▼本紙関連記事:
阪神・淡路大震災30年特別番組制作プロジェクト報告会
▼参考リンク:
・兵庫県立大学政策科学研究所
〈2025. 01. 07.〉