P6 1b 映画「ダンテズ・ピーク」(Dantes Peak/IMDb) - Disaster & Imagination<br>『ダンテズ・ピーク』『死都日本』<br>――破局噴火への想像力

防災教材にもなる災害映画・小説

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●ディザスター映画が露わにする災害の本質
 『ダンテズ・ピーク』の”リアリティ”

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 「トンガの海底火山フンガトンガ・フンガハアパイの噴火は記憶に新しいが、さらにパプアニューギニアのマナム火山でも新たに噴火が発生した。火山はあらゆる自然災害の中でも、噴火に伴う火山ガス、火山弾、火砕流、溶岩流、降灰、火山雷、火山霧、衝撃波、火山性地震、山体崩壊、海底火山なら津波や軽石被害、さらに二次災害としてラハール(泥流や土石流)、日照不足、大気汚染、酸性雨など、最も多様な事象を引き起こす。その分、被害に遭われる方も多くいる訳だが、ディザスター映画としては最適の題材となる。そのため映画の黎明期から、何度も描かれてきた。そこで今回は、火山を題材とした映画を取り上げたいと考え、数多くある中で『ダンテズ・ピーク』(1997)を選んでみた」

 このような書き出しで映画『ダンテズ・ピーク』を紹介するのは、大口孝之氏。NHKスペシャル『生命・40億年はるかな旅』(94)でエミー賞受賞の映像ジャーナリストだ。

CINEMORE:大口孝之『ダンテズ・ピーク』ディザスター映画の秀作(前編)

P6 1a 映画「ダンテズ・ピーク」(Dantes Peak/IMDbDVDジャケット) - Disaster & Imagination<br>『ダンテズ・ピーク』『死都日本』<br>――破局噴火への想像力

 本紙担当記者も『ダンテズ・ピーク』のデキを両手をあげて絶賛していることから、これを機に、25年前に制作された同映画の“復権”を試みたい。
 そもそも本紙の見解では、ディザスター映画とは、想像力をバネに科学を跳び越え、災害の不条理性を暴くところにその本質がある。同時に自然の脅威下で、人間の行動規範(愛、正義、勇気、誇りなど)、危機管理手法(情報管理、分析、リーダーシップ、行動力など)の検証をRPG的に試みるものだ。最先端科学の知見を踏まえたプロットと、高度なCGを駆使して自然の脅威を大型スクリーンいっぱいに展開するディザスター映画は、映画のカテゴリーとしてはもちろん、防災教材としても注目されるのだ。

 『ダンテズ・ピーク』(DVD、発売元:ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン)の主役は噴火を予知するピアーズ・ブロスナン(007)やリンダ・ハミルトン(ターミネーター)を凌駕して、セントヘレナ火山を思わせるダンテズ・ピークだ。米国地質調査所(USGS)カスケード火山観測所が考証に協力していて、映画である以上、誇張されているところはあるものの、この映画公開時に、カスケード火山観測所では「『ダンテズ・ピーク』、よくある質問集」をWeb上で公開したほど“マジ”な映画づくりだったという。迫力満点の防災教材として、大画面はかなわなくても、DVDでの“再現”をお薦めしたい。

P6 1b 映画「ダンテズ・ピーク」(Dantes Peak/IMDb) - Disaster & Imagination<br>『ダンテズ・ピーク』『死都日本』<br>――破局噴火への想像力
DVD『ダンテズ・ピーク』より(IMDbより)

IMDb:Dante’s Peak(*英語サイト)

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●想像力の破局噴火――石黒 耀の『死都日本』のリアリズム
 小松左京『日本沈没』以来の国民的大災害小説

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 火山噴火はわが国でも大災害をもたらし得る“リアルな災害”である。その冷厳な事実を踏まえて、火山の“破局噴火”の驚異・様相を科学的裏づけと想像力をもって細部まで描写しつつ、なおエンタテインメントとして高い水準を保つ小説が、石黒 耀(あきら)・著『死都日本』だ。ちょうど20年前の2002年の発行当時、火山研究者はもとより防災・危機管理分野のプロからも絶賛され、第一線の防災専門家による公開シンポジウムのテーマともなり、本紙もこれを取り上げている。

P6 2 石黒 耀・著「死都日本」表紙より - Disaster & Imagination<br>『ダンテズ・ピーク』『死都日本』<br>――破局噴火への想像力
石黒 耀・著「死都日本」(2002年9月1日、講談社刊)の表紙。石黒氏は1954年広島県出身、内科医。ペンネームは黒曜石に因む

 ――20XX年1月6日夜、宮崎県日南海岸沖を震源にM7.2の地震が発生。この地震後、霧島火山一帯で群発地震が始まる。火山噴火予知連絡会議は「霧島火山に大規模噴火の危険が高まった」と発表、続いて九州南部・霧島火山で大規模水蒸気爆発。これが霧島火山の母胎である加久藤(かくとう)カルデラを目覚めさせた……

講談社:石黒 耀『死都日本』

〈2022. 04. 21. by Bosai Plus

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