Photo by くにろく
文・料理:大塚 環(本紙特約ライター/防災士)
6月の当連載【 第39回 】 沖縄県「サーターアンダギー」では、一年で平均7.6個の台風が接近する沖縄地方の過去の台風災害をご紹介しました。ところが、台風を沖縄の人々が忌み嫌っているのかというと一概にそうとは言い切れません。大きな河川がなく、梅雨と台風の時に雨が集中する亜熱帯の地域にとって、台風は貴重な水をもたらしてくれる機会だからです。
沖縄地方で一年中安定した生活用水を供給できるようなったのはここ20年ほどの話です。それ以前は水の確保が難しく、人々は渇水に悩まされてきました。
沖縄の水道事業(水道水と工業用水)を担う「沖縄県企業局」のホーム―ページ(以下、HP)を見ると、1994年(平成6年)まで毎年のように給水制限を行っていたことが分かります。その中でも本土復帰前の「1963年(昭和38年)の干ばつ」は、70年ぶりの大渇水でした。
この年の1月~3月には大寒波が襲い、あられ、霜柱などの異常気象と少雨に続き、梅雨時期も雨が少なく、総降水量は平年の約1/2(969.6mm)しかありませんでした。パイナップルやさとうきびの農作物の枯死、病害虫の異常発生、家畜の餓死が発生し、ついに生活用水がきっぷ制となり1日で2ガロン(3.8リットル)の水を配布するようになります。
5月には平山、瑞慶山の2つのダム(当時は米軍が管理)のうち平山ダムの水はすでになく、瑞慶山ダムのわずかの水量を残すのみとなったため、ついに6月には本土に水運搬の協力を要請しました。その後、本土から「友情の水」として船で続々と水が運搬されて難を逃れ、12月にようやく那覇で147.9mmの降雨があって長かった206日間の給水制限が全面解除となりました。
もう一つの歴史的干ばつは、本土復帰後10年が経った1981~1982年の「326日の大渇水(昭和56~57年)」です。4月から少雨が続き、7月9日には貯水率がそれぞれ福地ダム77.5%、瑞慶山ダム39.0%、天願ダム35.1%、金武ダム6.8%にまで落ち込み、給水制限を実施しました。
しかしその後も雨がなかなか降らず、翌年2月には隔日20時間給水を実施しました。福地ダムからの緊急補給、河川維持用水の一時転用、人口降雨作戦などあらゆる手段をとるも渇水が緩和されることはなく、1982年6月2日に雨が降るまでの1年近い326日もの間、給水制限が続きました。
その後は海水淡水化施設の設置や人口降雨作戦、水源の開発などを経て安定供給を実現させ、1994年以降は2014年まで連続給水を達成しています。
●料理名:ヒラヤーチー(沖縄県)
「ヒラヤーチー」は沖縄の方言で「平焼き」のことで、ひらやーきー → ヒラヤーチーになったと言われています。見た目はお好み焼きのような、韓国のチヂミのような食べ物です。
沖縄県浦添市の株式会社ワンスペースが運営する「ごーやーどっとネット 沖縄ニュース」には「お好み焼きとチヂミとヒラヤーチーの違い」の記事があり、地元の人が感じた違いが端的に書かれていて興味深いです。
さらにお好み焼きの本場、大阪のイカリソース株式会社HPでは「鉄板粉もん『種の起源』」と題した表が掲載されていて、これがまたすごい!粉ものってこんなにたくさんあったのかと驚きます。もちろんヒラヤーチーもこのページの一番下に載っています。
なお、ヒラヤーチーの具はニラやシーチキンが人気のようです。保存できるツナ缶と小麦粉、そして家にある野菜で手早くつくる料理で、台風の日の非常食として食べていたという話もインターネットで発見しました。今回のレシピは小麦粉や植物油で有名な昭和産業株式会社の「おすすめレシピ 沖縄風お好み焼 ヒラヤーチー」を参考にしています。
★ニラの香りがまろやかなキツネ色のヒラヤーチー
レシピを参考にした昭和産業のページによれば「沖縄では間食、お茶受けとして食されている」とあります。薄くクレープのように焼いたり、小さめにつくったりして食べるようです。私も薄めにつくるつもりが、欲張ってニラをたっぷりと入れてしまいドーンと厚めなヒラヤーチーが完成しました。
非常に簡単につくれるのでほとんどコツはなく、ポイントといえばレシピにあるようにツナ缶の汁も入れてコクを出すことくらいです。焼いているうちにニラの強い香りがまろやかになっていきます。きつね色になるまでこんがりと両面を焼いてソースか醤油につけていただきます。
沖縄県漁業協同組合連合会HPでは、もずく入りヒラヤーチーを紹介していました。沖縄のもずくは「おきなわもずく」という名で4、5、6月が水揚げ時期です。こちらは沖縄独自の料理で、お好み焼きにもチヂミにも似ていないユニークなヒラヤーチーだと思います。
〈2019. 07. 07.〉
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