「全国子ども防災作文コンクール」(ポスターより)

”防災作文コンクール”で
子どもたちの「生き抜く力」を育む

日本防災士会が協力――子どもたちの災害への感性、防災行動が大人たちをも動かす

 日本防災士会が去る6月22日に開催した「令和元年度通常総会」の開会挨拶のなかで、浦野 修・同会長がふれた同会が協力する「全国子ども防災作文コンクール」(主催:全国子ども防災作文コンクール実行委員会)を本項で改めて紹介する。

■開催目的は「災害時に子どもの命を守りたい!

 コンクールの開催目的は、まず「子どもの命を守る」こと。「公園で遊んでいたり、一人で家にいるときに突然の災害が起こっても、自ら判断して命を守る行動ができるように、日頃から考え、調べ、話し合うことで、災害に備えてほしい」との願いによる。実行委員会ホームページによると、「地域の伝承や家族からの言い伝えを聞いている私たち世代がいま、(その教訓を)孫世代に伝えることの大切さを感じている。さらに、災害時の子どもたちの行動は高齢者の刺激になる場合もあり、多くの国民の命を守ることができるのでは」とある(東日本大震災で子どもたちが率先して津波避難を実践して多くの大人たちの避難を促した事例がある)。

 この文章からコンクールを発案・企画したのは孫(小学生・中学生・高校生、および同年齢の人)のいる祖父・祖母世代と推察される。要は、令和の時代を生きる子どもたちはおそらくほぼ確実に、南海トラフ巨大地震津波や首都直下地震をはじめ大地震のいくつかを、そして大規模水害や巨大噴火などを経験することになるとの懸念から、孫を思う”老婆心”が高じてのプロジェクトなのだ。老婆心といってもおせっかいのレベルではない。それは、国難に立ち向かう次世代、さらに次次世代の無事・安寧を願う「親ごころ」である。

P5 1 「全国子ども防災作文コンクール」(ポスターより) 1 - 「全国子ども防災作文コンクール」 日本防災士会が協力
「全国子ども防災作文コンクール」(ポスターより)

■「そのとき」に自分はどうするか 作文のヒント、応募要領など

 作文コンクール応募資格は小学生・中学生・高校生(および同年齢の人)。個人でも団体でも応募できるが1人1点の応募となる。応募締切りは2019年9月30日。入賞発表は同11月22日頃(入賞者本人に通知。後援する毎日新聞にも掲載)。同12月上旬に最優秀者の表彰式を東京で開催する。作文は、災害がいつ起こっても強い心でいるために、いま、なにをしておくべきか。家族や友だち、地域の人たちと一緒に考えてみようというもの。闇夜と戦う、空腹と戦う、寒さと戦う、悲しみと戦う……どんなときも前に進むために、君ならどうする? 災害や防災について調べたこと、考えたことを作文にして応募する。

P5 2 「全国子ども防災作文コンクール」課題図書の表紙 - 「全国子ども防災作文コンクール」 日本防災士会が協力
「全国子ども防災作文コンクール」2019年度版課題図書(実行委員会編)の表紙。なお、応募作文は課題図書に関連するものに限定していないので留意のこと。A5版 160ページ 定価 1,200円+税

 作文にあたってのヒントとしては、「2019年度版・課題図書『ボクラはこうして戦う』」(5月中旬発売。購入法は下記応募要領リンク先参照)の感想文でもOK。同書には災害を生き抜いた子どもたちの話が6編載っていて、その主人公の気持ちになって感想文を書いてみる、あるいはその登場人物へ手紙を書いてみる……ただし、応募作文はもちろん課題図書に関連しなくてもいい。学校の友だちと話し合ったこと、家族で約束したこと、住んでいる町の防災を調べたリポートでもいいのだ。詳しい応募要領は下記リンクを参照のこと。

>>全国子ども防災作文コンクール(応募要領HP)

>>全国子ども防災作文コンクール(主催者HP)

■「生きる力」の学び、“その前”に「災害から生き延びる力」を

 文部科学省が定める教育課程(カリキュラム)の基準に「学習指導要領」がある。ほぼ10年ごとに改訂される学習指導要領は1999年改訂時から「生きる力」の育成をテーマとしていたが、東日本大震災を受けて「生きる力」に「自ら考え、判断し、表現することにより、さまざまな問題に積極的に対応し、解決する力」や、「自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心など、豊かな人間性が『生きる力』を育む」という要素を含ませた。

 つまり、「生きる力」の具体的なイメージが、「自助、災害対応力」や、「共助、避難所での助け合い、ボランティア」に結びつき、「子どもたちを自立させる教育」に通じるものとなった。

 それから10年、文部科学省では2020年度(小学校は20年度、中学校は21年度、高等学校は22年度~)から、”新・新”学習指導要領となる「生きる力~学びの、その先へ」が始まる。災害大国においては「生きる力」の学びの“その前”に、「災害から生き延びる力」がなければならない。「全国子ども防災作文コンクール」がその力を一挙に伸ばすことを期待したい。

〈2019. 07. 06. by Bosai Plus〉

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