ゴルフ場:中山間地広域救援拠点
防災インフラとしての民間施設・サービス
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地域防災の“新たなインフラ”として、ゴルフ場が浮上
中国地方5県・99ゴルフクラブが 一挙に災害時拠点に
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近年、全国の自治体とゴルフ場が結ぶ「災害時応援協定」が急速に広がっている。豪雨や地震が頻発し、従来の都市部に設けられた避難所や防災拠点だけでは対応しきれない地域や高齢化する中山間地が増えるなか、広大な敷地と堅牢な施設を持つゴルフ場が、地域防災の“新たなインフラ”として注目されているためだ。2025年以降は、広域連携を含む協定締結が相次ぎ、自治体の危機管理戦略における位置づけも変わりつつある。
象徴的とも言えるのが、中国地方5県(鳥取・島根・岡山・広島・山口)と中国ゴルフ連盟が本年5月に結んだ広域協定だ。参加するゴルフ場は99クラブにのぼり、県境を越えて避難者受入れやヘリポート提供を行う仕組みを整えた。
クラブハウスの開放、飲料水の提供、浴場・食事場所等の提供、さらには臨時ヘリポートの設置、自衛隊・警察・消防等の一時拠点としての活用が想定されている。協定締結の当日は、中国5県の知事が出席し、災害対応における官民連携の重要性、広域的な受入れ体制の強化について認識を共有した。
大規模災害では行政区域をまたぐ支援が不可欠となるが、ゴルフ場という民間資源を広域で束ねた例は全国でも先進的だ。
中国ゴルフ連盟:「災害時における被災者へのゴルフ場の支援協力に関する協定」を締結
いっぽう、地域密着型の取組みも進む。ゴルフ場数が全国最多の千葉県市原市では、豪雨災害を教訓に、市内ゴルフ場との協定を再整備。避難場所としての活用に加え、連絡体制の強化や情報共有の仕組みを整えた。神奈川県では、津久井湖ゴルフ倶楽部(別掲写真)と協定を結び、ヘリコプターの離着陸場としての活用や、空撮による被害情報の提供など、より実務的な連携が進む。
これらの事例に共通するのは、ゴルフ場が単なる「避難場所」ではなく、救援拠点・情報収集拠点・広域支援のハブとして位置づけられつつある点だ。
千葉県市原市:市原市ゴルフ場連絡協議会と災害時におけるゴルフ場施設の利用に関する協定を再締結

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なぜゴルフ場なのか ―災害対応に適した“潜在力”
自治体が災害時、別荘・別荘地を活用する事例も登場!
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ゴルフ場が防災拠点として注目される背景には、いくつかの構造的な理由がある。
第一に、広大な敷地。フェアウェイや駐車場は、ヘリポートや緊急車両の集結地として活用しやすい。特に山間部のゴルフ場は、既存の避難所から距離がある地域の“安全弁”として機能する。
第二に、クラブハウスの堅牢性と設備の充実だ。多くのゴルフ場は耐震性の高い建物を持ち、浴場・飲料水・厨房設備など避難生活に必要な機能を備える。自家発電設備や井戸水を持つ施設も多く、停電時の対応力も高い。
第三に、民間施設であることの柔軟性がある。行政施設に比べて運用の自由度が高く、災害時の臨機応変な対応が期待できる。こうした特性は、従来の避難所や防災拠点では補いきれない部分を埋めるものとして、自治体の危機管理担当者からも評価が高いようだ。

いっぽう、協定の実効性を高めるには、①運用体制の整備、②費用負担の問題、③地域住民の理解など、課題も多い。災害時にゴルフ場をどのように開放し、誰が運営を担うのか。避難者受入れや物資管理には専門性が求められ、事前の訓練やマニュアル整備が不可欠だ。また、施設の開放に伴う光熱費や人件費、設備の損耗など、災害対応には一定のコストが発生する。現状では自治体が負担するケースが多いが、明確な基準はなく、災害規模によってはゴルフ場側の負担が大きくなる可能性もある。
「ゴルフ場(クラブハウス等施設)は富裕層の娯楽施設」というイメージが根強い地域では、避難所としての利用に抵抗感が生まれることもある。平時からの情報発信や地域交流が、協定の受容性を高める鍵となる。協定を“紙の上の約束”で終わらせないためには、訓練の実施や費用負担の明確化など、制度面の整備が欠かせない。災害対応は行政だけでは完結しない時代に入り、地域全体での協働体制づくりが求められている。
ひるがえって、宮城県は昨年6月、県として初事例となる別荘の運営団体と災害時応援協定を結んだ。宮城県とみやぎ蔵王別荘協議会の「災害時における支援者用宿泊施設の提供等に関する協定」だ。災害時、みやぎ蔵王別荘協議会の会員が所有する宿泊施設を、自治体から派遣される支援職員が災害応急活動を実施する際の宿泊施設として活用するというもので、この種の応援協定はこれが初めてとされている。

わが国の近未来には、人口減少と公共施設の老朽化という構造的な問題もあり、避難所や防災拠点を新たに整備するには莫大な費用がかかることから、既存の資源として活用できる民間施設と自治体の連携は今後、さらに広がるとみられる。
また、広域災害対応では、ゴルフ場や別荘地の宿泊施設を地域交流拠点として開放するなど、それぞれの施設の機能を活かした防災モデルも検討されていいはずだ。行政にとってゴルフ場や別荘地との「協働」は、現実的な防災力向上の選択肢となりつつある。
災害時応援協定の広がりは、行政と民間の幅広い各層が手を携え、地域の安全を再構築する新たな潮流の象徴とも言える。そこでも当然のことながら、防災士の果たす役割は自治体と民間施設の“リエゾン”として欠かせない、重要な存在となる。
〈2026. 07. 06. by Bosai Plus〉
