災害時の子どものこころのケア
「心理的応急処置(PFA)」とは
PFAの行動原則は、「Look(見る) ⇒Listen(聴く) ⇒Link(つなぐ)」
本紙は去る7月20日付け記事で「防災『こどもの居場所づくり』」を取り上げた。こども家庭庁が昨年(2023年)4月1日に発足し、「こどもの居場所づくりに関する指針」案の策定に向けた検討が諮問されている。
こどもの居場所とはなにか――「家でも学校でもなく居場所と思えるような場所」だとされる。地域のつながりの希薄化、少子化の進展を背景に、共働き家庭やひとり親家庭の増加と経済的な困難などもあいまって、家庭における子育ての孤立化、また児童虐待の増加や不登校、いじめ、自殺するこども・若者の数の増加など、こどもの環境が厳しさを増していて、政治の喫緊の課題ともなっているのだ。
「こどもの居場所づくりに関する指針」は、「災害時におけるこどもの(居場所づくり」の項を設けている。
「災害時などの非常時こそ、こどもの声を聴き、こどもの権利を守ることが必要。災害時においてこどもが居場所を持ち、遊びの機会等が確保されるよう配慮することは、こどもの心の回復の観点からも重要。今後、避難所におけるこどもの遊び場や学習のためのスペースの設置など、まずは災害時におけるこどもの居場所づくりに関する実態把握を行うとともに、そうした実態を踏まえた施策の推進が求められる」としている。
(*こども家庭庁は「こども」の表記をひらがなに統一、以下、本紙表記の「子ども」とする)
こども家庭庁:災害時におけるこどもの居場所づくり(全体版/P. 11)
いっぽう、児童の権利に関する条約 (子どもの権利条約) を理念とし、子どもの権利の保護を目標として活動する非政府組織(NGO)のセーブ・ザ・チルドレン(Save the Children/1919年、英国で設立。以下、「SC」)は、国内外の災害や紛争などの緊急支援の現場で、子どもが安全・安心に過ごせる居場所「子どもひろば」(Child-Friendly Spaces=CFS/CFS協議会)の開設と運営を行う児童福祉の先駆者として知られる。
そして、SCは、「緊急下の子どものこころのケア『子どものための心理的応急処置(子どものためのPFA:Psychological First Aid for Children)』」のとりまとめでも知られるのだ。
「災害などの緊急時、あなたはどのように子どもに声をかけますか?」と問いかけるPFAは、地震や事故などの危機的な災害・出来事に直面した子どもたちが、普段とは異なる反応や行動を示したときに、そのような子どもたちのこころを傷つけずに対応するための方法だという。
緊急下では、泣き叫ぶ子どもがいるいっぽう、感情を示さなくなる子どももいる。反応はさまざまだが、そうした子どもたちのそばに、落ち着いた大人がいることが大切で、少しずつ子どもたちが自分のペースで落ち着きを戻せるようサポートする方法が「子どものための心理的応急処置(PFA)」(「子どものためのPFA」)だ。
「子どものためのPFA」は、心理や精神保健の専門家でなくても誰もが使える子どものこころの応急手当であり、防災においても、被災地支援にかかわる防災士などにもぜひ知っておいてほしいファーストエイド(応急処置)でもある。本項では紙面に限りがあり、「子どものためのPFA」基本情報へのリンク紹介となるが、セーブ・ザ・チルドレンでは研修会の主催や、自主防災組織はじめ各種組織の研修への講師派遣なども行っている。
SC:緊急下の子どものこころのケア「子どものための心理的応急処置」
PFAの行動原則は、「Look(見る) ⇒Listen(聴く) ⇒Link(つなぐ)」だという。①周辺、自分自身の安全確認を行い、②明らかに緊急の対応(基本的ニーズ)を必要としている子どもがいないか探す――そして、③支援が必要と思われる子どもや親、養育者に寄り添う、④子どもや親、養育者のニーズや心配事について尋ねる、⑤子どもや親、養育者の話に耳を傾け、気持ちを落ち着かせる手助けをする。
それから、子どもや家族の基本的ニーズ(食料、水、避難場所、衛生的な環境など)が満たされ、適切なサービスが受けられるよう手伝い、子どもや家族が自分たちの力で問題を対処できるよう手伝うといったことがその一端となる。
避難所では、医師、保健師、看護師、臨床心理士、精神保健福祉士などの支援者も多いので、あくまでもできる範囲での支援を行い、気になると思った子どもは専門家へつなぐことも大切な支援となる。
〈2024. 09. 02. by Bosai Plus〉