image 輪島市朝市通り周辺大規模火災での消失区域(三重県防災航空隊撮影/総務省消防庁資料より) 638x350 - 地震時の火災延焼、<br>消防強化策 どうする!

輪島市朝市通り大規模火災の教訓をどう活かすか

検討課題 山積――半島、木密、津波発生時における沿岸部での消火活動……

 令和6年能登半島地震で石川県輪島市の「輪島朝市」周辺で大規模な火災が発生したことを受け、総務省消防庁と国土交通省は去る3月18日、有識者による「輪島市大規模火災を踏まえた消防防災対策のあり方に関する検討会」(座長:関澤 愛・東京理科大学総合研究院火災科学研究所教授)の初会合を開いた。
 火災の原因に関する調査結果や消防活動の検証内容を踏まえ、今後取り組むべき火災予防、消防活動、消防体制等の充実強化のあり方について検討を行い、今夏のとりまとめをめざす。

P3 1 輪島市朝市通り周辺大規模火災での消失区域(三重県防災航空隊撮影/総務省消防庁資料より) - 地震時の火災延焼、<br>消防強化策 どうする!
輪島市朝市通り周辺大規模火災での消失区域(三重県防災航空隊撮影/総務省消防庁資料より)

 輪島市では、河井町の輪島朝市付近で1日17時23分頃(覚知時刻)火災が発生、近隣の約200棟に燃え広がった。この火災の原因については、後に消防庁によって地震の影響で建物内部の電線が損傷しショートや接触不良による電気火災であったと結論づけられている。
 しかし、近隣の道路が通行止めになった影響で、23時前の時点で現場に到着しているポンプ車は4台のみにとどまり、状況・火災規模を把握するのが困難だった。

 火災発生時、風はほとんど吹いていなかったが、液化石油ガス (LPG)のボンベや外壁開口部から延焼が広がった可能性が指摘されている。また、大津波警報により避難が行われていた影響(輪島朝市自体は津波の浸水想定区域外)で、火災の把握が遅れたことも指摘されている。
 消防団員は、このとき断水のため消火栓を使えず、近くの防火水槽も倒壊した建物に塞がれて使えなかった。このため、津波警報が津波注意報に切り替えられて海水を使った放水ができるようになるまでは実質的な消火活動ができなかったという。

 これらに加え、多くの団員も被災したため現地に向かうことができず、地盤隆起のため川から水を引くこともできないという悪条件が重なっていたが、懸命の消火活動により焼失面積を半分未満に抑えることができたと推定されている。
 国土技術政策総合研究所による調査結果では、この火災により判明した死者は10人、推定焼失範囲は約5万平方m、区域内の建物数は約300棟と推定されている。

P3 2 大規模火災の延焼動態(総務省消防庁資料より) - 地震時の火災延焼、<br>消防強化策 どうする!
大規模火災の延焼動態(総務省消防庁資料より)
P3 3 消防活動困難と街区・建物の特徴(総務省消防庁資料より) - 地震時の火災延焼、<br>消防強化策 どうする!
消防活動困難と街区・建物の特徴(総務省消防庁資料より)

 検討会は輪島市大規模火災での主な検討課題として以下をあげている――

①半島部での大規模火災(道路寸断により陸路での早期応援が困難)
・住民・消防職団員が避難を要することによる火災発見・通報、初期消火の遅れ
・地震による車両、消防団詰所等の被災や管内での災害同時発生による消防力の低下
・断水、地盤の隆起及び津波により消火栓や自然水利の確保が困難

②地震・津波の発生時における沿岸部での大規模火災

③古い木造建物密集地域での大規模火災

総務省消防庁:輪島市大規模火災を踏まえた消防防災対策のあり方に関する検討会

〈2024. 04. 01. by Bosai Plus

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