トイレから社会を考える 災害時トイレ環境は焦眉の課題
日本トイレ研究所の挑戦――
「アーカイブ 災害時のトイレ事情」から目をそむけないで
日本トイレ研究所(東京都港区。加藤 篤・代表)は「トイレを通じて社会をよりよい方向へと変えてゆく」ことを目的とする特定非営利活動法人だ。人間は生きている限り必ずトイレを必要とすることから、地球上すべての人が安心して健康的な生活を送るために必要なトイレ環境のあり方について提案、実現に向けて活動する組織であることを掲げ、トイレから社会問題にアプローチする組織として、近年注目されている。
日本トイレ研究所は、1985年設立のボランティア組織・日本トイレ協会が前身で、2009年に現組織に改組した。会員は2017年時点で約250名、参画企業・団体は58社にのぼるという。その活動は、子どものためのトイレ環境の改善、公衆トイレ、商業施設のトイレをはじめ、トイレから見た社会問題の改善のためのフォーラムやワークショップなど多岐にわたる。
その活動の3本柱は、「子どもたちのトイレ環境」、「災害時におけるトイレ対策」、「多様性社会に対応するトイレ対策」だとしている。
そのうち、災害時のトイレ環境の改善については今日、避難所環境の改善や災害関連死との観点から、私たち防災関係者にとっても焦眉の対策テーマとなっている。
●リアルな災害時トイレ事情から目をそむけない――“直視”したい
本年9月1日「防災の日」に、日本トイレ研究所は、災害時のトイレ事情を後世に伝え、対策につなげていくためとして「アーカイブ 災害時のトイレ事情」を公開した。
![日本トイレ研究所の挑戦<br>「災害時のトイレ」 P5 1 新潟県中越地震で使用禁止となった避難所トイレ(日本トイレ研究所「災害用トイレガイド」より」) - 日本トイレ研究所の挑戦<br>「災害時のトイレ」](https://www.bosaijoho.net/wp/wp-content/uploads/2022/10/P5-1_%E6%96%B0%E6%BD%9F%E7%9C%8C%E4%B8%AD%E8%B6%8A%E5%9C%B0%E9%9C%87%E3%81%A7%E4%BD%BF%E7%94%A8%E7%A6%81%E6%AD%A2%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%9F%E9%81%BF%E9%9B%A3%E6%89%80%E3%83%88%E3%82%A4%E3%83%AC%EF%BC%88%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%83%88%E3%82%A4%E3%83%AC%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%89%80%E3%80%8C%E7%81%BD%E5%AE%B3%E7%94%A8%E3%83%88%E3%82%A4%E3%83%AC%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%80%8D%E3%82%88%E3%82%8A%E3%80%8D%EF%BC%89.jpg)
災害時には、断水、停電、浸水、排水設備や処理施設の損傷などで、トイレが使用できなくなる場合があることから、同アーカイブでは、阪神・淡路大震災、新潟県中越地震、東日本大震災、2016年熊本地震、2018年7月豪雨(西日本豪雨)について、「被災地のトイレ事情(写真および状況の解説)」、「トイレ問題の概況(トイレ環境がどのような状態になったか)」、「被災の概要」を取り上げている。アーカイブ冒頭、「トイレが遠い、 寒い、 暗い、 怖いなど、使い勝手が悪いと私たちはトイレに行く回数を減らすために、 水分や食事を控えてしまいがち。これは、 脱水症状や慢性疾患の悪化などを招き、 災害関連死につながる。災害時のトイレ事情を後世に伝え、対策につなげるため、アーカイブを作成した」とある。
![日本トイレ研究所の挑戦<br>「災害時のトイレ」 P5 2 日本トイレ研究所 マンガ「災害時のトイレ」より - 日本トイレ研究所の挑戦<br>「災害時のトイレ」](https://www.bosaijoho.net/wp/wp-content/uploads/2022/10/P5-2_%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%83%88%E3%82%A4%E3%83%AC%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%89%80-%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%80%8C%E7%81%BD%E5%AE%B3%E6%99%82%E3%81%AE%E3%83%88%E3%82%A4%E3%83%AC%E3%80%8D%E3%82%88%E3%82%8A.jpg)
災害時には、以下のような理由で既設のトイレが利用できなくなる場合がある。
・断水で流せない
・停電で断水することがある
・排水設備や処理施設の損傷で流せない
・浸水して流せない
そして、災害時のトイレの状況――排泄物で満杯になったトイレや浸水し、泥が流入したトイレ、断水で排泄物を流せなくなったトイレなど、まさに目をそむけたくなるような実例写真が掲載されている。文字だけでは私たちの想像力も追いつかないリアルな災害時トイレ事情をまさに“直視”せざるを得ない。
![日本トイレ研究所の挑戦<br>「災害時のトイレ」 P5 3 日本トイレ研究所「災害時のトイレ問題と、携帯トイレの使い方の動画」より - 日本トイレ研究所の挑戦<br>「災害時のトイレ」](https://www.bosaijoho.net/wp/wp-content/uploads/2022/10/P5-3_%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%83%88%E3%82%A4%E3%83%AC%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%89%80%E3%80%8C%E7%81%BD%E5%AE%B3%E6%99%82%E3%81%AE%E3%83%88%E3%82%A4%E3%83%AC%E5%95%8F%E9%A1%8C%E3%81%A8%E3%80%81%E6%90%BA%E5%B8%AF%E3%83%88%E3%82%A4%E3%83%AC%E3%81%AE%E4%BD%BF%E3%81%84%E6%96%B9%E3%81%AE%E5%8B%95%E7%94%BB%E3%80%8D%E3%82%88%E3%82%8A.jpg)
だれでも災害時も排泄を我慢できない(水や食料はある程度我慢ができても)から、トイレ・衛生対策は必須だ。我慢するとすれば、トイレに行く回数を減らすために水分を控えたりするが、そのため慢性的な脱水状態となり、災害関連死につながり得る。
さらに避難生活は、食べること、排泄することが普段以上に重要となる。とくに、子どもや女性、高齢者、障がい者などの視点で、トイレのあり方を考えることが重要となる。
災害時には避難所となる学校や公民館などの公共施設は、避難者を想定したトイレ整備が求められ、災害時のトイレ・衛生対策や、公衆トイレを含めた総合的な災害時トイレ対応のあり方を検討することが必要となる。
日本トイレ研究所の「アーカイブ 災害時のトイレ事情」では、ほかに「災害用トイレの選び方 Q&A」、「災害用トイレの特徴」、「自治体のトイレ対策」など、情報満載だ。家族、大切な人、そして自分自身のための災害時トイレ対策を平時に準備しておきたい。
![日本トイレ研究所の挑戦<br>「災害時のトイレ」 P5 4 日本トイレ研究所「うんちweek2022」のロゴ - 日本トイレ研究所の挑戦<br>「災害時のトイレ」](https://www.bosaijoho.net/wp/wp-content/uploads/2022/10/P5-4_%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%83%88%E3%82%A4%E3%83%AC%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%89%80%E3%80%8C%E3%81%86%E3%82%93%E3%81%A1week2022%E3%80%8D%E3%81%AE%E3%83%AD%E3%82%B4.jpg)
〈2022. 10. 21. by Bosai Plus〉