コロナ禍で注目「 防災農地」
都市防災に防災空間を
農家と行政、住民・市民のための「防災協定農地」
――事前復興策として都市部で協定推進進む
「防災協力農地」をご存知だろうか。「防災協力農地」(以下、「防災農地」)とは阪神・淡路大震災を教訓に、まず首都圏を中心に広がった自治体・町内会などと農地所有者・農業協同組合(JA)などとの災害時応援協定、あるいはあらかじめ協力農地として登録しておく農地のことを言う。この防災農地が、新型コロナ蔓延下で災害が起きた際、人が密集しないように避難所の増設が課題となることから、期待が高まっている。
阪神・淡路大震災では避難所だけで30万人を超える被災者が避難所や公園の仮設テント村に身を寄せたが、そこでの生活は長期化し、都市部の仮設住宅などの用地不足も大きな課題となった。そこで国は2015年、都市農業振興基本法を施行して都市部の農地を農作物の供給だけではなく防災面でも維持すべき場所と再定義、自治体などとの協定により、災害時に一時避難場所や仮設住宅用地などの役割を果たす「防災協力農地」を推進することとした。
防災農地の主な協力内容は、①避難場所、②資材置き場、③仮設住宅用地、④避難所への食料供給──などとなる。防災空間として農地を活用する防災農地の登録に取り組む自治体は年々増加傾向にあり、とくに人口の多い3大都市圏特定市では、2019年3月末時点で7都府県74自治体にのぼる。
事例としてJA東京グループの動向を見ると、JA東京は「都市農業の6つの機能として景観創出、交流創出、食育・教育、地産地消、環境保全、そして防災機能を掲げており、防災農地についても各自治体と災害協定を結ぶ取組みを進めている」とする。協定内容は各協定・地域によって異なり、それぞれに合った内容とするよう取り組んでいるという。
![都市防災に期待高まる<br>「防災協力農地」 P5 1 JA東京グループ「災害協定マップ」(同資料より) - 都市防災に期待高まる<br>「防災協力農地」](https://www.bosaijoho.net/wp/wp-content/uploads/2021/02/P5-1_JA%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%97%E3%80%8C%E7%81%BD%E5%AE%B3%E5%8D%94%E5%AE%9A%E3%83%9E%E3%83%83%E3%83%97%E3%80%8D%EF%BC%88%E5%90%8C%E8%B3%87%E6%96%99%E3%82%88%E3%82%8A%EF%BC%89.jpg)
![都市防災に期待高まる<br>「防災協力農地」 P5 2 JA東京グループ「図でわかる 都市農業の役割」(同資料より) - 都市防災に期待高まる<br>「防災協力農地」](https://www.bosaijoho.net/wp/wp-content/uploads/2021/02/P5-2_JA%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%97%E3%80%8C%E5%9B%B3%E3%81%A7%E3%82%8F%E3%81%8B%E3%82%8B-%E9%83%BD%E5%B8%82%E8%BE%B2%E6%A5%AD%E3%81%AE%E5%BD%B9%E5%89%B2%E3%80%8D%EF%BC%88%E5%90%8C%E8%B3%87%E6%96%99%E3%82%88%E3%82%8A%EF%BC%89.jpg)
いっぽう課題もあって、防災農地に仮設住宅を設置した場合、土地の使用が長期にわたりがちで、農地の原状復帰にも時間を要するため、農家には、復旧・復興後、再び営農できるか不透明といった不安がある。仮設住宅を建てたことがきっかけで営農をやめてしまう可能性もある。また、防災農地を活用するような大規模な災害の発生は低頻度で起こることから、営農者の代替わりもあり、協力協定の更新も必要となる。
都市部の農地を防災空間として活用できることは都市防災にとってメリットは大きい。営農者と行政、そして住民・市民の協働・連携による課題克服が望まれる。
〈2021. 02. 09. by Bosai Plus〉