佐賀県「イカのかけ和え」

Photo by くにろく

文・料理:大塚 環(本紙特約ライター/防災士)

〈連載再開にあたり〉
 8月よりお休みをいただいていた「復興わがまち ご当地ごはん!」が連載を再開します。今年は新型コロナウィルス感染症(以下、コロナ)の流行によって世界中の人々が今後の働き方、生き方を考え直さざるを得ない状況となっています。家庭で料理をする機会も増え、自家製の保存食を作る人も増加しています。
 「復興わがまち ご当地ごはん!」は2016年より各地の過去の自然災害と郷土料理を取り上げてまいりました。地域の災害特性を知って自助、協働の精神を培い、特産物を使った郷土料理から自分が住む地域の気候や歴史、文化に興味を持っていただきたいという思いで記事を執筆しています。
 先の見えない時代だからこそ自分ができることを行い、先人の残した記録や知恵を参考にすることが、現在の窮屈な暮らしの小さな光となりますように願っています。

 今回ご紹介する佐賀県は福岡県と長崎県に挟まれた10市10町を有する穏やかな気候の県です。佐賀県ホームページ(以下、HP)の「佐賀県の紹介」にもあるように朝鮮半島まで200㎞と近く、昔から大陸の文化が流れ込んでくる地域でした。県鳥はカササギで別名カチガラスと呼ばれ、天然記念物に指定されています。一説には豊臣秀吉の文禄・慶長の役で朝鮮に出兵した鍋島藩主が「カチ・カチ・カチ」と鳴くこの鳥を見て縁起が良いと持ち帰り、保護したのが始まりと言われています。中国でも「喜鵲」と書き、幸運をもたらす鳥として人気があるそうです。
 また日本最大規模の弥生時代の集落跡である吉野ヶ里遺跡があるのも佐賀県です。住居跡や高床倉庫、墳丘墓(ふんきゅうぼ)という弥生時代中期の王の墓が発掘され、墓からはガラス製の勾玉や銅剣が見つかるなど稲作とともに大陸から文化や技術の伝来があったことが分かります。現在、吉野ヶ里遺跡は「吉野ヶ里歴史公園」となり、復元された物見やぐらや竪穴住居をはじめ、出土品も展示されています。弥生時代の植生に近い森を再現した「古代の森ゾーン」で森林浴をしながら、なぞ多き女王卑弥呼のいた邪馬台国へ思いをはせてみてはいかがでしょう(佐賀県観光連盟HP「あそぼーさが」参照)。

 北は玄界灘、南は有明海に面し、熊本・大分・福岡・佐賀の4県をまたぐ九州最大の一級河川「筑後川」流域の佐賀県の主な災害といえば水害です。被害が大きかったのは1953年(昭和28年)の6月の豪雨災害です。梅雨前線が佐賀366.5mm(6月25日)、福岡307.8mm(25日)、熊本411.9mm(26日)の豪雨をもたらしました(気象庁HP、「災害をもたらした気象事例」 梅雨前線 昭和28年 6月23日~6月30日参照)。鳥栖市水屋町は筑後川支流の宝満川や大木川に囲まれており昔からたびたび洪水が発生している地域です。この時も溢れた川の水で水屋町全体が浸水して水屋天満宮の鳥居も水没、その光景はまるで海のようであったと伝えられています。国土交通省九州地方整備局 「筑後川の洪水の歴史(昭和28年以後の主な洪水)によれば、当時の大臣管理区間である夜明地点の下流だけで26カ所が破堤し、筑後川右岸の朝倉堤防の破堤は延長約600mにも及んだそうです。筑後川流域内では犠牲者147人、流出全半壊家屋約1万2800戸、床上浸水家屋約4万9200戸、床下浸水家屋約4万6300戸、被災者数約54万人の甚大な被害となりました。

 ところで昔から洪水が頻発する水屋町の人々は、しっかりと水害対策を講じてきました。例えば家の土台を道路より1~2mほど高くする「屋地盛(やちもり)」や、家のそばに2階建ての小屋である「水屋」を建てて通常は米や味噌の保管庫として使用し、洪水の時には避難場所としました。道路に水が溜まっても移動ができるように軒下に「揚げ船」も吊るしておいたそうです(佐賀県資料「伝えよう 佐賀の災害歴史遺産」参照)。水屋町の人々の水害に対する防災意識の高さを見習いたいものです。

●料理名:イカのかけ和え(佐賀県)

 佐賀県は荒波の玄界灘で獲れる身が締まったイカが有名で、ケンサキイカ、ヤリイカ、アオリイカ、コウイカなど種類も豊富です。特にケンサキイカの漁獲量が多く、唐津市呼子町の「呼子のイカ」の活造りは鮮度が抜群、一度は食べたい人気のご当地グルメです。見た目が非常に美しく透明でキラキラと輝き、味も甘くて歯ざわりもコリっとしており、「これがイカなのか?!」と驚くこと必至です。
 イカは世界に450種、日本では140種ほど生息していると言われています。同じ軟体動物であるタコを食べるのは日本と韓国などのアジアのごく一部ですが、イカはスペインやイタリアといったヨーロッパでも食されていて世界で需要があります。しかしイカの消費量世界一はなんと日本で縄文時代から食べています。それほどイカ好きな民族ですが意外にも旬の時期を知らない人も多いのではないでしょうか?
 佐賀県ではコウイカ1月~3月、アオリイカ4月~6月と9月~11月、ケンサキイカ5月~7月がそれぞれの旬となっています。ちなみにアオリイカは、玄界灘では小型をモイカ、大型をミズイカと呼んで区別しています(美食通信「ごちそう佐賀」HP 県産品紹介「呼子のイカ」参照)。今回はそんな佐賀県の郷土料理として「イカのかけ和え」をご紹介します。レシピはJAグループHP「佐賀県『かけ和え』JAさが みどり地区女性部」を参考にしました。

佐賀県「イカのかけ和え」 - 〈 復興わがまち ご当地ごはん! 〉<br> 【第49回】 佐賀県「イカのかけ和え」
佐賀県「イカのかけ和え」

★イカのタウリンで肝臓の機能を上げよう

 「かけ和え」はイカ、イワシ、サバなどの魚介と野菜(主に大根と人参)を足して作る料理です。お正月料理の「なます」に似ていますが、酢味噌で和えるのでまろやかな味になります。大根と人参を細切りにするもよし、両方とも短冊に切ったり大根のみ摺りおろしたりして人参は短冊に切るなどバリエーションも様々です。
 切り方によって食感の違いがあり、味わいが変わるのも楽しい料理です。味噌も白味噌、または合せ味噌を使うレシピがありました。私は自分で作った味噌を使いましたので見た目は色濃くなって、夕飯のおかず向きになりました。お客様のお酒のつまみに出す時には白味噌を入れる方が上品な見た目になります。疲れて酢の物が食べたい時に野菜だけではなく青魚やイカが入ったかけ和えはちょっと豪華で喜ばれます。
 「一般社団法人全国いか釣り漁業協会HP」イカの栄養特性にはイカを含む魚介類の栄養について詳しく書かれています。魚介類をよく食べる地域の人は高血圧や血栓症が少なく、それは魚に含まれるEPAやDHA、イカ・タコ・貝類に含まれるタウリンの働きによるのだそうです。アミノ酸の一種であるタウリンは抗酸化作用も強く、肝臓の機能もアップさせて病気への抵抗力もつけると紹介されています。疲労回復の促進にももちろん効果があります。イカはカロリーも低いのでイカのかけ和えはダイエットにもなる料理です。

〈2020. 12. 07.〉


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【 第4回 】 熊本県「タコめし」〈2016. 06. 07.〉
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