「世界人口と温室効果ガス排出量」(「Climate-Justice」パンフより)

環境への取組み「セクシーに」?
 気候変動と”言葉”

本紙からは思いつき提言――
「地球温暖化」を「地球生態系崩壊」に、
「気候変動」を「気候天変地異」に

 米国ニューヨークで9月23日に開かれた国連気候行動サミットに合わせ、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は地球温暖化などに関する特別報告書を公表、「温室効果ガスの排出量がこのまま増え続ければ2100年までに海面が1m上昇し、生態系のバランスが崩れる」と警告した。海面の上昇幅は2300年までに5mを超える恐れがあるという。温室効果ガスの排出が減らなければ、ガンジス川や揚子江など10本の河川の源流となっているヒマラヤ山脈で氷河が大幅に縮小。アラスカやシベリアなどの永久凍土が融けて大量の温室効果ガスが放出され、温暖化のペースが加速する悪循環に陥る可能性もあるという。IPCCイ・フェソン議長は「温室効果ガス削減のため、いますぐに大胆な行動が必要だ」と訴えた。

>>IPCC:変化する気候下での海洋・雪氷圏に関するIPCC特別報告書 – 政策決定者向け要約 (SPM)の概要 –

 いっぽうわが国の日本学術会議はサミットに先立つ9月19日、地球温暖化への取組みが遅すぎるとして「近代文明はいま大きな分かれ道に立っている。将来世代のための新しい経済・社会システムの早急な変革を」と緊急メッセージを出した。

>>日本学術会議会長談話:「地球温暖化」への取組に関する緊急メッセージ

P3 3 「気候変動による自然・社会への影響とリスク」(「Climate Justice」パンフより) - 国連気候行動サミット ”発言”余波
「気候変動による自然・社会への影響とリスク」
(「Climate-Justice」パンフより)

 朝日新聞「天声人語」(9月14日付け)に次のような一節があった(一部抜粋)。「先日、読者からお便りをいただいた。『温室効果ガス』という言葉に常々、疑問をお持ちだという。『効果』は良い結果の時に使うのではないかと▼なるほど、『悪影響』とは言うが『悪効果』は聞かない。もっと言えば温室も、ぽかぽかした感じで印象は悪くない。英語のグリーンハウス・ガスを訳した言葉のようだが、『気候変動元凶ガス』とでもしたほうがぴったりくるか」……。本紙も言い換えを試みよう。地球温暖化は『地球生態系崩壊』に、気候変動は『気候天変地異』と。

 ひるがえって、米国ニューヨークで開かれた国連気候行動サミットで9月23日、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(16)が登壇、「将来世代はあなたたち(世界の政策リーダーたち、大人たち)の裏切りに気づき始めている。私たちを見捨てる道を選ぶなら、絶対に許さない」と、温暖化対策を十分には行ってこなかった各国政府代表に訴えかけた。
 彼女は“How dare you!”(よくもまあ!)と怒りあきれる表現を用い、それが大きな反響を呼ん だ。このHow dare you!のくだりは「人びとは苦しんでいる。人が死んでいく。生態系全体が崩壊している。大量絶滅が始まっている。そして、あなたがたが話しあっているのは、お金と永遠の経済成長のおとぎ話だけだ」という文脈の結語として”吐き捨て”られた。

 タイミングを同じくして、サミットに出席し、グレタさんの演説も聞いていた日本の小泉進次郎・環境大臣兼内閣府特命担当大臣(原子力防災担当)は現地記者会見で、「気候変動のような大きな問題は楽しく、クールで、セクシーに取り組むべきだ」と(英語で)発言、“セクシー”という用語がマスコミをにぎわせた。
 たまたまトゥンベリさんの「How dare you!」と小泉氏の「セクシー」発言が、脈絡なく、むりやり対比されたきらいはあるが、環境問題についての危機感の相違が、同時的に、象徴的に、読み取れたことは確かだろう。

P3 1 FoE Japan「Climate Justice Now」パンフ表紙より - 国連気候行動サミット ”発言”余波
FoE-Japan「Climate-Justice-Now」パンフ表紙より。本年9月26日に改訂版が作成されている

 ”大きな問題”であるがゆえに、総論賛成・各論反対が常であることは私たちもよく経験することだ。本紙が最近取り上げた「SDGs」しかり、核兵器廃棄しかり、世界規模の食糧・水・貧困問題しかり、原発是非しかり……その相克をどう乗り越えるか。
 国際環境NGO「FoE Japan」(エフ・オー・イー・ジャパン)が、気候変動を『Climate Justice』として、公平性の側面からとらえている。FoE Japanは、国際環境NGO「地球の友(Friends of the Earth)」の日本組織だ。
 『Climate Justice』は「気候正義」と訳されているが、「気候の公平性」あるいは現状の「気候の不公正」を逆説的に指摘する。要は、先進国に暮らす人びとが化石燃料を大量消費してきたことで引き起こした気候変動への責任を果たし、すべての人びとの暮らしと生態系の尊さを重視した取組みを行うことで、途上国の人びとが被害を被る現状の不公平さを正そうという”正義”の実行をめざす考え方だ。

>>FoE Japan:Climate Justice(気候正義)とは~同パンフレット(2019年9月26日 改定)

 私たちは国レベルでは一市民として、地球的視点からは一地球人として、気候変動をいかにして”わがこと”に引き寄せられるがが問われている。もちろん、災害・防災をわがこととすべき「防災」にも深くかかわる課題でもある。

>>環境省:気候変動への適応

〈2019. 10. 02. by Bosai Plus

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  1. ピンバック: 気候変動で浮き彫りになる「環境格差」と言う不都合な事実がある | 株式会社日向

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