横浜国大などの研究グループが開発した被害予測システム「cmap.dev」の2018年台風24号の画面

より精度の高い避難支援情報に
 ビッグデータ+ICT・AI

浸水予測、被害予測、同時進行リアルタイム災害情報など、
急進展するデジタル被害推計システム

●被害推計技術は避難支援情報でもある 「AI防災」の新ステージ

 自治体が発令する避難指示・勧告の”空振り”への好意的な理解はだいぶ進んでいるようではあるが、災害発生リスク情報の精度は高ければ高いほどいいのは言うまでもない。いま、高度に発達したICT(情報通信技術)やAI(人工知能)技術にこれまでに蓄積された各種防災関連ビッグデータをかけ合わせて、地震や水害の被害予測システムの開発が進行中だ。

熊本大学資料より「洪水による浸水エリアの被害予測シミュレーションイメージ」
熊本大学資料より「洪水による浸水エリアの被害予測シミュレーションイメージ」

 本紙ではその動きをすでに報じているが、米国シリコンバレーの防災スタートアップ企業の One Concern社と損害保険ジャパン日本興亜株式会社、株式会社ウェザーニューズが共同開発し、本年4月から熊本市での実証を開始した防災・減災システムが、日本で初めてAI技術の防災への実装事例として注目されている。これはAIの活用により、地域固有の過去の気象データ、気象予測データを地理情報や建物情報と組み合わせて災害危険性と地域の脆弱性を評価することで被害予測シミュレーションを推測するもので、避難区域の範囲を特定したり、事前・事後の防災計画の策定・見直しに役立つことになる。

東京23区の浸水深マップ(早稲田大学資料より)
東京23区の浸水深マップ(早稲田大学資料より)

 また、これも最近本紙既報の情報だが、早稲田大学では、東京大学やリモート・センシング技術センターとの共同研究で、東京都23区で発生する都市浸水をリアルタイムで予測するシステムを開発、社会実装が可能として、東京都23区を対象に文部科学省のDIAS(データ統合・解析システム)上で試行運用する。

 リアルタイムでの浸水予測が可能になれば当然、避難情報にそのまま反映することができる。「道路・下水道、都市河川」のネットワークとその関連付帯施設についてのデータと、都市の土地利用状況と建物(建ぺい率・容積率)などのデータ、さらに地下調節地、貯水施設や下水道のポンプ場・水再生センターなどのデータも取り込み、そのうえで、気象庁の30分先までの降雨予報の結果を入力値とするものだ。

 また、横浜国立大学、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社、エーオンベンフィールドジャパン株式会社は共同で、自然災害発生時の被災建物予測棟数を市区町村ごとにリアルタイムで公開する世界初のウェブサイト「cmap.dev(シーマップ)」を開設、去る6月26日に公開した。

横浜国大などの研究グループが開発した被害予測システム「cmap.dev」の2018年台風24号の画面
横浜国大などの研究グループが開発した被害予測システム「cmap.dev」の2018年台風24号の画面。横浜国立大学、あいおいニッセイ同和損害保険などの共同研究で、自然災害発生時の被災建物予測棟数を市区町村ごとにリアルタイムで推計する世界初のウェブサイト「cmap.dev(シーマップ)」が開設された。台風・豪雨・地震による被災地域の被災建物棟数を、最新の気象観測データに基づき現在進行形で予測し無償公開する。被災規模の早期把握や迅速な救助・支援活動への貢献はもとより、避難情報にもつながるものと期待される

 同ウェブサイトは、台風・豪雨・地震による被災地域の被災建物棟数を、最新の気象観測データに基づき現在進行形で予測し無償公開するもの。被災規模の早期把握や迅速な救助・支援活動に貢献することをめざしており、当然、避難情報にもつながるものとなることから、地域住民はもとより、行政・企業などによる活用が期待される。

>>横浜国立大学:自然災害による被災建物棟数の「リアルタイム被害予測ウェブサイト」

 このように、被害予測、リアルタイム被害予測などの技術が急速に進展していることから、避難情報は今後もさらに進化するだろう。

 本紙の思いつき的なアイデアでは、例えば東京都では地震について「地域危険度」としてレベルの区分を町丁目ごとのランクに分けにして、各地区の住民の関心度を高めているが、水害についても、平時あるいは予報段階で「危険度」をレベル化(5段階化)してリスク評価・予報・現在進行形で推移を示せないか。

 しかし、避難情報がいくら充実しても、「自分の命や家族の命は住民一人ひとりが守らなくてはならない」ことに変わりはないことを肝に銘じたい。

〈2019. 07. 25. by Bosai Plus

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