北海道から中部に警報発表、過大推定でM9.9
 気象庁が取り消し

過去の過大予測――13年は甲子園球場では試合続行も 主催者の対応は?

 2026年10月16日午後0時40分、気象庁は北海道から中部地方にかけての広い範囲を対象に緊急地震速報(警報)を発表した。しかしその後の精査で、地震規模を実際より大幅に大きく推定していたことが判明し、警報は取り消された。気象庁は同日、地震規模をマグニチュード(M)9.9と過大評価したことが原因だったと発表した。

P4 1 2026年10月16日12時40分に発表した 緊急地震速報(警報=過大予測)の発表履歴(気象庁資料より) - 10月16日の緊急地震速報の過大予測<br> 2013年、16年の振り返りも
2026年10月16日12時40分に発表した 緊急地震速報(警報=過大予測)の発表履歴(気象庁資料より)

 発表された緊急地震速報では、千島列島を震源とする巨大地震が発生したと推定され、北海道から東北、関東甲信、北陸、東海地方にかけて最大震度7クラスの揺れや長周期地震動階級4を予測。気象庁の記録によると、警報は地震波を検知してから約112秒後の午後0時40分2秒に発表された。しかし、その後の解析により、実際に発生した地震はロシア・カムチャツカ半島付近を震源とするM6.9規模の地震だったことが判明。国内では大きな揺れは観測されず、警報で想定されたような被害の恐れはなかった。
 今回の事案は、地震そのものが存在しなかった「誤報」ではなく、実際の地震に対して規模や影響を著しく過大に予測したケースとされる。

気象庁:2026年10月16日12時40分に発表した 緊急地震速報(警報)について(第3報)

■ 2013年8月と2016年8月の「過大予測」を本紙が詳報 高校野球続行の是非も!

 緊急地震速報は、2004年に一部試験運用を開始後、2007年10月1日から一部の離島を除いた国内ほぼ全域のすべての住民を対象とした本運用を開始した。予測震度5弱以上などのときに発表され、放送や携帯端末などで「(震度4以上などの)強い揺れとなる地域」を伝える「緊急地震速報(警報)」と、発表基準が低く第1報の精度が高くないものの迅速性が高く「各地の震度や揺れの到達時間」などが分かる「緊急地震速報(予報)」の2種類がある。

 強い揺れが到達する前に避難や身の安全確保を促す重要な防災情報となることから、「究極の地震防災情報」とも言われるいっぽうで、「速報」と「精度」という二律背反を追求するうえでのむずかしい技術であることは私たちにも想像できる。
 しかし、今回のような大規模な過大予測は、利用者の「また誤警報ではないか」という受け止めや、警戒心の低下を招く恐れもある。というのもこれまでの約20年弱の運用の歴史で、本紙が取り上げた記憶に残る大きな“過大予測”は2度あるからだ。

 2013年8月8日、NHKテレビが甲子園での高校野球実況中継時に緊急地震速報が発表され、M7.8、奈良県、大阪府南部、大阪府北部で震度7から6弱程度と予測された。結果的にその速報は過大予測であったが、本紙はその際のNHKテレビの説明画面を撮影、本紙で高校野球の試合が続行したことを問題視してリポートした。

《Bosai Plus》2013年8月15日号(No.072):緊急地震速報の“過大な予想” ほか

■ 2013年8月8日の緊急地震速報の個人的体験と甲子園球場の危機管理

 その一部を抜粋して以下、再掲する――
 本稿記者はそのとき(8月8日16時56分ごろ)、パソコンに向かいながらNHKテレビが放送する高校野球を横目で見ていた。パソコンにインストールしてある緊急地震速報ソフトが起動して「速報」を伝えた。
 パソコンソフトの緊急地震速報が伝える「(奈良県付近震源)M7.8」に思わず“でかいぞ!”と声が出た。内陸直下地震で最大とされるM8.0の濃尾地震のことは知識としては知っている。M7.8は当然、内陸地震としては最大級の地震であり、阪神・淡路大震災以上の大災害が起こると思って鳥肌が立った。

P4 2 NHKテレビ(高校野球実況時)に発表された緊急地震速報についての説明画面(NHKニュースより) - 10月16日の緊急地震速報の過大予測<br> 2013年、16年の振り返りも
2013年8月8日、NHKテレビ(高校野球実況時)に発表された緊急地震速報についての説明画面(NHKニュースより/撮影:本紙)

 東京に位置する記者は、速報ソフトで設定した東京(都庁)での予想震度3を確認したのち、NHKテレビの緊急地震速報に注目した。高校野球をテレビ中継するNHK実況アナウンサーが、緊急地震速報を繰り返し伝えていた。しかし、テレビ画面では高校野球のプレイが続いている。甲子園球場だろ? 西宮市なら震度5か、6か!……なぜプレイ続行なのか、どうする気か?! 甲子園球場がいまにも大揺れになると思い、固唾を呑んでテレビを見ていた。
 それから数秒……数十秒、数分。試合を続行する甲子園球場へはもとより、東京でも予想到達時間を過ぎて揺れないことへのいぶかしさが、どこかの瞬間、“誤報”の確信へと変わった。そのとき、おかしな妄想にとらわれた……甲子園球場はなぜか“誤報”を織り込み済みだったのではないか、と。

 翌8月9日・金曜日、小紙は、甲子園球場の運営を行う阪神電気鉄道株式会社にメールで以下のような問い合わせを行った。
 「2013年8月8日16時56分ごろの気象庁緊急地震速報(結果的に「誤報」)への貴社・甲子園事業部の対応について質問させていただきます。
1)緊急地震速報が発表された時点でNHKテレビで高校野球を見ていましたが、緊急地震速報について場内放送等で案内・通報された様子が見えませんでした。貴社の対応はどんなものだったでしょうか。
2)貴社(甲子園球場)の危機管理マニュアルにおいての緊急地震速報への対応について教えていただければ幸いです」

 これに対して、土日明けの8月12日・月曜日、阪神電気鉄道・経営企画室(広報担当)から下記のような回答があった。
 「阪神甲子園球場に関するお問合せにつきまして、お答えいたします。まず、今回の緊急地震速報への対応につきましては、緊急地震速報が、奈良県での地震発生予測に伴うものであったこともあり、主催者(朝日新聞社、日本高等学校野球連盟)による試合中断等の判断もなく、プレーが進行されていたため、災害時用に準備している、ビジョン・アナウンス等、観客への案内等を実施しませんでした。
 次に、緊急地震速報が発表され、イベント主催者がイベントを中断した場合の対応につきましては、緊急時対応マニュアルを事前に準備しておりますので、それに従い、ビジョン・アナウンス等を含め、観客へのご案内を実施します。阪神甲子園球場では、お客さまの安全確保を原則とした準備を整えておりますことを申し添えます」(回答全文)

 8月12日付け報道によれば、第95回全国高校野球選手権記念大会の大会本部(高野連=日本高校野球連盟などで組織)では、地震発生時の対応は決まっているが、緊急地震速報発表時の対応は定まっていなかったということである。今回のケースを受けて大会本部は対応を検討し、今後、速報が出れば、大会本部からネット裏にいる幹事審判委員を通じて球審に伝え、球審が直ちに試合を中断することを決めたという。また観客に対しても、電光掲示板や場内アナウンスで速報を伝え、その場で待機するよう求める、としている。

 要するにこれまでは、かたちとしては、甲子園球場を使用するイベント主催者の判断にプレイ続行か(否か)の判断がまかされていたが、今後は速報が出たら「ただちに中断」ということにするということだ。

 また、2016年8月1日17時09分頃、気象庁は東京湾を震源とするM9.0以上、最大震度7を予測した緊急地震速報(予報)を発表したが、その後周辺の観測点で揺れが観測されなかったため、15秒後にキャンセル報を発表した。

P4 3 2016年8月12日、緊急地震速報の誤報を報じる日本テレビ「NEWS ZERO」より - 10月16日の緊急地震速報の過大予測<br> 2013年、16年の振り返りも
2016年8月1日、緊急地震速報の誤報を報じる日本テレビ「NEWS-ZERO」より(Youtubeより)

《Bosai Plus》2016年8月15日号(No.144):「8月1日、首都全域震度7の衝撃、走る」ほか

 気象庁は直近(2026年10月16日)の緊急地震速報の過大予測について原因究明とシステム点検を進めるとともに、再発防止策を講じる方針を示している。今日の最先端技術として地震防災の根幹を支える緊急地震速報の信頼確保が今後の大きな課題となりそうだ。

〈2026. 10. 29. by Bosai Plus〉

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