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防災物資支援同盟/「災害疎開先」を第2のふるさとに

災害時の避難所・物資不足を解消、関係人口拡大で地方創生も!

 本特別企画記事では、災害時における都市部と地方の連携の話題を2題、取り上げる――
 ①は、直近の話題として注目された「自治体間“災害同盟”」、②は、東日本大震災後にその実効性が明らかになりつつある都市部・地方間の大規模災害時の「疎開保険」の話題だ。

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① 立川市と寝屋川市、災害同盟(アライアンス)協定を締結
“遠隔支援同盟”が切り開く新たな自治体連携モデル
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 東京都立川市と大阪府寝屋川市が去る6月11日、「災害アライアンスに関する協定」を締結した。両市は大規模災害時に互いを支援する“同盟”関係を結び、物資調達や共同備蓄などを通じて市民生活の早期安定を図るとしている。
 自治体間連携はこれまでも存在したが、遠隔都市同士が「サテライト体制」「プッシュ型供給」「共同備蓄」という具体的な仕組みを明示した協定は全国的にも珍しく、新たな防災モデルとして注目が集まる。

P2 1 寝屋川市と立川市の「災害同盟・3つの柱」より(寝屋川市資料より) - 都市部と地方の災害時連携<br>地方創生にも 一石二鳥・三鳥
寝屋川市と立川市の「災害同盟・3つの柱」より(寝屋川市資料より)

 立川市は今回の協定について、「人員確保や備蓄品確保、応援到着の遅れなど、過去災害の教訓から生じた社会的課題を解決するための取り組み」と説明する。特に、被災地から離れた自治体が物資調達業務を担う「サテライト体制」、発災直後から必要物資を供給する「プッシュ型供給」、そして「共同備蓄」の3本柱が特徴だと強調している。

 また、寝屋川市は大阪府内でも人口密度が高く、災害対応力の強化を進めてきた自治体である。立川市は多摩地域の中核都市として、広域避難者の受け入れや物資拠点としての役割を担うことが多い。両市の特性を生かした協定は、単なる「応援要請の約束」ではなく、事前に役割分担を決めた実効性の高い連携だと言える。

 地理的に離れた自治体同士の災害時連携では、被災県への人員支援派遣を行う「対口(カウンターパート)支援」が知られているが、物資供給を中心としている点が“アライアンス(同盟)”の特徴となる。首都圏と関西圏という離れた都市が連携することで、災害種別や発生タイミングの重複リスクを下げ、より確実な支援体制を構築できる。

東京都立川市:災害アライアンスに関する協定 寝屋川市・立川市“同盟”を締結

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②「品川で災害が起きたら、飯田が『第2のふるさと』に」―「結い保険」
東日本大震災発災翌月から「疎開保険」導入の鳥取県智頭町
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P1a 飯田市結い保険(チラシより) - 都市部と地方の災害時連携<br>地方創生にも 一石二鳥・三鳥
長野県飯田市「結い保険」(チラシより)

 東京都品川区と長野県飯田市はこの4月から、「もしも品川で災害が起きたら、飯田が『第2のふるさと』に」と銘打って、品川区民らが年間1人1万円から加入できる「結い保険」を始めた(“結(ゆ)い”とは、助け合って田んぼの仕事をすることを「結い田」と呼び、飯田の語源だという)。品川区と飯田市は、リニア中央新幹線の結節点となる縁などから、長年にわたり交流を深めてきた。

P2 2b 飯田市「結い保険」(チラシより) - 都市部と地方の災害時連携<br>地方創生にも 一石二鳥・三鳥
長野県飯田市「結い保険」(チラシより)

 「結い保険」は、品川区で震災などの大規模災害が発生して品川区民が自宅での生活が困難になった場合、 飯田市の宿泊施設(ホテル・旅館・農家民泊など)を避難先として無償提供するもの(被災時の受入条件:地震・津波・台風等を原因とする災害救助法が適用された地域の加入者)。6泊7日まで無料で滞在でき、災害が起こらなければ、飯田市から果物などの特産品の詰め合わせが年1回(12月)届くほか、自然を満喫できる1泊2日のツアーへの無料招待といった特典もある。

 両自治体では、「遠くの親戚のように助け合える関係」を目指すとのことだが、2カ月で100人を募る予定が、10日で定員を超えたという。募集は毎年4月1日〜5月31日で、有効期間は6月1日から翌年の5月31日までとのこと。ちなみに料金(年額・税込)は、1人コース:10,000円、2人コース:15,000円、3人コース:20,000円(4人目以降は1名につき+5,000円/3歳以下は無料)。

長野県飯田市:「結い保険」

 ちなみに、東京都世田谷区は、1980年代から「縁組協定」に基づき群馬県川場村と交流を続け、区立小の5年生は移動教室で村に泊まり、愛着を深めており、災害時の相互援助協定も結んでいる。
 また、より踏み込んだ準備をしようという試みとして、東京都板橋区は2023年、災害関連死ゼロを掲げ、福島県や新潟県など13市町と協定を結んだ。平時は自立して生活する区内の75歳以上の2千人が対象で、協定先から迎えに来るバスでホテルの空き部屋などに避難する計画だという。

P2 3 鳥取県智頭町の位置(同HPより) - 都市部と地方の災害時連携<br>地方創生にも 一石二鳥・三鳥
鳥取県智頭町の位置(同HPより)

 いっぽう、「疎開保険」について本紙は、2025年5月13日付けで鳥取県智頭町(ちづちょう)を取り上げた。鳥取県智頭町は人口約6100人、鳥取県の東南に位置し、南と東は岡山県に接する。
 周囲は中国山脈の山々が連なり、その山峡を縫うように千代川が流れ、鳥取砂丘の砂を育んだ源流のまちでもある。まちの総面積の9割以上が山林で緑が一面に広がり1年を通してまちを彩る植物や美しい自然にあふれ――まちのキャッチフレーズは「みどりの風が吹く疎開のまち」だ(同HPより)。

智頭町の「疎開保険」 に再注目

 智頭町は、「疎開のまち」と自らうたうように、東日本大震災が起こった2011年3月の翌月・4月から、全国初の試みとして「智頭町疎開保険」制度を導入している。これは、自然災害が起きた際に智頭町が疎開保険加入者に「7日分の食事」と「快適な避難場所」を提供するものだ。
 疎開保険加入料は年間1万円(1人)から2万円(家族3〜4人)で、疎開の受入れ条件は「災害救助法が適用された地域の加入者」。疎開補助の内容は「町内および近隣町村提携施設の宿泊場所・食事の確保・提供」(1日3食・7日分)となっている。

 幸い災害に遭わなかった加入者には毎年秋に智頭町特産の米・野菜、加工品など特産品が届けられるほか、「森林セラピー」など智頭町での体験メニュー参加費用が半額になるなどの特典がある。延べ約1500世帯が加入し、宿泊代が半額になる特典を使って延べ約45人(2022年度以降)が民泊を利用した。

 智頭町は、この保険は「災害を切り口にした地域間交流」を目的とした独自の取組みであり、いまで言う人口減少・少子高齢化の打開策である「関係人口・増」を図る試みだとして、保険加入者の疎開実績ゼロは意に介さない。
 疎開保険は一種のふるさと納税のようなもので、この小さな自治体のファン=関係人口を増やすことに一役買っている。

P3 1 鳥取県智頭町「疎開保険システム事業」(総務省資料より) - 都市部と地方の災害時連携<br>地方創生にも 一石二鳥・三鳥
鳥取県智頭町「疎開保険システム事業」(総務省資料より)

鳥取県智頭町:「疎開」する場所を提供する「疎開保険」

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南海トラフ巨大地震と闘う自主防災 〜「市民目線での減災対策」
再掲:西村健一氏「高知市下知地域で 南海トラフ巨大地震を生き延びる」
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 「疎開保険」を取り上げるにあたり、本紙提携紙・《Bosai Plus》がほぼ11年前の2015年2月に、高知県高知市下知(しもじ)地区二葉町でブログ紙「二葉町防災新聞」を発行する西村健一氏に寄稿を依頼していた。前述の鳥取県智頭町とほぼ同時期に、水没が想定される高知市二葉町住民の仁淀川町(によどがわちょう)との疎開避難を前提とした相互交流は、2011年4月から始まっていたというのだ。

《Bosai Plus》2015年2月15日号(No.108):西村 健一「高知市下知地域で 南海トラフ巨大地震を生き延びる」

P3 3 上:昭和南海地震直後の下知地区、下:現在の下知地区 - 都市部と地方の災害時連携<br>地方創生にも 一石二鳥・三鳥
昭和南海地震時の浸水状況と現在の様子。上写真:昭和南海地震(M8.0)発災翌日(昭和21年12月22日)地盤沈下:1.2m〜1.3m]、下:現在の高知市(高知市資料より)

 高知県下知地区防災計画によると、「南海トラフ地震後の津波被害・長期浸水が懸念される二葉町では、2011年から過疎高齢化が一段と進行する仁淀川町と「疎開を前提とした交流」を継続して行っている。毎年5月末に二葉町側が仁淀川町へ有志で田植え体験、11月3日には下知地区の「昭和秋の感謝祭」に仁淀川地区団体が物産販売のため参加、これまでにも、疎開先(避難先)となる地域の公民館見学、空き家見学などを実施している。
 将来は他の地域(津波・浸水の脅威のない場所)と普段からの交流を深め、相互支援協定を締結するため、仁淀川町以外に高知市北部地域や徳島県三好市、愛媛県今治市との交流も今後進展させていくことを検討中」とある。西村氏をリーダーとする自主防災の、持続する、着実な“市民目線での減災対策”が功を奏しているのだ。

 本特別企画記事の締めに、西村健一氏の寄稿文から抜粋した次の一文を再掲しておく――
 「南海トラフ巨大地震の想定が、南海単独であろうが、3連動(南海・東南海・東海)であろうが、私の居住する高知市下知地区の二葉町は、地盤が沈下しますので、地震・津波以外に長期浸水する市街地です。地域に高台はなく、耐震性を満たした避難収容施設は町内に1カ所しかなく、まったく足りません。…(中略)…そうした「生き延びることがむずかしい」高知市下知地域で、私なりの生き延びる方策をいくつか考えました。荒唐無稽なアイデアもありますが、地域特性を考慮したものです。上意下達式の防災対策ではなく、市民目線での減災対策を真摯に実行していくことを念頭に考えました。

○二葉町町民各位の自宅近くの「津波一時避難(退避)場所」であるビルの選定と所有者との協定、市指定の「津波避難ビル」の選定も行い、2007年度の11カ所を15カ所に増やしました(高齢化が進展しているので「津波一時避難(退避)場所」を3カ所増やしました。
○山間部の仁淀川町(によどがわちょう)との疎開避難を前提とした相互交流は、2011年4月から始め、形を変えて継続。
○仁淀川町との交流は今年は3月の桜の季節に訪問。4月には集落改善センター開所1周年記念祝賀会に参加しました。6月には田植え体験に19人が参加し交流しました。
○二葉町内の津波一時避難(退避)場所への避難行動と、下知コミュニティ・センター(避難収容所)との携帯トランシーバーを活用した情報伝達訓練を実施しました。…(後略)…」

P3 5 双葉町と仁淀川町との「疎開を前提とした交流」 - 都市部と地方の災害時連携<br>地方創生にも 一石二鳥・三鳥
高知市双葉町と仁淀川町との「疎開を前提とした交流」(二葉町防災新聞提供)

高知市二葉町防災新聞

〈2026. 07. 29. by Bosai Plus

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