「野外病院の全展開訓練」―緊急事態に備える「病院ERU」

海外緊急医療の現場をシミュレーション
 国際要員の能力維持と向上をめざす

 日本赤十字社(東京都港区)はアジアの赤十字社として初めて海外で緊急展開が可能な手術・入院機能を備えた赤十字野外病院「病院ERU(Emergency Response Unit)」(緊急対応ユニット)を2021年に整備している。このほど日本赤十字社は、海外の大規模災害など緊急事態に備えて、海外緊急医療の現場をシミュレーションするため、12月6日から15日の10日間、展開訓練を兵庫県広域防災センターで実施している。

P4 1 病院ERU実証展開の全体図(2019年、高槻赤十字病院 ※当時保有資機材のみ展開) - 日本赤十字社の<br>「野外病院 全展開訓練」
病院ERU実証展開の全体図(2019年、高槻赤十字病院。当時は保有資機材のみ展開)

 この訓練は、緊急時に速やかにチームを派遣できるよう国際要員の能力維持と向上をめざすとともに、資機材の動作確認や各機能の検証を行うことが目的。全国の赤十字病院・施設から医師や看護師、看護学生など100名以上が参集し、約9000㎡の広さにテント20張以上、約50トンの資機材を設置。これにより、「病院ERU」のすべての機能を展開する。
 また、国際赤十字と世界保健機関(WHO)の担当者も来日し、野外病院としての機能確認や、現場を想定した医師・看護師等による演習の様子を視察する。

■ 病院ERUの設備:手術室・外来・分娩室・HDU(High Dependency Unit)・滅菌室・男女別の入院病棟/祈祷部屋など

■ 病院ERUを使用した演習:日赤の医師や看護師、看護学生等による、病院ERUでの患者受け入れを想定した訓練(患者搬送、外来診察、模擬手術、入退院のシーンなど)

P4 2 病院ERU実証展開の様子(2019年、高槻赤十字病院) - 日本赤十字社の<br>「野外病院 全展開訓練」
病院ERU実証展開の様子(2019年、高槻赤十字病院)
P4 3 病院ERU実証展開の様子(2019年、高槻赤十字病院) - 日本赤十字社の<br>「野外病院 全展開訓練」
病院ERU実証展開の様子(2019年、高槻赤十字病院)

 日本赤十字社の災害等での派遣歴としては――
・国内:東日本大震災、令和6年能登半島地震災害にて、「救護班」として派遣
・海外:ハイチ地震(2010年)、ネパール地震(2015年)、バングラデシュ(2017年)に「診療所ERU」の医師として派遣など

 緊急対応ユニット(ERU)には、「大規模病院型ユニット」(大規模手術、入院を含む総合医療)と、即応型病院ユニット(機動性を重視した医療支援)があり、「大規模病院型ユニット」は1次救急レベルのフィールド病院として機能し、人口25万人を対象として他の医療施設からの転送先として多面的なケアを提供。
 入院患者の収容能力は75~150床程度で、外科、一般的治療、集中治療、麻酔、外科手術、レントゲン撮影、各種検査、母子保健などを提供する。
 緊急事態、大規模災害発生に備え、各国赤十字社が緊急出動が可能な訓練された専門家チームおよび資機材を整備しているのだという。

日本赤十字社:野外病院の全展開訓練を兵庫県で実施

〈2024. 12. 15. by Bosai Plus

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