「あなたの待機がだれかを救う」
改定のポイントは、「行動判断のための情報提供」、
「再度の混乱発生の防止」
内閣府が「大規模地震の発生に伴う帰宅困難者等対策のガイドライン」を本年7月26日に改定・公表した。同ガイドラインは、2012年9月に官民連携で設置された「首都直下地震帰宅困難者等対策協議会」でとりまとめられた最終報告を基としたもので、首都直下地震や南海トラフ地震などの大規模地震発生時に大量の帰宅困難者の発生が想定されていることから(首都直下地震想定で首都圏で515万人)、その安全確保と円滑な対応を図るための指針を提供することを目的としている。
とくに、「公助」に限界があることから、多くの人びとが一斉に帰宅を試みることで混乱が生じることを防ぐための対策として、国、地方公共団体、民間企業などによる個別の取組みだけでなく、各機関が連携・協働した取組みが重要とし、さらに国民一人ひとりの取組みにつなげていくことに重点が置かれている。
今回のガイドライン一部改定は、東日本大震災の発生から10有余年が経過し、社会状況の変化などを勘案、また協議会での検討課題となっていた具体施策に関する検討内容を踏まえたもの。
これまでの対策に、それぞれの主体が発信する情報が一連の情報を形成することの必要性の視点、また混乱収拾後の帰宅開始場面における新たな混乱の発生防止の視点などを追加し、帰宅困難者等対策の実効性の向上を期待するものだ。
内閣府では、今回の改定内容を反映させた広報リーフレット(別図)を数種公開している。
改定版「帰宅困難者等対策のガイドライン」は全9章で、主な改定箇所は第4章「帰宅困難者等への情報提供」と、第6章「帰宅開始場面における新たな混乱発生の防止」。改訂されたガイドラインの主な内容は以下の通り――
【 今回改訂のポイント 】
○ 帰宅困難者等の適切な行動判断に必要な情報については、時系列で変化する帰宅困難者等の行動判断に照らして、一連の情報として帰宅困難者等に届くことが必要
○ 各主体が、時間経過に応じて、いつ、どのタイミングで、誰が、どのような情報を出すのか基本的なケースを共有し、帰宅困難者等の行動変化に照らして、異なる主体が発信する情報が不連続とならないようにすることが重要(情報提供シナリオを新たに提示)
<分散帰宅の基本原則>
○ 待機していた帰宅困難者等は、帰宅が可能な状況になった場合であっても、一斉に帰宅を開始するのではなく、時間的あるいは空間的(移動範囲や移動手段等)に分散して帰宅することを基本とする。
さらに、「国民」に対して、平時は家族などとの間で、帰宅しないという選択や安否確認の方法、お迎えや介護などの対応方法について取決め、発災時は勤務先や施設ごとの行動ルールや管理者の指示に従って行動することを求めたほか、「国・地方公共団体、駅前滞留者対策協議会」、「企業等」、「一時滞在施設等の管理者」、「学校、保育施設等」、「鉄道事業者」に対しても、それぞれ平時と発災時の対応を提示している。
内閣府:大規模地震の発生に伴う帰宅困難者等対策のガイドライン(2024年7月改定)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●東京都の帰宅困難対策 民間施設への補助も
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
前段の内閣府のガイドライン改定に伴い、「首都直下地震帰宅困難者等対策連絡調整会議」策定のガイドラインも同日付で改定・公表された。
東京都では「一斉帰宅抑制推進モデル企業」制度を導入し、企業が従業員に対して一時的な滞在場所を提供する取組みを推進している。また、買い物客や行楽客などの行き場のない帰宅困難者を受け入れるための施設(一時滞在施設)が必要となることから、都内の区市町村と帰宅困難者の受入協定を締結する民間一時滞在施設を対象に、一時滞在施設の整備にかかる各種支援事業を実施しているので参考にしたい。
〈2024. 08. 16. by Bosai Plus〉