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●竜巻等突風の強さ―「JEF」策定・改善の過程
「日本版改良藤田スケール」被害指標、被害度を一部修正
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気象庁は、2012年5月に茨城県等で発生した竜巻をきっかけに「竜巻等突風の強さの評定に関する検討会」(会長:田村幸雄・東京工芸大学名誉教授)で、竜巻等の突風の強さを客観的に評定するための検討を進めてきた。
検討会では、日本の建築物等の被害に対応するよう改良した「日本版改良藤田スケール」及びその技術的指針である「日本版改良藤田スケールに関するガイドライン」を15年12月に策定、16年から24年にかけて気象庁の突風調査で得られた評定結果をもとに、同ガイドラインの見直しを実施。このほど、こ「竜巻等突風の強さの評定に関する検討会(報告書)」としてとりまとめた。
わが国で竜巻等突風対策が本格化したのは、2006年9月に宮崎県延岡市(F2。「F」については後述)で竜巻で死者3名、同年11月に北海道佐呂間町(F3)で死者9名を出し、2007年度防災白書が「2006年は竜巻災害が印象づけられた」と特記したことに始まる。
「Fスケール」(F Scale)は、竜巻による被害規模を表わす指標で、日本人気象学者・藤田哲也(1920-1998年)にちなむ。藤田は福岡県出身、東京大学で「台風研究」で学位取得、その後渡米。シカゴ大学で竜巻やダウンバースト現象を研究し、竜巻の規模の基準として1971年に「F(藤田)スケール」を考案、米国に定着させて国際的な指標となった。
「日本版改良藤田スケール」(JEFスケール。JEF:Japanese Enhanced Fujita scale)は、それまで評定に用いてきた「藤田スケール」を改良したもの。ちなみに「Fスケール」は、F0(ゼロ、風速17~32m)から最大のF5(風速117~142m)まで、風速と被害状況による区分・6段階。
日本の気象庁は2007年の予報用語見直し時に、初めてFスケールを予報用語として加えたが、「Fスケール」は米国における建築物(9種類)の被害を対象として作成されていて、日本での被害の評定には課題があった。
Fスケールの「被害状況」は、被害指標((DI=Damage Indicator/「何が」に相当)と被害度(DOD=Degree of Damage、「どうなった」に相当)に分けられ、28種類のDIとこれに対応する複数のDODが設定されていたが、今回のとりまとめでは、「被害指標(DI)」、「被害度(DOD)の一部修正がなされている。
気象庁:「竜巻等突風の強さの評定に関する検討会(報告書)」の公表
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●「防災気象情報」 警戒レベル相当情報を整理
「危険警報」は4災害のどれでも「警戒レベル4相当」
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気象庁と国土交通省は、わかりやすい防災気象情報を提供するため、2022年1月から「防災気象情報に関する検討会」(座長:田中淳・東京大学大学院特任教授)で議論、去る6月18日、報告書「防災気象情報の体系整理と最適な活用に向けて」をとりまとめた。
災害の危険度情報として5年ほど前から「警戒レベル」を導入、防災気象情報は「警戒レベル相当情報」として位置づけられたが、同じ警戒レベル相当でも文言などが異なり、例えば警戒レベル4相当の浸水の情報(河川)では「氾濫危険情報」で、土砂災害の情報(雨)では「土砂災害警戒情報」、高潮については警戒レベル4相当に「高潮警報」と「高潮特別警報」が同居するなど、警戒レベルと名称の統一感に欠けていた。
提言では、洪水/大雨/土砂災害/高潮の4災害について一覧性を高めた体系を示し、警戒レベル5相当は「特別警報」、レベル4相当は「危険警報」、レベル3相当は「警報」、レベル2相当は「注意報」とする。例えばレベル4相当であれば、「レベル4氾濫危険警報」、「レベル4大雨危険警報」、「レベル4土砂災害危険警報」、「レベル4高潮危険警報」となり、「危険警報」とつけば4つの災害のどれでも「警戒レベル4相当」の情報となる。
また、「顕著な大雨に関する気象情報」や「記録的短時間大雨情報」などを速報的に伝える情報は「気象防災速報」とくくり、今後は「気象防災速報(線状降水帯発生)」や「気象防災速報(記録的短時間大雨)」などとすることを提案。
気象庁と国土交通省は同提言を踏まえて、2026年出水期からの運用開始をめざす。
〈2024. 07. 05. by Bosai Plus〉