巨大災害を迎え撃つ―自衛隊“災害臨戦態勢”の確保・維持を
岩手の事前防災演習「みちのくALERT2008」の成果・教訓を
次なる大災害に活かしたい
自衛隊は、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震発災時における災害対処能力の向上を図るとともに防災関係機関、米軍及び豪軍との連携を維持・強化し、国民の安全と安心の確保に資するためとして、5月20日~24日の5日間、「令和6年度自衛隊統合防災演習」を防衛省市ヶ谷地区その他演習参加部隊等の所在地などで実施した。
自衛隊統合防災演習での米軍・豪軍との連携は、国際的な視点からも重要、他国との連携を通じて、災害時の協力体制を強化し、世界的な安全保障に貢献できるとしている。
参加隊員数は約1万2000名で、主な参加部隊等は、内部部局、統合・陸上・海上・航空幕僚監部、情報本部等をはじめ、陸上自衛隊、陸上総隊、各方面隊等、海上自衛隊、自衛艦隊、各地方隊等、航空自衛隊、航空総隊、航空支援集団等、その他防災関係機関、在日米軍、豪軍等。
主な訓練項目は――
(1) 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震が発生した場合の指揮幕僚活動
(2) 防災関係機関、米軍及び豪軍との連携
(3) 航空機及び車両による増強幕僚要員の輸送、早期戦力化
自衛隊 統合幕僚監部:令和6年度自衛隊統合防災演習について
https://www.mod.go.jp/js/pdf/2024/p20240514_01.pdf
●日本海溝・千島海溝大地震は、近い将来、必ず起こる
日本海溝及び千島海溝沿いの領域では、マグニチュード(M)7~9の大地震が多数・繰り返し発生しており、津波を伴うことも多く、大きな被害を及ぼしてきた。2011年3月に発生した東北地方太平洋沖地震は東日本大震災を引き起こし、死者・行方不明者が2万人を超えるなど甚大な被害が発生。それ以前にも1896年明治三陸地震や869年貞観地震など、巨大な津波を伴う地震が繰り返し発生している。
地震本部による直近の発生確率も、両海溝で起こりうる大地震の30年発生確率は80%に迫っているとされ、国の想定では死者は最悪の場合、10万人から20万人近くに達するとしている。
直近の両海溝をめぐる災害対策の動きとして、2023年12月16日に運用を開始した「北海道・三陸沖 後発地震注意情報」がある。2011年東北地方太平洋沖地震が起こる2日前にM7.3の地震が起きていたことから、想定される震源域やその周辺でM7クラスの地震が発生した場合、気象庁がおおむね2時間後をめどに、3m以上の津波や震度6弱上の揺れなどが想定される太平洋側の182市町村に後発地震注意情報を発表、巨大地震の発生可能性がふだんよりも高まっている、と注意を呼びかけるというものだ。
●自衛隊 震災対処訓練「みちのくALERT2008」で成果も
本紙は、本年(2024年)2月1日付けで、能登半島地震発生からほぼ1カ月後に、齋藤徳美・岩手大学名誉教授からの寄稿を受け、「能登半島地震に思う」を掲載した。そこで齋藤氏は、「東日本大震災時に、岩手県の危機管理体制はどうであったか。岩手県庁では、2008年岩手・宮城内陸地震の反省に基づいて、(東日本大震災)発災の半年前には本番さながらの大規模訓練も実施。その結果として、自衛隊、海上保安庁、警察、消防、医療関係者、DMATなどと行政関係者が一体で動く体制が発災と同時に展開された」
さらに、「東北6県所在の自衛隊全部隊から約1万8千人、自衛隊車両2300台、航空機43機が参加し、『陸上自衛隊東北方面隊震災対処訓練~みちのくALERT2008』が実施され、その後2009年、2010年にも自衛隊の偵察訓練や岩手・秋田・青森県警の訓練が行われ、いわば“迎え撃つ体制”を準備して東日本大震災に対峙することになった」――
その結果、「岩手県での犠牲者は6千人を越えたが、壊滅的な沿岸部で被災者の救出や道路の開削などに大きく貢献した実績は広く伝えられている。石川県の災対本部の体制に関しては報道では詳しく伝えられていないが(寄稿執筆時点)、その教訓が生かされていなかったとすれば、残念に思うものである。……」
WEB防災情報新聞(2024年2月1日):災害を「迎え撃つ」体制を
〈2024. 06. 03. by Bosai Plus〉