image 気象庁「震央分布」より 622x350 - 豊後水道の地震と南海トラフは<br>通底するか?

プレートテクトニクス地殻変動と地震評価の
リアリティチェックと…

豊後水道の地震は「南海トラフ巨大地震の引き金にはならない」が、
「関係ない、とは言わない」…

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●環太平洋造山帯の“西縁”では常にひずみが蓄積されている
 造山運動で通底する(?)台湾地震、インドネシア火山噴火
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 2024年4月17日23時14分頃に発生した「豊後水道の地震」は、マグニチュード(M)6.6とされている。南海トラフ地震の想定震源域内で発生した地震ではあったが、南海トラフ地震との関係を調査するマグニチュードの基準(M6.8)未満の地震で、気象庁は、「地震活動等については注意深く監視している」とした。
 幸い津波は発生せず、揺れによる人的被害、建物被害も少なかった。しかし、住民、防災関係者はだれしも南海トラフ巨大地震の発生を想起し、緊張しただろう。そして政府も、地震直後に危機管理センターに官邸対策室を設置するなど緊急対応に走った。

 気象庁は「巨大地震の可能性が高まったとは言えない」との見解を示したが、政府の地震本部地震調査委員会は、平田直委員長のコメントとして、「もともと巨大地震が起こる可能性が高いことは忘れてはならない」とのメッセージを伝えた。

気象庁:2024年4月17日23時14分頃の豊後水道の地震について

P1 気象庁「震央分布」より - 豊後水道の地震と南海トラフは<br>通底するか?
気象庁「震央分布」より(データ表示期間:2024年04月03日00:00~2024年04月27日15:30)。世界の地震の2割は日本で起こっているが、このように日本列島(南西諸島を含む)と台湾(左下)を埋め尽くす「震央分布」を見れば、いかに環太平洋造山帯“西縁”の活動が活発か一目瞭然だ。太平洋プレートとフィリピン海プレートがこの一帯でぶつかり沈み込む地震の集中地帯。近年のインドネシアで頻発する大規模火山噴火もこれらと同期する?…
P2 2 豊後水道の地震「各観測点の各観測点の震度」 - 豊後水道の地震と南海トラフは<br>通底するか?
2024年4月17日23時14分頃の「豊後水道の地震 各観測点の震度」(4月17日23時19分発表/気象庁資料より)

 まさに、M6.6(暫定値、速報値の6.4から更新)は「南海トラフ地震の臨時情報・調査基準」M6.8の“誤差範囲”の数値とも言え、気象庁はいったん否定はしたが、豊後水道の地震によって南海トラフ巨大地震への懸念はぬぐえない。というのも、本紙が4月15日付け記事で「台湾東部地震―環太平洋造山帯リスク 目の当りに」で「一衣帯水」として取り上げた台湾東部地震との“通底”への懸念もあるからだ。

P2 1 台湾東部地震(花蓮地震)の地震の震央位置、想定される地震の対象領域 - 豊後水道の地震と南海トラフは<br>通底するか?
南西諸島周辺、与那国島周辺で想定されている海溝型地震の対象領域(気象庁資料より)
P2 4 4月23日午前2時半(現地時間)ごろの地震・震度分布図(台湾中央気象署資料より) - 豊後水道の地震と南海トラフは<br>通底するか?
台湾東部花蓮県沖と内陸で23日午前2時半(現地時間)ごろ、4月3日発生の台湾東部地震(M7.2)の余震と見られるM6.0と6.3の地震が発
生、2回とも花蓮県で震度5弱を観測。上図は、M6.3の震源と震度分布

 つまり、南海トラフは日本列島が乗る大陸プレートの下にフィリピン海プレートが南側から沈み込んでいて、ここでは常にひずみが蓄積され、過去、おおむね100~150年の間隔で大地震や津波被害が繰り返し起きている。地震本部が長期評価で、「南海トラフ周辺を震源とする巨大地震の今後30年以内の発生確率70~80%」とする所以である。

 そして、台湾も同様のプレートテクトニクス環境にあって、地震が頻発する地震大国でもあるのだ。さらに言えば、直近の海外情報では、4月30日にインドネシアの火山の巨大噴火が起こっているが、これも環太平洋造山帯の西縁での“造山運動”ではないのか。

 それにしても本年は、1月1日の能登半島地震以降、震度5弱以上の地震が頻発している。同月6日と9日には能登半島や佐渡島付近でそれぞれ震度6弱と5弱の地震が発生。3月にも15日に福島県沖、21日に茨城県南部を震源とする震度5弱の地震が発生した。4月2日には岩手県沿岸北部、8日には九州の大隅半島東方沖を震源とする震度5弱の地震が発生。いっぽう、4月3日には南海トラフの延長線上にある与那国島に近い台湾でM7級、最大震度6強の地震が、同23日にはその余震としてのM6クラスの地震が複数回あった。

 気象協会の地震情報サイト(「tenki.jp」)によれば、2024年は4月25日時点で「震度5弱」以上の地震は22回を記録している。うち17回が元日から1月16日までの石川県能登地方、能登半島沖、佐渡付近の地震が占める(ちなみに気象庁資料では、2020年は7回、21年は10回、22年は15回、23年は8回)。
 地震の専門家は、頻発する地震は特段に異常な現象ではないとしている。ただし、1995年兵庫県南部地震以降、日本列島は地震の「活動期」に入っているとも指摘している。
 同時に防災では、阪神・淡路大震災以降、わが国の21世紀は「災害の世紀」とされて久しい。久しいと言ってもたかだか30年程度であり、地震活動の周期から言えば、瞬間的な時間とみなしたほうがいいのだろう。南海トラフ巨大地震の発生時期として巷間、向こう10年後の2035年あたりとされるのも、むべなるかなである。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●地震本部の地震活動評価のリアリティチェックに注目
 海溝型地震に加えて内陸活断層地震の長期評価も
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 豊後水道の地震を受けて地震調査委員会は臨時会合を開き、今回の豊後水道の地震が巨大地震の引き金になるとする見方は否定したが、「1944年昭和東南海地震・1946年昭和南海地震の発生から約80年が経過し、切迫性の高い状態である」との見解も示した。

NHKニュース:政府 地震調査委員会 南海トラフ地震「特段の変化観測されず」

 ちなみに地震調査委員会は、中国や四国、九州にかけての周辺地域では約60年に1度程度の頻度で今回と同規模の地震が起きていることを指摘。プレート境界で起きる巨大地震だけでなく、巨大地震を誘発することも否定できないプレート内部での地震についても、防災・減災対策が必要としている。

 地震調査委員会は、日向灘および南西諸島海溝周辺の地震活動についても長期評価を行っている。日向灘の巨大地震については、M8の巨大地震の可能性、南西諸島周辺および与那国島周辺の地震についてもM8の巨大地震、南西諸島周辺の一回り小さい地震はM7.0~M7.5程度、与那国島周辺の一回り小さい地震もM7.0~M7.5程度、南西諸島北西沖の沈み込んだプレート内のやや深い地震としてM7.0~M7.5程度、1771年八重山地震津波タイプとしてMt8.5程度――
 地震活動の評価は、現在も改訂が行われており、最新の情報は地震調査研究推進本部の公式ウェブサイトで確認できる。

P2 3 将来発生する地震の場所・規模・確率(地震本部資料より) - 豊後水道の地震と南海トラフは<br>通底するか?
想定される最大規模クラスの地震の震源域・過去の発生状況(600年以降)

地震本部:海溝型地震の長期評価

〈2024. 05. 01. by Bosai Plus

コメントを残す