国交省、平時から復興まちづくりのための準備をする
「復興事前準備」
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●事前復興まちづくり計画について、
検討の手順や必要な検討内容、留意点等をとりまとめ
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国土交通省は、地方公共団体が被災後に早期かつ的確に復興まちづくり計画を策定できるよう、平時から復興まちづくりのための準備をする「復興事前準備」の取組みを推進するため、2018年に「復興まちづくりのための事前準備ガイドライン」を策定し、その周知・普及に努めてきた。
しかし、その具体的な検討内容については、復興の体制や手順といった基礎的検討にとどまっているものが多く、22年度に同省が全国1788自治体に行った調査では、半数以上の自治体が取組みに着手(昨年度比+1%の約66%)しているが、復興事前準備の取組みについてとりまとめる「事前復興まちづくり計画」については、30自治体が策定済み、20自治体が策定作業中、全自治体の21%が策定を検討中としており、引き続き「事前復興まちづくり計画策定のためのガイドライン」の周知を通じて、復興まちづくりの目標や実施方針等の検討が求められている。
そこで国土交通省は、令和6年能登半島地震の発生も踏まえ、復興事前準備の取組みのうち、とくに復興まちづくりの目標や実施方針の検討、事前復興まちづくり計画を策定することに焦点をあてた「事前復興まちづくり計画検討のためのガイドライン」を策定し、本年3月末に公表した。
同ガイドラインでは、大規模な災害による被害を想定したうえで、具体的な復興まちづくりの目標や実施方針等を検討する事前復興まちづくり計画について、検討の手順や必要な検討内容、留意点等をとりまとめている。
国土交通省:事前復興まちづくり計画検討のためのガイドライン(2023年7月)
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●事前復興は「準備する復興準備」から
「実践しておく事前復興」への理念の戦略の取組みへ(中林一樹氏)
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「事前復興」とはなにか――中林一樹・首都大学東京名誉教授によれば、「事前復興」の発想は1980年後半代から具体化し、その最初の取組みは、1978年に東海地震対策としての政府(当時:国土庁 *国土交通省の前身)の取組みだったという。
しかし、阪神・淡路大震災では事前に復興対策の準備はなく、発災後に復興に取り組んだものだった。建設省(当時)は兵庫県や神戸市に対して、「酒田方式」(1976年酒田大火での復興策=建築制限を先行、その後に市街地復興計画を決定)での復興に着手。いっぽう東京都は当時、内閣府に先駆けて1993年度から東京区部直下地震の被害想定作業に取り組み、1995年3月に想定結果を発表する予定の矢先、1月17日に阪神・淡路大震災が発生した。
中央防災会議は1995年7月に阪神・淡路大震災の教訓を踏まえて防災基本計画を緊急改定。新たな項目として「災害復旧・復興への備え」が示され、「国土庁は、被災地方公共団体が復興計画を作成するための指針となる災害復興マニュアルの整備について研究を行う。また、東海地震等あらかじめ大規模災害が予想されている場合について、事前復興計画の作成、復興シミュレーションの実施について研究を行う」と記載された。
2013年の南海トラフ巨大地震対策特別措置法で、14都県139自治体を津波避難対策特別強化地域に指定、防災集団移転事業の事前実施を対策メニューとして位置づけ、補助金を上乗せしたことはまさに、「事前復興事業」の法定事業化と言えた(中林教授)。
中林教授は、「事前復興の理念は、『準備する復興準備』の理念から、『実践しておく事前復興』への戦略として取り組むべき。それはまた、“事前防災”に“事前復興という切り口”からの新たな理念をもたらし、抜本的な事前防災を切り開く「事前復興」の戦略的な取組みにもなる」としている。
中林一樹:事前復興の理念と戦略(「21世紀ひょうご」特集 事前復興/2017 Vol.22)
〈2024. 04. 23. by Bosai Plus〉