坂茂建築設計 しなやかな“紙”で強靭な仮設支援
芝浦工大建築学部の学生も支援活動に参加
「PPS/DLT」など独自の技術を活用
本年1月1日に発生した令和6年能登半島地震に際して、建築家・坂茂(ばん・しげる)氏が代表を務めるNPO法人ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク(VAN)と坂茂建築設計が被災地支援プロジェクトを進行させている。
1月9日には、被災者用避難所となっている金沢市の額谷ふれあい体育館に150ユニットの紙管間仕切りシステム=PPS(Paper Partition System)」と段ボールベッドを設営した。
PPSとは、坂氏が考案した紙の管(くだ)でできたフレームに布を掛けて完成するシンプルなパーテーションで、プライバシー確保に有用な手段として、いままでもさまざまな被災地や国際的な難民支援プロジェクトとして活用されてきた。
今回のプロジェクトには、小松マテーレ、良品計画、石川県インテリアコーディネーター協会、アトリエ・ホーボーケン一級建築士事務所、久坂和之建築設計事務所も協力。
また坂氏が特別招聘教授を務める芝浦工業大学(東京都江東区)建築学部の学生7人がこの活動に参加し、仮設住宅建設などのボランティアを実施した。同大では昨年度も、トルコ地震、ハワイの山火事を受け、坂氏が学生を率いて支援活動を行っている。
能登半島地震被災地支援プロジェクトではその後、1月13日、14日、17日に珠洲市緑丘中学校にPPSを150ユニット設置。15日には、白山市松任総合体育館に480ユニット、内灘町ほのぼの湯には30ユニットの設置を完了させている。
坂氏のPPSはこれまでも、国内外のさまざまな災害避難所や感染症対策の受入れ施設で使用されてきた。国内では東日本大震災(2011年)、熊本地震(2016年)、西日本豪雨・北海道胆振東部地震(2018年)、九州南部豪雨(2020年)などの避難所で、海外ではトンガ噴火・津波支援、ウクライナ難民支援(2022年)、トルコ・シリア地震支援(2023年)などで活用されたという。
「ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク(VAN)」は、坂氏が代表を務める住環境に関する支援団体で、国内外の大規模災害発生時に被災者へ住空間支援事業を行うほか、防災訓練を通じた防災・減災意識の啓発に関する事業を行っている。これらの活動により坂氏は、マザー・テレサ社会正義賞(2017年)、読売国際協力賞(2019年)、アストゥリアス皇太子賞平和部門(2022年)など、さまざまな賞を受けている。
VAN+坂茂建築設計:令和6年能登半島地震 被災地支援プロジェクト
〈2024. 04. 04. by Bosai Plus〉