「液状化」は地盤災害 建物耐震化+地盤チェックを
液状化は一度発生したら終わりではなく、
条件が揃えば再度、液状化が発生する
●長周期地震動の揺れで 遠方(新潟県)での「液状化」現象も
令和6年能登半島地震(M7.6)で、石川県輪島市、志賀町で震度7を観測し、能登半島をはじめ日本海沿岸に甚大な被害をもたらしている。この地震では建物倒壊、地震火災、津波などさまざまな被害形態が報じられているが、複数の地域で広範な液状化の発生も報告され、いわゆる地盤災害の様相も呈している。
主な被害状況のまとめとしては――
▼石川県内灘町の内灘砂丘周辺で「側方流動」(地震時に発生する液状化に伴い地盤が水平方向に大きく変位する現象)が発生し、地割れ、地盤沈下、噴砂などが広く確認された。側方流動によって表層地盤が押し出され、家屋の倒壊や側溝・マンホールの浮き上がりなど甚大な被害
▼石川県かほく市大崎付近で発生した大規模地盤変状で、数百件規模の被害が発生
▼富山県滑川市で、神社の石碑、鳥居、石柱、灯篭などの破損や倒壊の被害。県道61号線沿い(常光寺、堀江地内)や運動公園野球場で液状化の影響とみられる地面亀裂を確認
▼のと鉄道七尾線が、路線での液状化の発生により全区間(七尾~穴水駅間)で運転取りやめが発生
一般的に液状化は震度5以上で起きるとされる。地盤調査の専門会社・ジャパンホームシールド株式会社によれば、石川・富山・新潟県と日本海沿岸部の広いエリアで液状化被害が発生し、その理由として地震の規模が大きかったことと、長周期地震動のゆっくりとした揺れが遠方までエネルギーを失わずに伝わる震動だったことが考えられるという。
新潟市中央区川岸町では信濃川の旧河道で液状化被害が多数出ており、ここは1964年新潟地震の際に「液状化現象」が発生した有名な場所で、再液状化が発生したと考えられている。液状化は一度発生したら終わりではなく、条件が揃えば再度、液状化が発生することが確認されたとも。今回液状化被害を受けた北陸地域の地盤データから液状化判定を行ったところ、各エリアで液状化被害の可能性が高い判定が出ており、液状化調査を行えば、事前に液状化被害の可能性を知ることができるとわかったとしている。
●液状化をもたらす地形とは… 自分の住む地域の液状化発生傾向を知ろう
能登半島地震の被災地では、液状化により多くのマンホールが道路から浮き上がる現象が発生、車が通れない箇所もあり、市民生活や復興の足かせになっている。元日の本地震後も続く余震で、新たにマンホールが浮き上がった場所もあるという。マンホールは下水管につながっているため下水管も破損、おおがかりな工事が必要になる。
国土交通省は、過去に液状化被害が出た地区などの下水管にマンホール浮き上がり防止対策(弁やおもりをつける工事など)・耐震化を実施中で、全国の主要な下水管8万6千kmのうち、耐震化工事を済ませたのは約半分で、輪島市や珠洲市は未実施だったという。
このように地震が引き起こす液状化現象は地盤災害として建物倒壊・ゆがみ(不同沈下)、道路破損、噴砂・浸水などをもたらし、復旧・復興の多大な阻害要因となることから、今後の地震防災上、重要な対策課題となっている。
液状化をもたらしやすい地形としては、まず「埋立地、砂丘末端緩斜面、砂丘・砂州間低地、旧河道・旧池沼」、次に「干拓地、自然堤防、三角州・海岸低地」などがあげられる。逆に液状化しにくい地形としては「山地、山麓地、丘陵、火山地など」となる(左図参照)。
私たちとしても、自分の住む地域の“液状化の発生傾向”を知っておくことは重要だ。国土交通省は、全国各地の液状化による危険性を把握することを目的として「地形区分に基づく液状化の発生傾向図」と、「都道府県液状化危険度分布図」をハザードマップポータルサイト『重ねるハザードマップ』で公開しているので、ぜひ確認しておきたい。
国土交通省:ハザードマップポータルサイト『重ねるハザードマップ』
〈2024. 02. 16. by Bosai Plus〉