行動科学の知見(ナッジ)を活用して、
低炭素型のライフスタイルの普及やCO2削減を図る
環境省は、低炭素社会の実現に向けて、市民の自発的な省エネ行動やエコ商品の購入などの行動変容を促す「ナッジ事業」を展開している。「ナッジ」(nudge)とは、英語で「そっと後押しする」という意味で、行動科学の知見を活用して、人びとの意思決定や行動に微妙な影響を与える仕掛けのことだ。環境省は、ナッジ事業を通じて、低炭素型のライフスタイルの普及やCO2削減効果の検証を行っている。
ナッジ事業の一例として、2017年度から21年度まで実施された「低炭素型の行動変容を促す情報発信(ナッジ)による家庭等の自発的対策推進事業」がある。この事業では、民間企業や地方公共団体などが提案したナッジ手法について、実証実験や効果検証を行い、例えば、以下のような取組みが行われた。
▼新学習指導要領に対応した小学校・中学校・高等学校向け省エネ教育プログラム(代表事業者:日本オラクル株式会社)
アクティブ・ラーニングの手法に加え、ナッジや行動変容ステージモデルなどの最新の行動科学の知見を活用した省エネ教育プログラムを開発、全国の学校で実施した。その結果、省エネ教育後に平均5.1%のCO2削減効果が得られたほか、環境配慮行動が持続していることが確認された。
▼省エネ行動促進のための行政窓口を通じたナッジ型情報提供(代表事業者:株式会社メトリクスワークコンサルタンツ)
行政窓口における転入・転居・出生・婚姻などの手続き時に、LED照明や省エネ型冷蔵庫に関するリーフレットを住民に配布し、その後の購買行動や省エネ行動についてアンケート調査を行った。その結果、社会規範や非金銭的利得(環境配慮訴求)などのメッセージが省エネ型冷蔵庫の購入に効果的であり(リーフレットを配布しないグループと比較して4%ポイント向上)、金銭的利得などのメッセージが省エネ行動に効果的であることが分かった。
このように環境省は、一定の効果が実証されたナッジ手法について、その社会実装を推進するための補助事業も実施している。また、ナッジ事業の取組みは、国際的にも注目されてり、OECDや世界銀行などの国際機関との連携も進めている。
ナッジは、強制や制限ではなく、選択肢や情報の提示によって、人びとの自発的な行動変容を促す仕掛けであり、環境省はナッジを活用して、低炭素型のライフスタイルを普及させることで、地球温暖化対策に貢献することを期待している。
〈2023. 09. 23. by Bosai Plus〉