「あかちゃんの防災」の認知拡大の必要性について、
防災研究員や地方自治体職員が知見や取組み事例を発表
育児用品をはじめマタニティ・介護用品・保育サービスを手がけるブランド「ピジョン」を運営するピジョン株式会社が、「防災研究員の学術的視点と地方自治体の事例から学ぶあかちゃんの防災 〜災害時に特に支援を要する“要配慮者”「妊産婦」「乳幼児」をみんなで守る〜」をテーマに、去る8月8日、「あかちゃんの防災勉強会」を開催した。
ピジョンは、これまで培ってきた赤ちゃんに関する知見やデータを活用し、「どんなときも赤ちゃんを守り、赤ちゃんにやさしい場所をつくり続けるために、『赤ちゃんの防災』をはじめとした、もしもへの備えを広めていく」ことを社是として宣言。また、同じ想いで『赤ちゃんの防災』に取り組む自治体や企業、団体と協力し、「赤ちゃんにやさしいまちづくり」を進めていくことを宣言している。
ピジョンが2021年に、妊娠中から1才6カ月までの赤ちゃんがいる全国のパパ・ママを対象に実施した調査(2021年5月実施、調査対象1270名)で、「災害に対して、どの程度不安を感じているか」という質問に対して8割以上が「とても不安」「やや不安」と回答。また、子どもが生まれて、もしくは妊娠をきっかけに「防災意識に関心が高まった」と回答したパパ・ママは約7割もいた。
そのいっぽうで、「子どものために防災を意識して準備したり、購入したものはあるか」という質問では、「購入したものがある」「あえて防災用には購入していないが、準備しているものがある」、つまりなにかしらの「行動」に移したと回答したパパ・ママは28%と3割にも満たない結果となった。
同勉強会では、国立研究開発法人防災科学技術研究所の研究員や、神奈川県鎌倉市と大阪府柏原市の職員が登壇し、見過ごされがちだった“要配慮者”となりうる「妊産婦」や「乳幼児」に着目、支援にあたるうえで重要になる基本的な認識や具体的な備えの方法と、自治体の取組み事例について発表が行われた。
●ピジョンの取組み、防災研究者の提案、行政の取組み事例…
勉強会での発表内容の一部を紹介すると、ピジョン株式会社ベビーケア事業本部の田島誠也さん(防災士) による「あかちゃんの防災における備えの現状とピジョンの活動報告」で、ピジョンは「災害時に役立つ商品」と「情報」の提案の両輪で「あかちゃんの防災」に取り組んでいて、商品面では、”日常の子育てのなかで自然にソナエができている”をコンセプトに「sonaetta(ソナエッタ)」シリーズを2022年8月から販売開始。さらに、月齢・場面ごとに必要な商品が変化していくことから、赤ちゃんの健やかな生活に必要な「授乳・食事」「排泄・清拭」「口腔ケア」の3つのカテゴリを「あかちゃんの防災」グッズの対象として「ローリングストック」を提案。情報面では、同社と自治体・企業が協働し赤ちゃんにやさしいまちづくりを進める取組みとして、2022年9月1日から、「あかちゃんとそなえの輪 推進プロジェクト」を始動。「あかちゃんの防災」の社会定着をめざして継続的に活動しており、現在までに23都道府県32自治体の賛同を得ている」としている。
防災科学技術研究所(災害過程研究部門)の辻岡 綾さんは、「誰一人取り残さないインクルーシブ防災〜妊産婦・乳幼児世帯の防災を考える」と題して発表。被災現場では、「妊婦や産婦、乳幼児などは感染症に罹患しやすくなり、健康リスクが高くなるため、とくに配慮が必要」とした。また、災害時に妊産婦・乳幼児世帯が困ったこととして、「ベビーフードや栄養・塩分に配慮された食事が手に入らなかった」「おむつ替えや授乳ができるスペースがなかった」「子どもの声がうるさいので(気をつかった)」など、支援物資や避難所設備・運営に関する声などがあがっているとし、事前にできる備えとして、「災害時の最寄りの避難所を確認」、「普段のおでかけセットを災害用にも用意」などを提案。また、普段から地域の避難訓練に家族で参加するなど、地域やコミュニティで「支援が必要な存在である」ことを知ってもらうことも大切とした。
〈2023. 08. 16. by Bosai Plus〉