P3 2 慶應大学SFC 防災社会デザイン研究室「防災小説」教材のイメージカットより 640x350 - 「防災小説」で災害想像力を養う

災害との遭遇、“自分ごと”として想像してみる…防災小説

その時自分はなにをしているか、家族はどこでなにをしているか
――希望をもって終えられますか?

P3 1 「防災小説」教材~『デイズアフター巨大災害 SFC物語』」の表紙 - 「防災小説」で災害想像力を養う
「防災小説」教材~『デイズアフター巨大災害-SFC物語』」の表紙

 自然災害をテーマとする小説は、基本的にはエンタテインメントとして刊行されることが多いが、なかにはエンタテインメントとしての第一級のクオリティを保ちながら、想像力をバネに科学を跳び越え、災害の不条理性を暴く優れたものもある。その想像力は同時に、自然の脅威下で、人間の行動規範(愛、正義、勇気、誇りなど)、危機管理手法(情報管理、分析、リーダーシップ、行動力など)の検証をRPG的に試みる点で防災教材ともなる。
 その意味で本紙のお薦め災害小説として、小松左京の『日本沈没』と、石黒 耀の『死都日本』をあげておこう。いずれも長編だが、災害・防災研究者の書評・分析対象にもなった傑作として一読をお薦めする。

●「防災小説」――あなたも創作に挑戦してみませんか?

 さて、ここで紹介するのは慶應大学SFC・防災社会デザイン研究室・大木聖子准教授(防災教育)が中学生以上を対象として普及を推進する「防災小説」だ。この「防災小説」はもちろん芥川賞や直木賞を狙った作品創作にはあらず、「自身が災害に遭遇することを『自分ごと』として考えることをめざした教材」である。

 同ホームページによると、「近未来(例:およそ1カ月後)の特定の日時に巨大地震が発生したと想定し、自分を主人公とした物語を800字程度で綴ります。その時自分はなにをしているか、家族はどこでなにをしているか、自分はどんな気持ちになるか、町の様子はどうか、などを想像します。『まだ』起きていない未来の地震を『もう』起きたものとして描くのが特徴です。唯一のルールは『物語は希望をもって終えること』です。生徒は想像力を働かせながら、世界に一つだけのストーリーを作っていきます」とある。

慶應大学SFC 防災社会デザイン研究室:「防災小説」

P3 3 「第2回 全国「防災小説」交流会」(2022年11月16日開催済み)のチラシより - 「防災小説」で災害想像力を養う
「第2回全国「防災小説」交流会」(2022年11月16日開催済み)のチラシより

 同研究室では、これまでの研究から、生徒自身にさまざまな変化をもたらすことが明らかになったという。「防災小説」の創作に挑戦することで、防災意識・行動が変わる生徒や、自己実現への意欲が向上する生徒もみられた。
 また、小説が完成したあとに他のクラスメイトが綴った「防災小説」を読む、あるいは聞くことも非常に効果的で、自分が想像したこととはまったく別のシナリオに触れることで、新たな気づき・発見につながるのだという。
 「防災小説」は全国各地の学校で活用されていて、メディアも注目、時事通信の記者は自らも「防災小説」創作に挑戦している。

時事通信:「時事通信が被災」小説にしたら わたしが主人公、記者も書いてみた

〈2023. 04. 20. by Bosai Plus

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