私たちは次世代になにを残すのか
この10年間に行う選択や実施する対策は、現在から数千年先まで影響を持つ
●気候変動は人間の幸福 と惑星の健康に対する脅威
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第58回総会が去る3月13日20日、インターラーケン(スイス連邦)で開催され、IPCC第6次評価報告書(AR6)統合報告書の「政策決定者向け要約(SPM)」が承認されるとともに、同報告書の本体が採択された。統合報告書の公表をもって第6次評価サイクルは終了となり、本年7月の第59回総会において新しい議長団の選挙が行われ、第7次評価サイクルが始まることになる。
![気候変動の”時限爆弾” P5 1 「AR6 Synthesis Report Climate Chage 2023」HPより - 気候変動の”時限爆弾”](https://www.bosaijoho.net/wp/wp-content/uploads/2023/05/P5-1_%E3%80%8CAR6-Synthesis-Report-Climate-Chage-2023%E3%80%8DHP%E3%82%88%E3%82%8A.jpg)
![気候変動の”時限爆弾” P5 2 「温暖化を抑えるには緊急に温室効果ガスの排出削減が必要」(IPCC資料より) - 気候変動の”時限爆弾”](https://www.bosaijoho.net/wp/wp-content/uploads/2023/05/P5-2_%E3%80%8C%E6%B8%A9%E6%9A%96%E5%8C%96%E3%82%92%E6%8A%91%E3%81%88%E3%82%8B%E3%81%AB%E3%81%AF%E7%B7%8A%E6%80%A5%E3%81%AB%E6%B8%A9%E5%AE%A4%E5%8A%B9%E6%9E%9C%E3%82%AC%E3%82%B9%E3%81%AE%E6%8E%92%E5%87%BA%E5%89%8A%E6%B8%9B%E3%81%8C%E5%BF%85%E8%A6%81%E3%80%8D%EF%BC%88IPCC%E8%B3%87%E6%96%99%E3%82%88%E3%82%8A%EF%BC%89.jpg)
統合報告書のSPMは、「A:現状と傾向」、「B:長期的な気候変動、リスク、および応答」、「C:短期的な応答」――で構成されている。以下、各項の抄訳ポイントである。
【A:現状と傾向】
人間活動が地球温暖化を引き起こしてきたことには疑う余地がない……一部の生態系と地域では、ハードな(変化しない)適応の限界およびソフトな(変化しうる)適応の限界に既に達している。
【B:長期的な気候変動、リスク、および応答】
地球温暖化が進行するにつれて同時多発的なハザードが増大する……予測される長期的影響は現在観測されている影響よりも最大で数倍高い。気候変動に起因するリスクと予測される悪影響、関連する損失と損害は、地球温暖化が進行するにつれて増大する……人為的な地球温暖化を抑制するには、正味ゼロのCO2排出量が必要。
【C:短期的な応答】
気候変動は人間の幸福 と惑星の健康に対する脅威である。全ての人々にとって住みやすく持続可能な将来を確保するための機会の窓が急速に閉じている。この10年間に行う選択や実施する対策は、現在から数千年先まで影響を持つ。
国連総会は3月29日、気候変動対策で国が負う義務について、国際司法裁判所(ICJ)に勧告的な意見をまとめるよう求める決議案を全会一致で採択した。決議は、ICJに対して国が温室効果ガスの対策を講じる法的義務や、国が対策を取らず環境に大きな損害をもたらした場合の法的責任に関する見解を求めるもので、気候変動の悪影響を受けている南
太平洋のバヌアツが主導し、日本など130カ国以上が共同提案国に加わった。
ICJの勧告意見には法的拘束力はないが、勧告意見は今後の各国の気候変動対策を後押しする可能性があるとみられている。
気象庁:IPCC 統合報告書の政策決定者向け要約(SPM)の概要
〈2023. 04. 06. by Bosai Plus〉