気象庁 防災情報のさらなる改善へ
緊急地震速報に長周期地震動階級に基づく基準を追加
防災気象情報は「簡潔・丁寧」がキーワードに

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緊急地震速報に新基準 気象庁、長周期・階級3以上
 高層ビルなど、“重厚長大建造物”に警戒促す

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 気象庁は2022年度後半から、新たな基準を設けた緊急地震速報の運用を始める予定だ。これまでは「最大震度5弱以上」を予測した地震について、震度4以上が想定される地域を対象としていたが、4段階ある長周期地震動の「最大階級3以上」を予測したときにも、階級3以上の想定地域に発表する。
 気象庁は新基準の運用により、改めて大地震と長周期地震動への警戒を呼びかける。なお、新基準では、震度3以下の地域でも長周期地震動速報の対象になる可能性がある。

P4 1 長周期地震動階級関連解説表(気象庁資料より) - 緊急地震速報に<br>長周期地震動リスク追加
長周期地震動階級関連解説表(気象庁資料より)

 長周期地震動は周期が長いゆっくりとした揺れで、高層ビルの上階や、石油タンクなどいわゆる重厚長大な建造物で大きな揺れを起こす。その地震動は、震源から遠くまで届きやすく、南海トラフ巨大地震のような巨大地震では、離れた場所でも高層ビルなどが大きく揺れる恐れがある。
 東日本大震災では、大阪市内は震度3の揺れだったが、高層ビルの高層階では立っていられないほど大きく揺れたいっぽう、その1階ではほとんど揺れを感じなかったという証言もあった。このように、長周期地震動の揺れでは、固定していないキャビネットや複合機などが数メートルも大きくスライドして壁やガラスを破ったり、転倒したり、エレベーターなどの施設被害を起こしたりする。

P4 2 長周期地震動の影響を受けた高層ビル内の揺れの状況(アンケート結果より。気象庁資料) - 緊急地震速報に<br>長周期地震動リスク追加
長周期地震動の影響を受けた高層ビル内の揺れの状況(アンケート結果より。気象庁資料)
P4 3 東京都内の同一ビルにおける低層階と高層階の被害状況(気象庁資料より) - 緊急地震速報に<br>長周期地震動リスク追加
東京都内の同一ビルにおける低層階と高層階の被害状況(気象庁資料より)

 3大都市圏は、厚い堆積層を持つ平野部だから歴史的に人口・資源が収集して都市として発達を遂げてきたが、皮肉にもこの堆積層が、長周期地震動を増幅させ、超高層ビルや石油タンクなど重厚長大な構築物を揺らすという、立地地盤として大きな不安要因となることが明らかになっている。
 とくに増え続ける超高層ビル等への影響については近年、社会的な関心が極めて高く、その構造躯体への影響や、高層マンションや高層オフィスなどの一般家具やオフィス家具、家電製品等転倒や移動、また、人の行動に与える影響に関する注意喚起がますます重要となっている。

気象庁:長周期地震動階級に基づく基準を追加した緊急地震速報の配信について

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防災気象情報は、「簡潔」、「丁寧に解説」の2種類に整理を
 シンプルでわかりやすい防災気象情報の再構築へ 有識者会議

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 防災気象情報は、大雨や暴風などを対象に、注意報、警報、特別警報、土砂災害警戒情報、指定河川洪水予報などが段階的に発表される。また、大雨や洪水、高潮、土砂災害関連の情報は、新たに導入された警戒レベルの相当情報として位置づけられ、市区町村の防災対応や住民の主体的な避難行動を支援している。それらは一定の効果をあげてきたが、そのいっぽうで、情報の数が増えたり運用が複雑化して、「情報の数が多すぎる」「名称がわかりにくい」などの課題も指摘されている。

 そこで、気象庁、国土交通省では、外部有識者による「防災気象情報に関する検討会」(座長:田中淳・東京大学大学院情報学環特任教授)を開催して防災気象情報全体の体系整理や個々の情報の見直し、わかりやすい情報への改善などを中心に検討、去る9月9日、「中間とりまとめ」を公表した。

P4 4 「防災気象情報に関する検討会」 中間とりまとめより - 緊急地震速報に<br>長周期地震動リスク追加
「防災気象情報に関する検討会」 中間とりまとめより

 「中間とりまとめ」は、「防災気象情報とは、気象現象の正確な観測・予測に閉じるのではなく、どのような状況になり得るかという情報を科学的に迅速に伝えることで、情報の受け手の主体的な判断や対応を支援することが役割。その役割を果たすために、防災気象情報は、避難などが必要な状況を伝える「簡潔な情報」と、その背景や根拠を「丁寧に解説する情報」の2種類に大きく整理できる」としている。
 同検討会は2023年度内を目標に、最終とりまとめを行う予定。

気象庁:「防災気象情報に関する検討会 中間とりまとめ」について

〈2022. 09. 17. by Bosai Plus

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