image 橋梁のメンテナンス工事(AC2683452 m) 800x350 - インフラリスク<br>予防保全で最悪事態回避

「予防保全=インフラ長寿命化計画」で
「最悪事態/国難⇒最貧国化」回避へ

インフラメンテ・予算の“選択と集中”
――ドローン、AIなど最先端テクノロジーの駆使で防災・減災

【 高齢化する成熟社会 社会インフラの老朽化も同時進行 】

 近年、いわゆる“インフラ”老朽化が大きな社会課題となっている。象徴的には、2012年の笹子トンネル天井板崩落事故や、2021年和歌山県紀の川に架かる水道橋崩落事故などの大きな事故があった。また、21年10月7日に首都圏で震度5強の揺れを観測した地震では、千葉県市原市の養老川にかかる水管橋の送水管から一時激しく水が噴き出した。管の継ぎ目部分で止水ゴムを固定するボルト6本が経年劣化で腐食しており、うち1本が地震で破断したためだった。

P1 橋梁のメンテナンス工事(AC2683452 m) - インフラリスク<br>予防保全で最悪事態回避
上写真は、橋梁のメンテナンス工事の様子(Photo:AC)。超高齢化社会、インフラ老朽化社会を迎えた成熟国家・日本は、“消滅可能性都市”ならぬ“防災不可能性国家”に陥る状況でもある。これを回避すべく「国土強靭化計画」が図られ、大規模な予算が投じられているが、それでも足りないという。土木学会「技術検討報告書」(2018年)の危機意識――「現状のままでは『国難』級の巨大被害で最貧国化は避けられない」――防災・減災予算の選択と集中を、改めて国の為政者、経済界、防災関係機関、そして私たち地域防災にかかわる者は肝に銘じたい

 東京都では大事故にはならないまでも、毎年10件以上の水道管破裂事故が起こっている。東京都水道局によると、2018年度時点で都営の水道管の総延長は約2万7000kmで、99%以上が強度の高い水道管だというが、法定耐用年数40年を超えた水道管が16.2%あり、継ぎ目の耐震化は19年度時点で45%にとどまるという。
 大阪市では、1970年ごろに整備された水道管の9割が更新時期を迎えているため、水道管の老朽化割合が20年度で5割を超えるという。このように、地中に埋まる水道管も含めて全国多くの場所で漏水が起きている。

P2 1 各市町村にある橋梁損傷度に基づいた評価(土木学会資料より) - インフラリスク<br>予防保全で最悪事態回避
各市町村にある橋梁損傷度に基づいた評価(土木学会資料より)。健康診断評価に用いている損傷度を使用。この結果は、 橋梁点検・診断が制度として始まる前のもので(2014〜18年)、現在、劣化橋梁を健全な状態に戻すための取組みが行われている

●インフラメンテは「事後保全」から「予防保全=インフラ長寿命化計画」へ

 インフラは言うまでもなくインフラストラクチャー(infrastructure)の略語で、「社会や経済、国民生活が拠って立つ基盤となる必要不可欠な施設やサービス、機関、制度、仕組みなど」を言う。ここではとくに“ハード”の意味で、道路、橋、トンネル、上下水道、送電線、河川、ダム、砂防、海岸・港湾、鉄道、空港、病院、公園、公営住宅、官庁施設などを指し、その老朽化の問題が本特別企画のテーマだ。

 わが国の社会インフラは1960年代に始まった高度経済成長期に一気に整備・加速されていったが、それから半世紀を経て、そうしたインフラの老朽化が顕在化・進行している。そして国土交通省の推計によれば、これらの保全には膨大なコストが見込まれ、インフラに不具合が生じてから修繕を行う「事後保全」対策だと、2048年までに10.9兆円~12.3兆円の維持管理・更新費がかかると見積もる。
 いっぽう、不具合が生じる前に修繕やメンテナンスを行う「予防保全」を実施すれば、2048年までにかかる維持管理・更新費は5.9兆円~6.5兆円と、約47%も抑えることができるとしている。

 そこで国は、インフラ老朽化対策として「予防保全=インフラ長寿命化計画」を進めているものの、公共事業関係費が減少するなかで、財政的にも人員的にも十分な点検・補修を行うことは不可能に近い状況となっている。しかし、デジタルテクノロジーの急速な進展が少なからずそれを補う可能性も浮上してきた。ドローンやAI、センサー、ロボットなどの、ハード・ソフトを超えた“第3のテクノロジー”とも言うべき新技術だ。

P2 2 「予防保全」のイメージ図(国土交通省資料より) - インフラリスク<br>予防保全で最悪事態回避
予防保全のイメージ図(国土交通省資料より)

 国土交通省は昨年(21年)8月、直近5年間の点検で「早期または緊急に措置を講ずべき」と診断された橋梁やトンネルなどの機能や点検結果、措置状況などを地図上で閲覧できる「全国道路構造物情報マップ」(損傷マップ)を初めて公開。さらに、「各都道府県における道路管理者毎の老朽化対策状況」も公開し、橋梁やトンネル、付属物などの判定区分や措置状況を都道府県別にグラフや表などで示している。

全国道路構造物情報マップ(損傷マップ)

●危機意識「 現状のままでは『国難』級の巨大被害で最貧国化」の共有を

 インフラ老朽化は私たちの社会活動、日常生活に大きな影響をもたらす難題ではあるが、これと自然災害が重なれば、”同時多発複合災害”になることは必定であり、災害の世紀とされる今世紀のわが国の、防災・減災の喫緊の課題となっている。

P2 3 「公共事業関係費(国土交通省関係)の推移」より - インフラリスク<br>予防保全で最悪事態回避
「公共事業関係費(国土交通省関係)の推移」より

 東日本大震災を受けて2013年に施行された国土強靱化基本法に基づき、大規模な災害からの被害の最小化に向けた重点施策を盛り込んだ「国土強靱化基本計画」は、インフラ事業を中心に防災、減災対策の課題を洗い出すことで、経済産業省や国土交通省などの関係省庁や各地の地方自治体の防災対策に反映しようというものだ。2018年6月、国土強靱化推進本部は「国土強靱化アクションプラン2018」を公表、その2日後に土木学会が巨大災害被害推計を行った「技術検討報告書」を公表した。

 前者(国土強靱化)の基本目標は、“いかなる災害等が発生しようとも”――①人命の保護が最大限図られる、②国家及び社会の重要な機能を致命的な障害を受けず維持、③国民の財産及び公共施設の被害最小化、④迅速な復旧・復興――を掲げ、大規模自然災害を想定した「事前に備えるべき8つの目標」、その妨げとなるものとしての「45の起きてはならない最悪の事態」、「起きてはならない最悪の事態」のうち重点的に対応するとして選定した「15の事態」(重点化プログラム)を想定。さらに、改善すべき施策を分析・整理する「脆弱性評価」、「大規模自然災害をリスクとして想定」、「多数の被災者の健康状態の悪化・死者の発生」、「人材育成」、「官民連携」などの追加を行った。

 いっぽう後者(土木学会「技術検討報告書」)は、今後起こり得る巨大災害による被害推計(経済活動の長期低迷による最大推計)を、南海トラフ地震で1410兆円(18年度の一般会計予算・97兆7千億円の14年分)、首都直下地震で778兆円などとし、「本被害想定は、これでも『過小評価』をしている可能性も危惧される。わが国は現状の防災力のままでは、深刻な『国難』級の巨大災害は避けられない状況にある」とした。

防災情報新聞:「国難」回避に向けて 強靭化アクションプラン 2018

防災情報新聞:土木学会の長期被害推計 巨大災害で 「国難⇒最貧国化」 の衝撃

P2 4 建設後50年以上経過する社会資本の割合 - インフラリスク<br>予防保全で最悪事態回避
建設後50年以上経過する社会資本の割合

 超高齢化社会、インフラ老朽化社会を迎えた成熟国家・日本――土木学会「技術検討報告書」の危機意識、「現状のままでは『国難』級の巨大被害で最貧国化は避けられない」を、改めて国の為政者、経済界、防災関係機関、そして私たち地域防災にかかわる者は共有したい。いまこそ、限られた予算・人員・資源、そして最先端テクノロジーを社会インフラの整備・メンテナンスに“選択・集中”しなければならない。

〈2022. 07. 15. by Bosai Plus

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