大雨災害と闘う「防災気象情報」―今季こそ“犠牲者ゼロ”を

防災気象情報はわかりにくい?
毎年変更されるが「犠牲者ゼロ」をめざす現状・最善の“知恵”ではある…

 6月に入り、出水期を迎える。出水期とは川が増水しやすい時期を言い、わが国では融雪の時期から、集中豪雨(梅雨)や台風の多い時期が出水期(6月〜10月)だ。国土交通省、気象庁は出水期に先立ち去る5月18日、住民の適切な避難の判断・行動につながるよう防災気象情報の伝え方の改善を発表した。主な取組みは次の4項目となる。

① 線状降水帯による大雨の半日程度前からの呼びかけ
② キキクル(危険度分布)「黒」の新設と「うす紫」と「濃い紫」の統合
③ 大雨特別警報(浸水害)の指標の改善
④ 指定河川洪水予報の氾濫危険情報を予測でも発表
 この4項目と新たに追加された「高潮警報の内陸市町村での運用追加」について、以下、気象庁資料をもとに解説を加えておこう。毎年のように情報が更新されてわかりにくい防災気象情報だが、激甚化する大雨災害から命を守る重要な情報である。

① 線状降水帯による大雨の半日程度前からの呼びかけ(6月1日〜)
 線状降水帯の発生予測情報を6月1日から、半日~6時間前に発表する。線状降水帯とは、発達した積乱雲が帯状に連なり大雨をもたらす現象で、2018年西日本豪雨や球磨川が氾濫した2020年熊本県の豪雨などの事例がある。
 気象庁は昨年から線状降水帯の発生を“確認した場合”に「顕著な大雨に関する情報」を発表しているが、本年6月1日からは発生が“予測される場合”にも情報が出される。
 同予測情報の趣旨は状況が悪化する前の段階、日中の明るい時間帯などに早めの避難を意識してもらうことにあるが、線状降水帯の発生予測はむずかしいのが実情だ。気象庁の試算によれば、“的中率”は全国単位で2回に1回程度、地方単位で4回に1回程度で、“見逃し”も3回に2回程度あったという。線状降水帯は甚大な災害を引き起こし得ることから、“雲行き(” 防災気象情報)に十分な注意・警戒が必要である。

P4 1 「線状降水帯」による大雨の可能性を半日前から発表 - 今出水期から変わる防災気象情報
「線状降水帯」予測情報(6月1日〜)

② キキクル(危険度分布)「黒」の新設と「うす紫」と「濃い紫」の統合(6月30日〜)
 大雨災害の危険度を5段階に色分けして示す「キキクル(危険度分布)」(気象庁HP参照)の一部を変更、キキクルの5色を「大雨警戒レベル」の色に合わせ、危険度が最も高い警戒レベル5相当の状況は「黒」色で示し、「災害切迫」というキーワードを使う。それに次ぐ警戒レベル4相当の『危険』はこれまで濃い紫と薄紫で段階的に表していたが、「紫」に統一。気象庁は「紫」の段階までに安全な場所への避難を促している。

P4 2 キキクル「黒」の新設と「うす紫」と「濃い紫」の統合(6月30日~) - 今出水期から変わる防災気象情報
キキクル色分け変更(6月30日~)

③ 大雨特別警報(浸水害)の指標の改善( 6月30日〜)
 大雨特別警報(浸水害)危険度の推計はこれまでの5km四方を、6月30日から1km四方へ変更、新たに島しょ部も発表の対象に加える。また、特別警報の基準を「3時間・48時間の降水量」や「土壌雨量指数」から、降った雨から河川の洪水危険度を推計する「流域雨量指数」と、雨水が地表にどれだけたまっているかを数値化した「表面雨量指数」へと変更して、これまでより高い確度で発表する。

P4 3 大雨特別警報(浸水害)の指標の改善(6月30日~) - 今出水期から変わる防災気象情報
大雨特別警報(浸水害)指標改善(6月30日~)

④ 指定河川洪水予報の氾濫危険情報を、予測でも発表(6月13日〜)
 川の情報として、「氾濫危険情報」は避難指示の目安となる「氾濫危険水位」に達した場合に発表されているが、これに加えて、雨量などをもとにした水位の予測から3時間以内に氾濫する危険性のある水位に到達する見通しとなった場合にも情報発表する。国が管理する全国298の河川で6月13日から。

P4 4 指定河川洪水予報の氾濫危険情報を予測でも発表 - 今出水期から変わる防災気象情報
指定河川洪水予報を予測でも発表

*高潮警報の内陸市町村での運用追加(5月26日〜)
 高潮警報はこれまで主に海岸沿いの自治体を対象に発表されていたが、5月26日から内陸自治体にも適用。新たに対象となるのは東京都(目黒区、新宿区)、愛知県(豊明市、一宮市、津島市、稲沢市、愛西市、清須市、北名古屋市、あま市、豊山町、大治町、蟹江町、大府市、阿久比町、安城市、知立市)、大阪府(豊中市、吹田市、和泉市)、徳島県(藍住町)の21自治体。高潮の川の遡上などで被害のおそれがある自治体だ。

P4 5 高潮警報の内陸市町村での運用追加 - 今出水期から変わる防災気象情報
高潮警報の内陸市町村での運用追加

国土交通省:今出水期から行う防災気象情報の伝え方の改善について

〈2022. 06. 03. by Bosai Plus

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