image 日向灘及び南西諸島海溝周辺の地震活動の長期評価(第二版)「評価対象領域」より 756x350 - 揺れる日本地殻変動帯列島

悪夢を彷彿―福島県沖地震 新たな地震評価で四面楚歌

3月16日・18日の東北沖地震、日本・千島海溝巨大地震想定、
能登半島(珠洲市)頻発地震、そしてさらに…

【 “常在揺動”―海に囲まれた地殻変動帯、日本列島の宿命 】
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3月16日福島県沖の地震――東日本大震災を彷彿
「津波なし」に安堵、ただし、新幹線脱線、広域大停電など…

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 2011年3月11日の東日本大震災から11年の周年を経た3月16日23時36分頃、福島県沖の地震(M7.3)が発生した。宮城県登米市・蔵王町、福島県の国見町・相馬市・南相馬市の5市町村で最大震度6強を観測したほか、北海道から九州地方にかけて震度6弱~1を観測した(気象庁発表)。
 気象庁は、この地震の発生後、震度4を観測した地震が1回発生したほか震度1以上を観測した地震が複数回発生、またこの地震発生の約2分前にも地震(M不明)が発生していたとした。

P2 1 3月16日福島県沖地震の震度分布(気象庁資料より) - 揺れる日本地殻変動帯列島
3月16日福島県沖地震の震度分布(気象庁資料より)

 いっぽう、NHKテレビなどでの緊急地震速報の警報音がこの地震の前後約10分間に3度鳴りわたったが、気象庁は、ほぼ同時刻に宮城県沖でも小さな地震があったために“過大な推定になったため”と説明した。
 宮城県北部では、長周期地震動階級4を観測した(高層ビル高層階等では、立っていることができないほどの非常に大きな揺れとされる)。
 幸い大津波は発生せず、宮城県石巻港で20cmの潮位変化が観測された程度だったが、この地震の揺れはまさに、揺れを感じた広範囲の人びとに東日本大震災(東北地方太平洋沖地震 M9.0)での揺れを想起させるものだったろう。
 3月16日福島県沖の地震での人的被害は3人(宮城県2、関連死1含む、福島県1)、重傷者26人、住家被害・全壊21などだった。

 なお、この地震で福島県浜通り地方に立地する火力発電所が相次いで被災、東京電力管内へも送電していることから、東京電力管内でも一時、200万戸を超える大規模な停電が発生した。その後、気温の低下で暖房用の電力需要が急増、日差しが足りず太陽光発電の出力も低下したため、政府は3月21日、東京電力と東北電力の管内に「電力需給逼迫警報」を初めて発令した。これは東日本大震災と原発事故での電力需給逼迫により2012年に導入された制度で、企業や一般家庭に22日朝からの節電を呼びかけた。

 また、JR東日本・東北新幹線(やまびこ223号、乗客75名)が福島駅~白石蔵王駅間で脱線、けが人5人を出し、路線の電柱や高架橋など1千カ所が損傷した。東日本大震災では、同区間で約1200カ所の損傷が確認され、それに次ぐ被害規模となり、全面再開は4月中旬以降になるという。
 こうした地震被害事象は東日本大震災を彷彿させるものであり、これに大津波発生が重なるとまさに悪夢の再現になり得たが、深夜の地震での避難の課題も再浮上した。

 そして、その2日後の3月18日23時25分頃、岩手県沖でM5.6の地震が発生、岩手県野田村で最大震度5強を観測したほか、北海道から東北地方にかけて震度5弱~1を観測。緊急地震速報(警報)も発表された。3月16日の福島県沖の地震とは異なる発震機構とされ、規模は小さく、津波を伴うこともなかったが、震源が陸地に近く浅かったことから、比較的狭い範囲を強い揺れが襲ったものとみられている。

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3月18日岩手県沖地震の震度分布(気象庁資料より)

 東日本大震災の11周年を境に起こった“連続的な大地震”に、改めて常在戦場ならぬ「日本列島、常在揺動」、備えの意識を新たにしたい。
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地震本部、新たに2つの長期評価を公表――
① 日向灘及び南西諸島海溝周辺の地震活動
② 日本海南西部の海域活断層

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 政府の地震本部・地震調査委員会が去る3月25日、①「日向灘及び南西諸島海溝周辺の地震活動」について「長期評価・第2版」と、②「日本海南西部の海域活断層の長期評価(第1版)―九州地域・中国地域北方沖」を公表した。

①日向灘及び南西諸島海溝周辺の地震活動の長期評価(第2版)
 日向灘及び南西諸島海溝(琉球海溝)周辺では、日本列島が位置する上盤側(陸側)のプレートの下方に、フィリピン海プレートが南東方向から沈み込み、その境界やプレートの内部では、蓄積されたひずみを解放するために大地震が高頻度で発生する。

P1 日向灘及び南西諸島海溝周辺の地震活動の長期評価(第二版)「評価対象領域」より - 揺れる日本地殻変動帯列島
南海トラフ巨大地震の想定震源域に隣接する日向灘や南西諸島などで、マグニチュード(M)8級の巨大地震が起き得るとする新たな長期評価を、政府の地震本部が公表した(上図)。2004年に初公表した同地域の長期評価ではM8級は想定されなかったが、東日本大震災を踏まえて見直された。また日本海南西部の海底活断層の長期評価も初めて行われ、30年以内にM7以上の地震が起きる確率が活断層としては高い8~13%とされた。東日本大震災から11年の3月、福島県沖・岩手県沖の地震が再び私たちの“備え”を揺らした――まさに「常在揺動」、次に備えを!
P2 3 日向灘及び南西諸島海溝周辺で発生した地震の震央分布(地震本部資料より) - 揺れる日本地殻変動帯列島
日向灘及び南西諸島海溝周辺で発生した地震の震央分布(地震本部資料より)

▼2004年の第1版では沖縄県・与那国島周辺でマグニチュード(M)7.8程度が最大の想定だったが、日向灘や与那国島を含む南西諸島周辺でそれぞれM8程度の地震があり得ると評価。ただし、17世紀以降では発生例が少なく発生確率は「不明」
▼日向灘周辺では、1662年のM7.6と推定されていた地震がM8級だった可能性。南西諸島海溝周辺では、1911年に津波を伴うM8の鹿児島県・喜界島地震が起きた。
▼1771年に石垣島近海で八重山地震津波(明和の大津波)が起き、高さ約30mの津波が発生。先島諸島で死者・行方不明者が1万人を超えた。津波の高さから推定する津波マグニチュード(Mt)は8.5程度だが、地震のメカニズムが不明で、海底地すべりなどが起こったとの見方もあることから、第1版に引き続き、発生確率の評価を見送っている。

地震本部:日向灘及び南西諸島海溝周辺の地震活動の長期評価(第2版)

②日本海南西部の海域活断層の長期評価(第1版)―九州地域・中国地域北方沖―
 活断層は海域にも存在しており、これらが活動した場合も地震動や津波により被害を及ぼす可能性がある。そのため、地震本部では、主要活断層帯及び沿岸海域の主要活断層帯の選定基準や陸域への地震・津波被害を踏まえ、M7.0以上の地震を引き起こす可能性のある断層長さ20km程度以上の海域活断層を主な評価対象として、対象とする海域ごとに「海域活断層の長期評価」を実施している。

P2 4 日本海南西部(評価対象海域)における評価対象の海域活断層と主な被害地震の震央(地震本部資料より) - 揺れる日本地殻変動帯列島
日本海南西部(評価対象海域)における評価対象の海域活断層と主な被害地震の震央(地震本部資料より)

 鳥取県〜長崎県沖の日本海南西部の海底活断層の長期評価は今回が初めて。このエリアの海底活断層については3つの領域に分け、30年以内のM7以上の地震の発生確率は、東部3~7%、中部3~6%、西部1~3%。全体は8~13%とした。
 東部にある全長94km程度の領域最大の活断層である伯耆(ほうき)沖断層帯ではM7.7~8.1程度が起こり得ると評価した。「活動間隔が数千年以上となる活断層の地震としては、いずれも高い発生確率と受け止めてほしい」としている。

 地震本部では、海域が震源の大地震では津波を伴うことが多いことから、長期評価で想定された地震規模などに基づき、津波の高さなどについても予測していくという。

地震本部:日本海南西部の海域活断層の長期評価(第1版)―九州地域・中国地域北方沖―
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石川県能登地方(珠洲市付近)での頻発地震
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 2007年能登半島地震から3月25日で15年となった。能登半島地震では、石川県輪島市などで最大震度6強を観測し1人が死亡、338人が重軽傷を負った。その能登半島で、珠洲(すず)市周辺では、2018年ごろから地震の回数が増加し、活発な地震活動が続いており、2021年9月には最大震度5弱の地震が、去る3月23日には最大震度4の地震が発生した。住民に不安が広がっているが、原因は特定されていない。要注意だ。

P3 1 能登半島周辺(Googleマップより) - 揺れる日本地殻変動帯列島
能登半島周辺と珠洲市(Googleマップより)

気象庁:石川県能登地方(珠洲市付近)の地震(震度1以上)の一覧表
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日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震モデル検討会 最終報告
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 報告書は、北海道から岩手県にかけての太平洋沖で、M7クラス以上の地震が発生した場合に、雪や寒さを考慮した避難路や避難施設を整備して、避難にかかる時間や距離を短くするなどの対策を進めるほか、政府が新たにM9クラスの超巨大地震(津波想定最大・岩手県で30m、最悪人的被害想定19万9千人)への注意を促す情報を出すことなどを盛り込んでいる。
 注意情報は、南海トラフ巨大地震の「臨時情報」に似ているが、事前の避難の呼びかけなどは行わないとしている。

内閣府(防災担当):日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震モデル検討会 最終報告

〈2022. 04. 03. by Bosai Plus

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