●「なぜそこに山が?」、「なぜ新宿に超高層ビルが?」
 ――水野一晴・著『世界と日本の地理の謎を解く』

P6 1 水野一晴著『世界と日本の地理の謎を解く』(PHP新書) - 「地理」と「雨」<br>夏休み(巣ごもり?)<br>読書2題
水野一晴・著『世界と日本の地理の謎を解く』

 なぜ山に登るか――そこに山があるから。ではなぜそこに山があるのか?
 京都大学大学院文学研究科教授で元人気予備校講師だったという著者・水野一晴さんは、調査・研究で、南アルプス、桜島、スイスの氷河、キリマンジャロ、さらにはイースター島やマダガスカルなどなど、日本全国津々浦々と海外50カ国以上を訪れた経験を持つという。本書は著者が現地で出くわした“地理の不思議”を、現地調査や文献調査によって謎解きをし、記述した名講義だ。

 “地理の不思議”は例えば、本項冒頭の“謎”のほか、ナミビアに広がるナミブ砂漠は世界一美しい砂漠として知られるが、海岸付近の砂は白いが内陸部になると赤味を帯びる。なぜ砂が赤くなるのか。また、この砂漠はいかにしてできたのか。鳥取砂丘との共通点は……? さらに、フィヨルドはどのようにしてできたのか? 温暖化は、高山の氷河や生態系、住民生活にどのように影響を及ぼすのか? 江戸城、名古屋城、大阪城、ドイツ・レーゲンスブルク近郊の古城の地形の共通点とは? なぜ、イースター島、ハワイ、マダガスカルは1万kmも離れているのに言葉が似ているのか? 新宿に超高層ビルが建ち並ぶのはなぜか、逆に渋谷、品川、上野に超高層ビルが少ないのはなぜか……

 子どもが“なぜ?”を連発するように、大人の(そして著者の)“なぜ”にわかりやすく答える本書は、「なるほど!」のスッキリ感が味わえる知的興奮の一冊。願わくば、地形と災害リスク・防災の視点も付加されていれば、「ブラタモリ」グローバル版にもなるかも。

・著者:水野一晴(京都大学大学院文学研究科教授)
・発行:PHP新書(発売日:2021年05月13日) ・価格:1045円(税共)

PHP新書:水野一晴著『世界と日本の地理の謎を解く』

●「洗車雨(せんしゃう)」? (洗車関係なし!)
 ――倉嶋厚・原田稔・編著『雨のことば辞典』

P6 2 『雨のことば辞典』 - 「地理」と「雨」<br>夏休み(巣ごもり?)<br>読書2題
倉嶋厚・原田稔・編著『雨のことば辞典』

 NHK朝ドラ「おかえりモネ」で気象予報士をめざすヒロインが描かれ、防災も深くからむことから展開が気になるところだ。国家資格の気象予報士制度は1964年に導入され、2021年7月1日現在、1万979名が気象予報士として登録。気象予報士は近年では人気が高い資格だが、試験合格率は4〜5%台と難関。そのうちテレビお天気キャスターとなる人はまさにタレント並みの確率となる。ちなみに、気象情報は防災情報でもあることから、気象予報士の防災士資格取得者も増えている。

 お天気の話題にはだれしも関心があるので、気象予報士による著作物も少なくない。エッセイ風から学術的な文献まで、テーマも気象全般から「空」「雲」などテーマを絞ったものまで、多彩だ。ここで紹介するのはそのうち、倉嶋厚・原田稔編著による『雨のことば辞典』(講談社学術文庫シリーズ/定価:税共 1034円)。

 倉嶋さんは気象庁予報官を経たプロパーで、NHKテレビの気象キャスターでの解説・人柄が広く親しまれ、またエッセイストとしても知られた人。また原田さんは郷土史研究をベースに、独自に「雨の文化史」を追究した研究者だ。

 『雨のことば辞典』では、季語から気象用語、各地の方言まで、雨にまつわる言葉だけを約1200語集めている。たとえば「洗車雨(せんしゃう)」とは(ガソリンスタンドでの洗車とは関係がなく)「陰暦七月六日に降る雨で七夕の前日、牽牛が年に一度の逢瀬に使う牛車を洗う水が、雨となって降る」など。また、「虹の小便」は、お天気雨とも。

講談社学術文庫:倉嶋厚・原田稔・編著『雨のことば辞典』

〈2021. 08. 08. by Bosai Plus

コメントを残す