ゾーニング評価の手法例(WWF資料より)

「ネガティブゾーニング」とはなに?
熱海土石流の影響も後押し WWFの「地域協同でのゾーニングのすすめ」

●環境省「促進区域」から災害危険性が高いエリアを除外する基準策定へ

 脱炭素社会実現に向けた政府のエネルギー基本計画改定案が先ごろ示された。再生可能エネルギー(以下「再エネ」)を主力電源と位置づけて最優先・最大限の導入を掲げ、原発とあわせて脱炭素電源を6割まで高める目標だ。本年5月に成立した改正地球温暖化対策推進法は、条文に新たに基本理念を設けて「2050年までの脱炭素社会の実現」の方針を明記した。将来にわたる政策の継続性を国内外に約束するもので、政府は4月に発表した温暖化ガス排出の新たな削減目標(30年度までに13年度比で46%削減)達成の切り札と位置づける。

P3 1 WWFパンフレットより - 再生可能エネルギー普及と<br>ネガティブゾーニング
WWFパンフレット「自治体で進める地域協同でのゾーニングのすすめ」より

 改正法は、市町村が再エネ発電所を積極的に誘致するため、促進区域の設定に努めると規定。経済性や地形、地域住民の了解などの条件を満たしたエリアを「促進区域」とし、太陽光発電所や風力発電所などの再エネ事業を誘導する。政府は太陽光に期待しており、住民や事業者でつくる協議会で合意した事業計画を自治体が認定し、許認可の手続きのワンストップ化や環境影響評価(環境アセスメント)の簡略化などで優遇する。

 しかし、再エネ事業をめぐっては騒音や景観悪化などで地域トラブルが相次いでおり、規制条例をつくる自治体が増えている。さらに、静岡県熱海市で発生した大規模土石流被害の影響もあり、災害リスクが高い場所での再エネ事業整備に対する懸念も強まってきた。
 そこで環境省は、太陽光や風力といった再エネ発電所を積極的に整備するため、市町村が設定する「促進区域」から、土砂崩れなど災害の危険性が高いエリアを除外する「ネガティブゾーニング」の基準を設定する方針を固め、山の斜面など危険な場所に設置する発電設備への住民の懸念に対応することとしている。

環境省:小泉大臣記者会見録(2021年7月6日/「ネガティブゾーニング」に言及)

●持続可能な開発に向けて、WWF「ゾーニング」手引が参考に

 「持続可能な開発」というキーワードを旗印に、太陽光や風力に代表される再エネへの期待が高まる。この再エネ事業を推進する「ゾーニング」について、国際的な環境保全団体であるWWF(World Wide Fund for Nature(世界自然保護基金)」)が「地域が納得できる再エネの立地場所を明確にする取組み」と定義づけて、自治体、市民団体などの地域関係者がゾーニングへの認識を深め、健全で持続可能な自然エネルギーの普及が実現できるよう検討を進めるための“手引”を作成している。参考に供したい。

P3 2 自然エネルギーの累積設備容量(WWF資料より) - 再生可能エネルギー普及と<br>ネガティブゾーニング
自然エネルギーの累積設備容量(WWF資料より)
P3 3 ゾーニング評価の手法例(WWF資料より) - 再生可能エネルギー普及と<br>ネガティブゾーニング
ゾーニング評価の手法例(WWF資料より)

WWF:自治体で進める地域協同でのゾーニングのすすめ

〈2021. 08. 01. by Bosai Plus

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