防災用語のおさらい+とるべき行動+伝え方
=防災力向上
発信者(国、自治体)と伝え手(報道機関など)の間での共通認識を促す
――防災士も身に付けたい!
●「線状降水帯」など 防災用語のおさらいを
今年も7月に入って静岡県熱海市などで大きな水害・土砂災害が起こった。大雨特別警報級の豪雨がここ数年、7月上旬に連続して起きている。なぜ7月に豪雨災害が起こるかについて、近年の災害例では、積乱雲が次々とできて帯状に連なって大雨をもたらす「線状降水帯」が発生したことが要因として指摘されている。
局地的な集中豪雨をもたらす「線状降水帯」については1990年代から専門家によって観測・確認されていたが、近年、これが頻繁に発生して大きな災害を引き起こしたことから報道メディアも注目するようになり、その結果、一般にも気象用語として浸透してきた。そこで気象庁は本年6月17日から、その発生を伝える情報の発表を始めている。
「線状降水帯」情報は予報ではなくて発生情報なので、発表時には土砂災害や河川氾濫などの危険が迫っている可能性が高い。この「線状降水帯」発生情報は「顕著な大雨に関する情報」として、雨量や雨域が発表基準を満たすと、警報・注意報と同じく各都道府県を「南部」「北部」など複数の地方に分けた単位で発表される。
●地域防災の各主体が防災情報の理解・認識を共有
「線状降水帯」のような比較的新しい防災用語はもちろん、これまでなんとなく理解していると思っている防災用語について、その意味を正しく理解しておくこと、そしてさらにはその伝え方なども身に付けておくことは、地域防災にかかわる私たちには重要だ。
そこで国土交通省、気象庁は『防災用語ウェブサイト(水害・土砂災害)』を去る6月30日に公開した(掲載用語数:全79 *2021年6月29日時点)。このサイトは、防災情報の発信者(国、自治体)と伝え手(報道機関など)の間での共通認識を促そうという趣旨で、防災情報が住民の適切な避難行動につながるよう「防災情報が発表されたときにとるべき行動」、「情報を報道、伝達する際の留意点」を中心に、報道・伝達にそのまま使える簡潔でわかりやすい言葉で説明。また、用語の概要が直感的にわかりやすい図、写真、動画、地図などを掲載。パソコンやスマートフォンなどで、すぐに防災情報に用いられる防災用語の意味や伝え方などを検索できる。
![自主防災、防災士も<br>「防災用語ウェブサイト」の活用を P4 1 『防災用語ウェブサイト』活用のイメージ - 自主防災、防災士も<br>「防災用語ウェブサイト」の活用を](https://www.bosaijoho.net/wp/wp-content/uploads/2021/07/P4-1_%E3%80%8E%E9%98%B2%E7%81%BD%E7%94%A8%E8%AA%9E%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%96%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%88%E3%80%8F%E6%B4%BB%E7%94%A8%E3%81%AE%E3%82%A4%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%B8.jpg)
![自主防災、防災士も<br>「防災用語ウェブサイト」の活用を P4 2 『防災用語ウェブサイト』より「線状降水帯」の説明 - 自主防災、防災士も<br>「防災用語ウェブサイト」の活用を](https://www.bosaijoho.net/wp/wp-content/uploads/2021/07/P4-2_%E3%80%8E%E9%98%B2%E7%81%BD%E7%94%A8%E8%AA%9E%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%96%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%88%E3%80%8F%E3%82%88%E3%82%8A%E3%80%8C%E7%B7%9A%E7%8A%B6%E9%99%8D%E6%B0%B4%E5%B8%AF%E3%80%8D%E3%81%AE%E8%AA%AC%E6%98%8E.jpg)
![自主防災、防災士も<br>「防災用語ウェブサイト」の活用を P4 3 「線状降水帯の発生メカニズムの模式図」 - 自主防災、防災士も<br>「防災用語ウェブサイト」の活用を](https://www.bosaijoho.net/wp/wp-content/uploads/2021/07/P4-3_%E3%80%8C%E7%B7%9A%E7%8A%B6%E9%99%8D%E6%B0%B4%E5%B8%AF%E3%81%AE%E7%99%BA%E7%94%9F%E3%83%A1%E3%82%AB%E3%83%8B%E3%82%BA%E3%83%A0%E3%81%AE%E6%A8%A1%E5%BC%8F%E5%9B%B3%E3%80%8D.jpg)
防災士など地域防災の実践者にとっても、防災情報を住民などの受け手にわかりやすく伝え、適切な防災行動を促すための重要なツールになると期待される。
●クローズアップされた防災用語―「土石流危険渓流」
土砂災害危険箇所の3要素のひとつ
土石流、地すべり、がけ崩れの3つについて、被害が発生するおそれのある箇所はそれぞれ「土石流危険渓流」、「地すべり危険箇所」、「急傾斜地崩壊危険箇所」と呼ばれ、これら3つを総称して「土砂災害危険箇所」となる。土砂災害危険箇所は都道府県が指定するが(「雪崩危険箇所」も含まれる)、現在は「土砂災害危険箇所」に代わり、「土砂災害防止法」に基づき「土砂災害警戒区域・土砂災害特別警戒区域」の指定が進められている。
去る7月3日に発生した熱海市土砂災害は、まさにその土砂災害危険箇所のうち、「土石流危険渓流」に沿って発生した。
静岡県のハザードマップによると、土石流が確認された伊豆山(いずさん)地区は「土石流危険渓流」に囲まれ、急傾斜地崩壊危険箇所や地すべり危険箇所なども点在し、県は土砂災害警戒区域に指定していた。
![自主防災、防災士も<br>「防災用語ウェブサイト」の活用を P4 4 土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン) - 自主防災、防災士も<br>「防災用語ウェブサイト」の活用を](https://www.bosaijoho.net/wp/wp-content/uploads/2021/07/P4-4_%E5%9C%9F%E7%A0%82%E7%81%BD%E5%AE%B3%E7%89%B9%E5%88%A5%E8%AD%A6%E6%88%92%E5%8C%BA%E5%9F%9F%EF%BC%88%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%89%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%83%B3%EF%BC%89.jpg)
土砂災害危険箇所の調査は、1966年からおおむね5年ごとに実施し、2003年現在で、日本国内18万3863の渓流が土石流危険渓流に指定され、砂防ダムなどの防災施設の建設が進められている。
〈2021. 07. 16. by Bosai Plus〉