防災・減災、国土強靭化-新時代

1WG+4チームの危機感 巨大災害対応は“極限状況”

経済財政運営の指針となる「骨太方針」へ反映させ、今後5~10年での実現をめざす……

【 直接死も関連死もなくしたい。この思いで提言する… 】

●新“国土強靭化”に向けて 5つの有識者会議(1WG+4チーム)を設置

 国は2014年6月、「国土強靱化基本計画」を閣議決定し、国家のリスクマネジメントとしての“強くてしなやかな国”づくりに乗り出した。国土強靭化という日本語には、ハード面の印象が強いが、英語の「ナショナル・レジリエンス(回復力)」も併記し、さらに副題として「強くしなやか」を書き込んで、防災・減災のソフト面も補充した。そして、国民の安全・安心な生活、それを実現する人の力を創り、国民の命と財産を守るとした。
 いっぽう、この国策を通じてわが国のインフラ基盤強化と産業競争力の強化を図るとも明記し、2018年12月の「防災・減災、国土強靱化のための3カ年緊急対策」に約7兆円の予算を投じ、さらに2020年12月の同「加速化5カ年対策(2021~25年)」では、今後5年間に約15兆円の予算を投じて「激甚化する風水害や切迫する大規模地震等への対策」、「インフラ老朽化対策の加速」、「デジタル化等の推進」の各分野で対策事業が重点的・集中的に進められることになった。

 こうした流れのなかで国は2020年年末、5つの有識者会議(以下、「WG=ワーキンググループ」)――「デジタル・防災技術WG(未来構想チーム)」、「デジタル・防災技術WG(社会実装チーム)」、「事前防災・複合災害WG」、「防災教育・周知啓発WG(防災教育チーム)」、「防災教育・周知啓発WG(災害ボランティアチーム)」を立ち上げた。コロナ禍のさなか、この「1WG+4チーム」は報告書とりまとめに向けて精力的に検討を進め(本紙、途中経過を既報)、去る5月25日、それぞれの報告書を同時公表した。

>>内閣府:防災・減災、国土強靱化新時代の実現のための提言(2021年5月25日)

P2 1 防災・減災、国土強靱化新時代の実現のための提言 - 「防災強靭化 新時代」への提言公表
防災・減災、国土強靱化WG・チームによる「防災・減災、国土強靱化新時代の実現のための提言」概要より
P2 2 各WGの「具体的な取組み」より - 「防災強靭化 新時代」への提言公表
各WGの「具体的な取組み」より
P2 3 「事前防災・複合災害WG 提言」より - 「防災強靭化 新時代」への提言公表
「事前防災・複合災害WG 提言」より
P2 4 「避難生活支援・防災人材育成エコシステム - 「防災強靭化 新時代」への提言公表
「避難生活支援・防災人材育成エコシステム」より

 これを国は、『防災・減災、国土強靱化新時代の実現のための提言』と銘打つとともに、この提言を6月にまとめる「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」や「成長戦略実行計画」、「国土強靱化年次計画(2021年度)」に反映するとしている。

●防災・減災、国土強靭化の取り組み 飛躍的加速を

 「防災・減災、国土強靱化WG・チーム」は各検討会座長(安宅和人、喜連川優、藤井聡、片田敏孝、栗田暢之 *敬称略/一部兼任あり)連名で、次のような書き出しの「提言前書き」を公表している――

 「直接死も関連死もなくしたい。この思いで提言する。本当につらいことは津波のように一瞬で我々を飲み込みほとんど何もさせてくれない。言うまでもなく巨大自然災害への対応は人間にとって極限状況になる。だからこそ国民の総力を挙げて立ち向かいたいと思う。
 19世紀末と21世紀初めに巨大な2つの三陸沖地震・津波があった(注:1896明治三陸地震津波、2011東日本大震災)。技術革新の20世紀の100年を挟んだ2つの地震、マグニチュードも違うし、被災地域の居住人口も違うが、いずれの地震でも約2万人の尊い同胞の生命が失われたことは変わらない。防災・減災、国土強靭化関係者としては巨大な無力感を禁じ得ない。
 100年以上の時を経て我々は一体何をしてきたのだろう? いまだに自然災害、特に巨大自然災害で奪われる国民の生命が多過ぎる。少子高齢化、人口急減少、感染症の脅威を思う時、次の巨大三陸沖地震・津波でむしろ約2万人を大幅に上回る犠牲者を出す恐れすらないか。防災・減災、国土強靭化の取り組みを飛躍的に加速しなければならない――(以下省略)」

 危機感とともに書き出された前書きに、WG・チームの焦燥感もにじみ出る。この前書きは、防災にかかわる各主体が共有すべき視点と思われるので、一読願いたい。

>>内閣府(防災担当):防災・減災、国土強靱化 WG・チーム提言前書き

 本号では、紙面の都合で各報告書の詳細に触れられないが、号を改めて、シリーズで各報告を取り上げていく予定である。
 なお、「防災教育・周知啓発WG(災害ボランティアチーム)」では、まとめとして「地域の災害ボランティア人材の発掘とスキルアップ支援」、「データベース登録災害専門ボランティアと市町村・地域のマッチング」、「避難生活支援における災害専門ボランティアと市町村・地域の連携・協働促進」などをあげていて、とくに「防災士」の役割にも大きな期待が寄せられていることに触れておく。

〈2021. 06. 15. by Bosai Plus

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