主な防災見本市ロゴなど

“不要不急”とは対極の臨場感
――新様式に挑むリアル防災見本市

【 コロナ禍で”新しい見本市様式” ”見本”市の価値を再発見 】

●この10月・11月開催の大型防災見本市 新型コロナ対策は?

 「危機管理産業展 (RISCON TOKYO) 2020」(主催:東京ビッグサイト、特別協力:東京都)が来たる10月21日~23日の3日間、東京ビッグサイト・青海展示棟で開催される(併催:「テロ対策特殊装備展(SEECAT)’20」。 
 同展は、「防災・減災」、「セキュリティ」、「事業リスク対策」の3分野を柱に、危機管理分野を横断的に網羅した国内唯一・最大級の「危機管理総合トレードショー」として2005年から毎年開催、今回が16回目となり、この分野では抜群の知名度を誇る。国・地方自治体関係者をはじめ、重要インフラや商業施設、学校・病院、製造業など、多様な業界・業態の垣根を超えて、質の高い危機管理情報の交流・交換・商談の場となっている。

 本年、同展は、新型コロナ感染拡大防止に向けた対応指針を公表しており、特別テーマとして「感染症対策」、「避難所運営・資機材」を設定して展示とセミナー連動で最新情報を発信する。なかでも、さまざまな間仕切りのデモが見られる「避難所感染症対策エリア」が注目されている。

>>危機管理産業展:安全・安心な展示会開催に向けた新型コロナウイルス感染拡大防止のための対応指針

P1 主な防災見本市ロゴなど - コロナ禍の「防災見本市」<br>開催ノウハウ
上画像は、わが国の主な防災見本市のロゴ( 順不同、編集部が任意に選択)と、世界最大級の防災見本市「INTERSCHUTZ」のロゴ(右下)。左下は、「オフィス防災EXPO」を含む大型見本市でのセミナー風景(同広報資料より転載)。本年3月以降、新型コロナ感染症拡大防止対策として、大型見本市が軒並み中止・延期を迫られた。防災分野の見本市もその例に漏れない。今後、コロナ禍のもとで見本市はどうあるべきかを探ってみた
P2 1 危機管理産業展が採用する「オンラインマッチング登録」システム(危機管理産業展HPより) 1 - コロナ禍の「防災見本市」<br>開催ノウハウ
「危機管理産業展」事務局が感染防止対策として提案する商談に向けた「オンラインマッチング登録」のイメージ図(同展HPより)

 ひるがえってこの10月14日~15日には、大阪市で「震災対策技術展・大阪」(主催:エグジビションテクノロジーズ、会場:コングレコンベンションセンター)が開催されている。同展は阪神・淡路大震災を機に世界初の震災対策技術展として1997年から開催、現在は横浜市と関西(大阪市)・東北(仙台市)で毎年開催されている。
 そして今月(10月)末の10月29日~30日には、大阪市で「防犯・防災総合展 2020」(*延期後の新会期)が、主催・テレビ大阪エクスプロ、会場・インテックス大阪で開催される。さらに11月は、「関西 オフィス防災EXPO」が11月11日~13日に、主催・リード エグジビション ジャパン、会場・インテックス大阪で行われる。

 新型コロナウイルス感染症がいまだ収束への道筋が見えないなか、”不要不急”の対極にある防災・危機管理対策まで滞ってはいられないということではある。新型コロナウイルス感染防止対策そのものも同時に、防災・危機管理の大きな課題であるとともに、展示会場を訪れる際の注目点ともなっている。

●感染拡大予防への“新しい様式”での見本市、関西から始まる

 わが国のコロナ禍での緊急事態措置により、3月以降、不特定多数の人が集まる物理的リアル会場における見本市・展示会などは、全国的に大半が中止されてきた。しかし、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会が8月21日、7月以降の新型コロナ感染拡大について「全国的に見れば、ピークに達したものと考えられる」との見解を示したことを契機に、行政は段階的な休業要請の緩和を発表し、見本市などの大型イベントの再開も現実的・具体的になっていく。
 もちろんこの間、延期・中止するものは多く、あるいはオンライン開催といった”新しい様式”での開催を模索するケースもあり、中止による会場料金、出展申込み者への展示料金返金などの事務処理の課題も発生した。ちなみに本年、中止または延期など変更が決定された主な防災見本市には次のようなものがある――

 「自治体総合フェア2020」(主催:日本経営協会)は2020年5月20日~22日の開催を中止し、2021年5月12日〜14日開催に変更、「中部ライフガードTEC 2020」(主催:名古屋国際見本市委員会)は2020年5月14日~15日の開催を中止、「震災対策技術展 in 仙台」(主催:同実行委員会)は2020年9月14日~18日開催の延期決定(開催日未定)。「先進建設・防災・減災技術フェア in 熊本 2020」(主催:同開催委員会)は2020年11月19日~20日の開催予定を2021年11月開催予定に変更、「気候変動・災害対策Biz 2020」(主催:日本経済新聞社)は2020年11月25日~28日に会場開催を変更してオンライン開催。
 海外では、これまで5年ごとの6月に開催されてきた世界最大規模の防災・消防展示会「INTERSCHUTZ」が本年開催を延期とし、来年2021年6月に開催される(会場:ドイツ・ハノーバー)。

P2 2a 「オフィス防災EXPO 幕張」でのリアル会場入口の様子(同HPより) - コロナ禍の「防災見本市」<br>開催ノウハウ
P2 2b 「オフィス防災EXPO 幕張」でのリアル会場受付の様子(同HPより) - コロナ禍の「防災見本市」<br>開催ノウハウ
「オフィス防災EXPO」(「総務・人事・会計Week」内併設イベント)の感染防止対策を施した入口・受付付近の様子(同展HPより)
P2 3  オフィス防災EXPO(幕張メッセ)でのセミナー開催の様子 コピー - コロナ禍の「防災見本市」<br>開催ノウハウ
「オフィス防災EXPO」(「総務・人事・会計Week」内併設イベント)でのセミナーの様子。感染防止対策で、聴講者は席を空けて着席

 それでも、見本市を主催する各社は満を持して見本市・展示会再開への模索を続けてきた。その先陣を切るかたちで日本能率協会が、7月29日~31日、大阪市(インテックス大阪)で「メンテナンス・レジリエンスOSAKA」(同時開催:関西ホテル・レストラン・ショー)を開催、日本の展示会が4カ月ぶりに関西から本格的に再開することとなった。
 この開催にあたって日本能率協会は、「日本展示会協会『展示会業界におけるCOVID-19感染拡大予防ガイドライン』および国際見本市連盟(UFI)『国際見本市連盟の指針』、および展示会場が定める『展示会における新型コロナウイルス感染防止のための対応指針』に基づき、参加される皆様の安全を確保するため、感染対策に関する取組みを定め、運用する」として、次のような取組みを示している。

P3 1 会場・セミナーレイアウト例(日本能率協会HPより) - コロナ禍の「防災見本市」<br>開催ノウハウ
日本能率協会が公表した感染防止に向けた見本市会場(上図)とセミナー会場(下)のレイアウトイメージ例(日本能率協会HPより)

▼症状に該当する人の来場管理:発熱、咳、喉の痛み、倦怠感、息苦しさ、味覚・嗅覚異常などの自覚症状のある人、政府が指定する期間に海外渡航歴がある人 等
▼入場は事前登録制とし、入場手続き時の混雑を回避
▼出展者、来場者、主催者、協力会社のマスク着用の徹底、非着用者への着用依頼
▼サーモグラフィまたは非接触体温計等による体温測定
▼会場入口への消毒液の設置ならびに共用部の巡回清掃・消毒
▼試食担当者はマスクと手袋の着用。使い捨て容器の使用、ゴミ袋の密閉廃棄(フェイスシールドの着用を推奨)
▼会場内の十分な換気
▼体調不良者への対応管理(隔離された救護室の設置)
▼会場レイアウト(通路幅等の確保)、列に並ぶ際の間隔の確保
▼セミナー会場等 間隔の確保

>>日本能率協会:展示会の新型コロナウイルス感染防止への対応について
>>日本展示会協会:「展示会業界におけるCOVID-19感染拡大予防ガイドライン」
>>国際見本市連盟(UFI):「新型コロナウイルス感染症」収束後の展示会および B-to-B商談イベント再開のための世界的な枠組み(日本語版)
>>東京ビッグサイト:展示会等における新型コロナウイルス感染防止のための対応指針

●リード が「リアル開催」詳細リポート “見本”市のメリットを再確認

 リード エグジビション ジャパン(以下、「リード」)主催の「オフィス防災EXPO」(9つの専門展で構成される第15回「総務・人事・経理 Week」の1つ)が9月16日~18日の3日間、千葉市・幕張メッセで開催された。リードは9月に入って東京・大阪・愛知と3大都市で展示会を再開しており、幕張メッセでは「教育総合展」も同時開催、同社ニュースリリースによれば、「この2つの展示会に訪れた来場者は3日間合計で約3万人、会期中の商談額は174億円、幕張メッセ近郊を中心に千葉市への経済効果は27億円(商談額と経済効果は推定金額)」としている。

 ここで、新型コロナ禍におけるリアルの見本市の会場開催とオンライン開催のメリット・デメリットを比較して確認してみよう。まず、オンラインでは、感染リスクがないことはもとより、参加者側は時間や場所(移動、移動コストなど)の制約がなくイベントに参加できる。主催者側のメリットは、事前登録制とすることで、属性や来場目的などの来場者情報を確実に取得でき、アクセス・再生回数や再生率、平均視聴時間などの詳細なデータも取得できて、マーケティングやセールスプロモーションの効率化および確度アップにつなげられる。しかし、出展企業の知名度が低い場合、自社サイトへのアクセス数はあまり期待できないことから中小企業の出展数が少なくなる可能性がある。
 いっぽう、リアル会場開催では、会場に設営されるブースの規模には大小があるものの、横並びで、来場者の目や耳に触れる機会は同等。しかも、来場者への声かけなどで自社製品を直接説明でき、来場者も製品を目の当たりにし、手にとることで、製品の量感・質感、さらには臨場感を味わうことができ、まさに“見本”市のメリットを享受できる。
 新型コロナ禍で、社会のあり様に新しい様式が求められるなか、新型コロナとの共生を図る大型見本市の運営手法に、オンラインも含めた新たな可能性が広まっている。

P3 2 「オフィス防災EXPO」で会場内の様子(Photos by Y - コロナ禍の「防災見本市」<br>開催ノウハウ
「オフィス防災EXPO 幕張」での会場風景(写真撮影:本紙特約リポーター:関町佳寛)

●コロナ禍を貫くインフラとしての「防災」
 “新しい様式”の防災見本市に期待

 このほか、各地の自治体、防災センター(行政の関係部署・消防署などが設置する防災啓発・学習施設)をはじめ公益機関、NPO、民間の各種主体による防災イベントに併せた特設防災展示会や、防災セミナーに関連づけた同会場での防災啓発展示や防災用品の展示も多く開催されている。
 阪神・淡路大震災を端緒に、そして東日本大震災を経た近年の常態化した大規模災害を背景に、危機管理産業展をはじめとする防災、危機管理の見本市・展示会が数多く企画・開催され、「防災の日常化、主流化」が定着しつつある。これまで防災とは直接関係しなかった業界・業態――福祉・医療分野はもとより、環境、情報通信、建設、食品ほかギフト分野においても、防災製品の展示コーナーを設置するなど、各種見本市・展示会で防災・危機管理の市場・経済規模が急拡大している。これはわが国の産業構造において、防災・危機管理産業が広範に、実質的な存在感を示し始めた証左でもある。

>>JETRO:これから開催される見本市・展示会情報(日本)

 なお、防災見本市や展示会の開催情報は本紙特設コーナーである「防災イベント 2カ月カレンダー」でも確認できる。
>>《Bosai Plus》:「防災イベント 2カ月カレンダー」(現在10月・11月開催分を掲載)

〈2020. 10. 15. by Bosai Plus

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