気象庁HP広告、続報
 “コーヒー予算”と国民の安全確保

国民のいのちを守る防災情報HPに広告?
 その是非の論議は防災省創設構想に通じる?…

 本紙は去る8月16日付けで、「気象庁HPにウェブ広告掲載へ」と題して、「国民の安全・安心を支える気象庁HP 広告掲載は是か非か」とリポートした。そのなかで、気象庁ホームページ(以下、「HP」)での広告掲載の背景を、「大規模災害が相次ぎ、観測強化や情報発信などの費用がふくらむなかで、予算が増えないという厳しい財政状況があるようだ」とした。そして、本紙の見解として、「デジタル化、IoTが進展するなかで官民連携は時代の趨勢であるが、危機管理・防災という国民のいのちにかかわる行政機関であれば、その中核的事業の財政基盤は国がしっかり担保したうえで、関連リソースを活用した財源発掘を”適材適所”で行ってほしいところだ」とした。

 ところが去る9月15日午後に掲載が始まった気象庁HPのウェブ広告だったが、開始からわずか20時間後、気象庁はHPに「広告掲載停止について」のお知らせをアップした。気象庁が策定した掲載基準で不適切にあたる広告(誇大広告などいわゆるジャンク広告)が多数表示されたためだ。
 これら広告は、閲覧者の検索履歴と連動する「Google Adsenseを使用した運用型広告」だったため、どのような広告が掲出されるかはユーザーがアクセスした(気象庁HPを開いた)タイミングで決定されていた。したがって気象庁側で広告基準を定めていても、それにそぐわない広告が自動的に表示される例は避けられなかったのだという。その背景を、広告ブロックアプリの開発者が解説・公開しているので参考に供したい。

>>280blocker:気象庁HPの不適切な広告について

P5 1 気象庁HP広告の不適切広告 - 気象庁HPに広告掲載、<br>“即停止” なぜ?
「280blocker.net」が記録保存し公表した気象庁HP広告の不適切広告

 気象庁は詳しい原因を調べ、再発防止策をとったうえで再開する方針だという。
 気象解説者として各種メディアで活躍する片平 敦氏(気象予報士、防災士、ウェザーマップ所属)は、気象庁がHPに広告を掲載すると発表(7月6日付け)ことを受けて、8月27日付けで次のような見解を著している(今回の不適切広告掲出トラブル発生以前の見解であることに留意)。同見解に本紙は共感するところだが、長文なので、ここではその見解の“さわり”部分にとどめるので、詳細は下記リンクを参照していただきたい。

>>片平敦:気象庁HP「ウェブ広告掲載」の議論から国の防災対策・体制のあり方を考える

 片平氏は、広告掲載の背景に「“コーヒー予算”と呼ばれる気象庁の予算不足がある」ことを指摘、「気象庁の年間予算はこの20年ほど、大きく増加してはいない。気象庁の令和2年度(2020年度)の年間予算額は約594.9億円。ものの試しにザッと計算してみると……594.9億円÷1億2千万人=495.75円。国民一人当たりの年間負担額は500円弱、つまり、概ねコーヒー1杯分」とする。

>>気象庁:気象庁予算概要〜令和2年度気象庁関係予算決定概要

 さらに、国民がいのちにかかわる防災情報の取得において、気象庁HPへの依存度が非常に高いとしたうえで、「気象庁以外にも、国には防災を担当する機関がある。実は、そういった省庁も防災情報の一般向けサイトを運営している。内閣府の『防災情報システム』、国土交通省の『川の防災情報』・『防災情報提供センター』、環境省の『熱中症予防情報サイト』など……」。こうした自然災害関連の予報・観測情報の管理・発表を一元化することはできないのだろうか、と。

 そして、「私は、災害が頻発する今こそ、国の防災体制・組織を抜本的に再整備すべきではないかと感じている。国の防災担当の部局を統合・再編した『防災省』の新設が一案である。現状で各省庁に予算・人員が分散する状況を打破し、統一的・総合的な防災施策の立案、予測技術の開発、情報の提供を実施するために、国務大臣を長とする防災省を設立する、という構想に一考の価値はないだろうか」と。

P5 2 気象庁「局地的な豪雨に対応した大雨特別警報の改善」 - 気象庁HPに広告掲載、<br>“即停止” なぜ?
気象庁「局地的な豪雨に対応した大雨特別警報の改善」(「気象庁予算概要〜令和2年度気象庁関係予算決定概要」より)

 新政権はいま、縦割り打破、デジタル庁創設などを公約の前面に打ち出しているが、その“志”は各論の縦割りのかけ声に矮小化されては意味がない。これらの改革を通じて、なにを、どこをめざすのか――総論=わが国将来ビジョンの構築に向けた大きな構想が問われていると言えないだろうか。気象庁HP広告に掲出された不適切広告から、「この国のあり方」について、新たな、大きな課題が顕在化したようでもある。

〈2020. 10. 02. by Bosai Plus

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