青森県「災害時における宿泊施設の提供等に関する協定の概要」より(2016年11月17日)

劣悪環境の避難所を多様化で打開できるか
指定避難所の優先順位は後位に?
災害リスクの低い、好環境の避難所を求めて

【 コロナ禍 指定避難所の優先順位は後位に?
 行政指定のホテル避難は要援護者優先 】

 先の台風10号では、気象庁が進路予報段階から特別警報発令の可能性に触れ、最大級の警戒を呼びかけた背景もあり、また新型コロナウイルスへの懸念もあったことから、事前に避難を試みる人のなかには堅牢な建物で浸水のおそれがないホテルなどに分散避難する人が相次いだという。当然、自治体の指定避難所ではないので有料での宿泊となるが、プライバシーが確保され、基本的なホテルサービスが受けられることから、台風避難としてはある意味当然の選択だろう。

 災害発生後にホテルが緊急的な避難所となる例は東日本大震災時もあったが、近年はとくに風水害のように事前に災害リスクがわかる場合、国は「分散避難」を呼びかけるようになった。その避難先の優先順位は、自宅の被災リスクが少ない場合は「在宅避難」、被災リスクがある場合は「親戚宅」や「知人宅」、さらには「遠方」への避難などとなり、「指定避難所」への避難は選択順位としては後位になりつつある。

P2 4 青森県「災害時における宿泊施設の提供等に関する協定の概要」より(2016年11月17日) - 避難所の多様化<br>――ホテル、大学、民間施設…
青森県「災害時における宿泊施設の提供等に関する協定の概要」より(2016年11月17日)

 国は本年4月、新型コロナウイルス対策の一環で災害時の避難所として民間宿泊施設を活用するため、日本ホテル協会と日本旅館協会に受け入れ可能な施設のリストの作成、共有を要請。併せて都道府県などにも宿泊施設の利用へ準備をするよう通知した。また、より多くの避難所を設置することなども自治体に求めている。

 もとより、災害救助法は、都道府県知事に、弾力的運用として民間の旅館、ホテルなどを借り上げ、避難所として活用が可能としている。自治体はこれまでも、災害時応援協定のかたちで、基本的には災害時要援護者向けにこうした民間施設の活用を具体化しているが、このところとくに新型コロナ禍のもとでの避難所として、一般避難者用としても、ホテルや旅館、さらには民間企業施設(研修所、寮などの宿泊施設、福利厚⽣施設、講堂、会議室など)の活用、そしてマンション施設(ロビー、ラウンジ、会議室など共有スペース)などにも注目が集まっている。
 企業にとってその施設の避難者への開放は、BCP(事業継続計画)の一端として組み込むことで、地域社会に向けた貢献姿勢を示すいい機会ともなる。

 このように避難先(所)の多様化は、わが国の避難所のあり方に一石を投じていると言える。というのも、毎年のように大規模災害に見舞われるわが国の避難所にして、「体育館に雑魚寝」で象徴される避難生活環境の劣悪ぶりは、十年一日どころか百年一日変わらず批判の的となってきた。事前避難、事後避難にかかわらずわが国での避難所生活は海外事例と比較され、“人権問題”とまで指弾されそうな状況がある。復興省(庁)創設が実現すれば、避難所運営についても抜本的な対策が講じられるかもしれないが、一朝一夕には実現しそうもない。そうした膠着状態の打開策として、「避難先(所)の多様化」が浮上してきたのかもしれない。

 しかし、災害はどこで起こるかわからないし、山間地、過疎地では避難先になり得る施設も限られる。自治体がホテルを借り上げるにも財政難の課題もある。また、ホテルや旅館の確保に地域によって偏りもあるだろう。今回は、新型コロナ禍でホテル空室率が高いから確保が可能となった側面もあるのだ。

●「大学」も避難所として浮上 熊大学生の緊急対応に高い評価

 2016年熊本地震の発災時、4月14日・16日の2度にわたる大地震を経て、熊本大学黒髪キャンパス(以下、「熊大」)に、不安に駆られた学生や地域住民が続々と集まり、最終的に最大1000名を受け入れる避難所になった。熊大は指定避難所ではなかったが、一般学生たち(防災関係者の助言なしで)が自発的に避難所運営に立ち上がった。学生たちは、大学祭の実行委員会(紫熊祭実行委員会)、体育会、熊大生協組織部、法学部志法会、教育学部障害スポーツ福祉課程、医学部保健学科などのサークルや学部などを単位として指揮系統を組み上げ、情報伝達を行う仕組みを整えたという(本紙トップページ・カット写真、同説明参照)。
 こうした学生らの行動力・即戦力・機動力は避難所の初動期の運営に大きな成果をもたらし、教職員も加わって、さらに実効性を高めた。

P1 P2 1 2016年熊本地震「熊大黒髪避難所運営記録集」(表紙全体より) - 避難所の多様化<br>――ホテル、大学、民間施設…
2016年熊本地震「熊大黒髪避難所運営記録集」(表紙より)

>>平成28年熊本地震 熊大黒髪避難所運営記録集 「416 私たちがやったこと 未来へ伝えたいこと」

 2019年10月の台風19号による水害を受けて日本大学工学部(福島県郡山市田村町徳定)が「キャンパス強靱化プロジェクト」を作成中だ。台風19号では多くの学生も被災した。阿武隈川とその支流の氾濫で過去にも浸水被害を受けていることから、土木技術者を育てる学部として、学生とともに避難行動パターンを分析・検証、最適と思われる行動やキャンパス内に3000人収容の避難所を設置する具体策についての提言もめざす。
 同大学と郡山市は協働によるまちづくりを推進する包括協定を本年2月に結んだ。

>>日大工学部:台風19号に伴う被災現象把握とそのメカニズムに関する特別講義

P2 2 「重ねるハザード」に見る日大工学部の位置 - 避難所の多様化<br>――ホテル、大学、民間施設…
「重ねるハザード」に見る日大工学部の位置

 北九州市立大学地域戦略研究所が、阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震などでの大学における避難所開設等の事例と、大学における避難所運営に関するマニュアル類の整備の事例について調査した結果を公表しているので参考に供したい。

>>北九州市立大学:大規模災害時に大学が市民の避難所等となる際の課題

P2 3 北九市立大学「大規模災害時に大学が市民の避難所等となる際の課題」より - 避難所の多様化<br>――ホテル、大学、民間施設…
北九州市立大学「大規模災害時に大学が市民の避難所等となる際の課題」より

 ほかに、東北福祉大学(仙台市)は、仙台市と災害時に妊産婦らを受け入れる「周産期福祉避難所の運営等に関する協定」を2017年に締結している。なお、同大学は東日本大震災時には避難所として約1200人を受け入れた。また、学生防災士による「Team Bousaisi」が組織され、学内外で防災啓発活動を行っている。

>>東北福祉大学:仙台市と「周産期福祉避難所の運営等に関する協定」を締結

〈2020. 09. 17. by Bosai Plus

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