国民の安全・安心を支える気象庁HP
――広告掲載に賛否
気象庁はこの9月中旬から、同ホームページ(HP)にウェブ広告を掲載する。
7月中にすでにその運用委託業務(広告の募集、掲載、運用管理等)の公募を行っており、ウェブ広告の掲載期間は当面、2021年2月中旬までとしている(2月中旬に気象庁HPのリニューアルを予定)。
省庁HPがウェブ広告を掲載する例は4、5年前に外務省HPにあったというが、現在はそうした例はない。省庁の横並びを”突破”した斬新な官民連携の試みとも言えるが、いっぽう、気象庁HPは、気象、地震・津波、火山、海洋などの防災をはじめとした気象情報・データを掲載し、国民が防災行動をとるうえでの重要な情報源であり、言わば国民の安全・安⼼を支える独立性・専⾨性の高い防災関連行政機関だ。
![気象庁ホームページに<br>ウェブ広告掲載へ P6 1 気象庁HPへのウェブ広告掲載イメージ(気象庁資料より) - 気象庁ホームページに<br>ウェブ広告掲載へ](https://www.bosaijoho.net/wp/wp-content/uploads/2020/08/P6-1_%E6%B0%97%E8%B1%A1%E5%BA%81HP%E3%81%B8%E3%81%AE%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%96%E5%BA%83%E5%91%8A%E6%8E%B2%E8%BC%89%E3%82%A4%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%B8%EF%BC%88%E6%B0%97%E8%B1%A1%E5%BA%81%E8%B3%87%E6%96%99%E3%82%88%E3%82%8A%EF%BC%89.jpg)
気象庁はウェブ広告掲載に踏み切った趣旨を「持続的・安定的な情報提供を効率的に維持・推進していくため」としているが、背景には、豪雨や地震など大規模災害が相次いで、観測強化や情報発信などの費用がふくらむなかで、予算が増えないという厳しい財政状況があるようだ。
気象庁・関田康雄長官は、先の「2020(令和2)年7月豪雨」での記者会見で、7月4日の熊本県南部を襲った豪雨を想定できなかったことについて「われわれの実力不足」と反省の弁を述べつつ、「必要に応じ、研究費用を政府に要求したい」とも述べた。
いっぽう、国民のいのちにかかわる情報を扱う気象庁がウェブ広告掲載によってその財源の一部をまかなうことについて、異論も出ているようだ。国土交通省(気象庁は国交省の外局)の労働組合は、「防災情報を表⽰する気象庁HPの財政基盤は国が責任を持つべき」として広告の掲載に反対する声明を発表している。
ひるがえって気象庁は、業務上研究・開発した膨大な基盤的気象データのオープン化・高度化を進めるとともに、産学官が連携して気象ビジネスを推進するために「気象ビジネス推進コンソーシアム」を設立し、これを通じて、新たな気象ビジネスの創出に向けた取組みも進めている。
![気象庁ホームページに<br>ウェブ広告掲載へ P6 2 気象庁「気象ビジネス推進コンソーシアム」HPより - 気象庁ホームページに<br>ウェブ広告掲載へ](https://www.bosaijoho.net/wp/wp-content/uploads/2020/08/P6-2_%E6%B0%97%E8%B1%A1%E5%BA%81%E3%80%8C%E6%B0%97%E8%B1%A1%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%8D%E3%82%B9%E6%8E%A8%E9%80%B2%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%82%A2%E3%83%A0%E3%80%8DHP%E3%82%88%E3%82%8A.jpg)
こうした”コンソーシアム”(共同事業体)であればもちろん、そのHPで広告掲載することは問題はないだろう。デジタル化、IoTが進展するなかで官民連携は時代の趨勢であるが、危機管理・防災という国民のいのちにかかわる行政機関であれば、その中核的事業の財政基盤は国がしっかり担保したうえで、関連リソースを活用した財源発掘を”適材適所”で行ってほしいところだ。
〈2020. 08. 16. by Bosai Plus〉