国土交通省資料より「市町村による『防災指針』の作成」

改正都市再生特措法をはじめ、
防災・減災に向けた国交省の直近の動向に注目

●災害リスクが高いエリアで建築規制、居住誘導区域での「防災指針」づくりも

 自然災害に強いまちづくりを目指す改正都市再生特別措置法が去る6月3日、参院本会議で与党などの賛成多数で可決、成立した。近年の相次ぐ風水害で甚大な被害が発生しているが、そもそも浸水想定地域に住宅が増えているという現実があり、抜本的な対策が望まれている。
 同法は、津波や土砂災害の危険度が高い区域に建物を新設する際の規制を強化するほか、市町村がコンパクトなまちづくりに向けた計画を定める際、居住を促す居住誘導区域の中に「防災指針」を策定する制度も創設しようというもので、事前防災を織り込んだまちづくりを志向することから注目されるところだ。
 本紙はこの法案への期待を込めて、本年3月2日付けで同法案の詳細をリポートしている。

防災情報新聞(2020年3月2日付け):災害に強いまちづくりへ「都市再生特別措置法等」の一部改正

P4 1 「都市再生特別措置法等の一部を改正する法律」概要より - 改正都市再生法、<br>「Withコロナ」のまちづくりへ
「都市再生特別措置法等の一部を改正する法律」概要より
P4 2 国土交通省資料より「市町村による『防災指針』の作成」 - 改正都市再生法、<br>「Withコロナ」のまちづくりへ
国土交通省資料より「市町村による『防災指針』の作成」

 同法案を所管する国土交通省の発表によれば、同法案は「頻発・激甚化する自然災害に対応するため、災害ハザードエリアにおける新規立地の抑制、移転の促進、防災まちづくりの推進の観点から総合的な対策を講じることが喫緊の課題。
 また、こうした取組みにあわせて、駅前等のまちなかにおける歩行者空間の不足や、商店街のシャッター街化等の課題に対応するため、まちなかにおいて多様な人びとが集い、交流する『居心地が良く歩きたくなる』空間を形成し、都市の魅力を向上させることが必要。同法律案は、これらの課題に対応するため、安全で魅力的なまちづくりを推進するためのもの」としている。

●新型コロナ危機に対応したまちづくり――「ニュー・ノーマル」の模索、開始

 いっぽう、新型コロナウイルス感染症の蔓延を受けて国土交通省は6月12日、「新型コロナ危機を踏まえた新しいまちづくりの方向性を検討します ~新型コロナがもたらす『ニュー・ノーマル』に対応したまちづくりに向けて~」と題して、有識者に個別ヒアリングを実施すると発表した。新型コロナ危機を踏まえ、「今後の都市のあり方にどのような変化が起こるのか」、「今後の都市政策はどうあるべきか」について検討するため、都市再生や都市交通、公園緑地や都市防災のほか、医療、働き方など、様々な分野の有識者20~30名程度に、6月~8月に個別ヒアリングを実施するという。

 具体的な検討課題、実施要領としてあげられている項目は、
▼今般の新型コロナ危機において、いわゆる「三つの密」を回避することが必要とされる中、満員電車や都心のオフィスなど「都市の過密」という課題が改めて顕在化し、これまでの都市における働き方や住まい方を問い直すことが求められている
▼同時に、新型コロナ危機は、テレワークの導入や自宅近くの公園の価値の再評価など、人々のライフスタイルや価値観を大きく変えている
▼こうした状況を踏まえ、今後の都市のあり方にどのような変化が起こるのか、今後の都市政策はどうあるべきかについて、幅広い観点から検討
▼個別ヒアリングは非公開にて行うが、個別ヒアリングを踏まえ、本年夏頃に「新型コロナ危機を踏まえた新しいまちづくりに係る論点整理(仮称)」をとりまとめ・公表予定

国土交通省:新型コロナ危機を踏まえた新しいまちづくりの方向性を検討します ~新型コロナがもたらす「ニュー・ノーマル」に対応したまちづくりに向けて~

 改正都市再生特別措置法はもちろん、新型コロナ危機到来直前に作成された法律案であり、そのめざす“まちづくり”には「多様な人びとが集い、交流する『居心地が良く歩きたくなる』空間」――いわば、“「三密」のにぎわいの創出”がキーワードとなっている。コロナ後は、「新しい日常」、「Withコロナ」など、生活様式の変革が問われていることから、都市再生と「Withコロナ」の折り合いをどうつけていくかが問われるところだ。

 国土交通省はこのところ、思い切った方針・施策を矢継ぎ早に打ち出している。1月に「総力戦で挑む防災・減災プロジェクト~いのちとくらしをまもる防災減災~」を立ち上げ、全部局が連携し、国民の視点に立った対策を夏ごろまでにまとめる予定だ。

国土交通省:総力戦で挑む防災・減災プロジェクト

 また、「水害・土砂災害に関する防災用語改善検討会」を設置して検討を開始したほか、災害や人身事故等によって列車が遅延・運休した際に、鉄道事業者が駅等において、訪日外国人旅客を含む鉄道利用者に対して、速やかに多言語(日本語、英語、中国語、韓国語)で情報提供を行えるよう多言語掲示物作成システムを作成、全国の鉄道事業者に配布するとしている。
 さらに、最大クラスの災害に備えて避難施設などの建物の改修や、新型コロナウイルス感染症の予防のためスペース拡大といった密集対策も後押しし、自治体に財政支援する方針で、21年度予算概算要求に経費を盛り込むという。

〈2020. 06. 17. by Bosai Plus

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