縦割り排除、横串を刺す
「総力戦」に値する成果に期待
国土交通省は去る1月21日、「総力戦で挑む防災・減災プロジェクト~いのちとくらしをまもる防災減災~」を立ち上げた。今夏までに国土交通省の総力を挙げて、抜本的かつ総合的な防災・減災対策をとりまとめるという。このプロジェクトを強力かつ総合的に推進するため、1月21日、「国土交通省防災・減災対策本部(第1回)」(本部長:赤羽一嘉国土交通大臣)が開催された。
同プロジェクトの趣旨は、次のようだ。「近年、気候変動の影響等により災害の頻発化・激甚化が懸念される中、国民の命と暮らしを守るためには、抜本的かつ総合的な防災・減災対策が必要。国土交通省ではその総力を挙げて、今夏までに抜本的かつ総合的な対策を確立する。このプロジェクトを強力かつ総合的に推進するため、これまでに開催してきた『南海トラフ巨大地震・首都直下地震対策本部』及び『水災害に関する防災・減災対策本部』を発展的に統合し、新たに
『国土交通省防災・減災対策本部』を開催する」というもの。
本部長である赤羽大臣からは、「省内各局の縦割りを排し、横串を刺した形で省全体、国全体で取り組むためのプロジェクトだ」との檄(げき)が述べられている。
国土交通省によれば、同プロジェクトは、「オール国交省」として対策・検討を推進しようというもの。「オール国交省」ということは「省内」での縦割り排除・横串刺しということであり、「総力戦で挑む」というスローガンは、その意気込みを表現したものだ。
直近の報道で、国土交通省が、住宅の売却や賃貸などを扱う不動産業者に対し、大雨が降った際の水害リスクを購入・入居希望者に説明するよう義務づける方針を打ち出す、とあった。相次ぐ豪雨被害を教訓とする対策で、赤羽国交相が1月27日の衆院予算委員会で明らかにしたというもの。居住前から危険性を認識してもらい、逃げ遅れを防ぐ。業者への周知が必要なため、導入時期は未定だが、浸水が想定される範囲などを示したハザードマップを示し、住まい周辺の
危険性を説明することを業者に求める。
本紙は最近の記事で国交省が主導する「コンパクトシティ」や「ウォーカブルまちづくり」を取り上げたが、確かに、こうした意気込みを反映した斬新な施策が目立つ。省域を超えての大規模広域災害や地球温暖化、感染症などに挑むという方向性ではないことは残念だが、複数の部局にまたがる施策や、ツイッターなどのインターネット交流サイト(SNS)を用いた効果的な情報提供の在り方を議論するなど、同プロジェクトが、わが国の防災・減災を着実に、“強力に”一歩前進させるプロジェクトとなることを期待したい。
>>国土交通省:「総力戦で挑む防災・減災プロジェクト」をスタート
〈2020. 02. 02. by Bosai Plus〉