P2 1 首相官邸ツイートより「新型コロナウイルスに係る厚生労働省電話相談窓口(コールセンター)」 640x350 - 新型コロナウイルス “万全の対策”より「臨機応変」で

事態は流動的、正しく怖れることはむずかしい、
だから「想定外・最新情報を常に更新しつつ、自ら判断」を

●先行き見通せず 「新型コロナウイルス」対策は長期戦へ

 中華人民共和国湖北省武漢市で昨年(2019年/令和元年)12月以降、「新型コロナウイルス」に関連した肺炎の発生が報告され以来、世界各地から患者発生の報告が続き、わが国内でも新型コロナウイルス感染症が複数確認されている。厚生労働省は、国内では人から人への持続的な感染を確認していなかったが、2020年1月30日、この事例を初めて認めつつ、感染予防対策としては季節性インフルエンザと同様の「咳エチケット」や手洗いなどを推奨している。
 政府は1月28日、新型コロナウイルス感染症について感染症法上の「検疫感染症」(水際作戦)、「指定感染症」(感染が疑われる人に対して入院措置実施、医療費の公費負担等)に指定する政令を閣議決定した。いっぽう、1月31日(日本時間)に、世界保健機関(WHO)が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」(PHEIC: Public Health Emergency of International Concern/フェイク)を宣言したことを機に、新型コロナウイルス感染症は新しい局面に入り、政府は指定感染症の施行日を繰り上げ、2月1日とした(通常、罰則がある規定は10日間以上の周知期間が必要)。

P2 1 首相官邸ツイートより「新型コロナウイルスに係る厚生労働省電話相談窓口(コールセンター)」 - 新型コロナウイルス “万全の対策”より「臨機応変」で
厚生労働省は、新型コロナウイルス関連肺炎の発生について電話相談窓口を1月28日18時より設置し、ウェブサイト等と合わせて最新の情報発信に努めている

 なお、政府は、新型コロナウイルスによる肺炎が拡大し、事実上”封鎖状態”にある武漢市に残された日本人退避のため、1月28日夜から民間チャーター機の派遣を開始した。29日にその第1便で206人が帰国、退避した日本人の強制的な隔離は人権侵害にあたり法的にも権限がないとして、体調不良者の入院、感染不明者(陰性など)の一部は本人意思に基づいてホテルに隔離となった。国が感染症を理由に退避支援したのは初めてとみられるが、各退避者に航空運賃代約8万円を請求する方針で、その是非については議論もある。

 国立感染症研究所は1月30日朝、これらチャーター便退避者のうち、新型コロナウイルスに関連した感染症の3症例を報告した。1例は患者で2例は無症状病原体保有者。1例の患者は発熱等の症状が認められており、患者の発生が国内で確認された9例目。他の2例は無症状病原体保有者(症状はないが、PCR検査が陽性)として確認された初めてのケースだ。
 厚生労働省は「武漢市から帰国・入国する人、あるいはこれらの人と接触した人は、咳や発熱等の症状がある場合にはマスクを着用」するなどして、「事前に医療機関へ連絡したうえで受診」するよう促している。また、医療機関の受診にあっては「武漢市の滞在歴」または「武漢市に滞在歴がある人と接触」したことを「事前に申し出る」こととしている。

 近年、わが国にも大きな影響を与えた2009年の新型インフルエンザの流行時は、水際作戦にもかかわらず、あるいは強い毒性を持つという想定をくつがえして、症状の軽い患者を中心に急速に拡大した。今回の新型コロナウイルス感染症も世界的に拡大中で、潜伏期間の長さからすでに水際作戦は手遅れとなっている可能性が指摘されている。
 いまのところ、同じコロナウイルスによる重症急性呼吸器症候群(SARS/2002~03年頃に初確認)や中東呼吸器症候群(MERS/2012~13年頃に初確認)に比べて、重症化する割合はそれほど高くないとみられるが、その動向は注意深く見守らなければならない。
 高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)をはじめ新型インフルエンザウイルスなど未知の感染症への対応にはむずかしい側面がある。最悪を想定しての”予防・封じ込め”と、人びとの行動の自由・人権の尊重という相反する要請のバランスを図るからだ。
 ウイルス感染症は世界的な感染爆発(パンデミック)を引き起こし、私たちの命・健康を脅かすおそれがあるだけではなく、経済活動をはじめとする社会機能にも大きな被害を与え得る。国が国家的な危機管理の重要テーマと位置づける「感染症対策」は、私たちの地域防災、とくに高齢者や持病を持つ人などにとっても看過できない”自然災害”となる。
 感染症では「風評・デマも感染する」と言われる。多くのメディアはこうした事態への対処で「正しく怖れる」を合言葉にするが、本紙流に言えば「事態は流動的で、正しく怖れることはむずかしい」、だから「想定内・想定外情報を常に更新しつつ自ら判断する」ということになる。

P2 2 新型コロナウイルス感染症はどのように感染する? - 新型コロナウイルス “万全の対策”より「臨機応変」で
新型コロナウイルス感染症がどのように感染するのかについて、現時点では「飛沫感染(ひまつかんせん)」と「接触感染」の2つが考えられる。「飛沫感染」は、感染者のくしゃみや咳、つばなどの飛沫と一緒にウイルスが放出され、別の人がそのウイルスを口や鼻から吸い込み感染。主な感染場所は、学校や劇場、満員電車などの人が多く集まる場所。「接触感染」は、感染者がくしゃみや咳を手で押さえて、その手で周りの物に触れて、ウイルスが付く。別の人がその物に触ってウイルスが手に付着、その手で口や鼻を触って粘膜から感染。主な感染場所は、電車やバスのつり革、ドアノブ、スイッチなど(イラスト:政府広報オンラインより)

▼コロナウイルスとは(厚生労働省HPより)
 人や動物の間で広く感染症を引き起こすウイルス。人に感染症を引き起こすものはこれまで6種類が知られているが、深刻な呼吸器疾患を引き起こすことがある「SARS-CoV(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス)」と「MERS-CoV(中東呼吸器症候群コロナウイルス)」以外は、感染しても通常の風邪などの重度でない症状にとどまる。詳細は――
>>国立感染症研究所:人に感染するコロナウイルス

〈2020. 02. 01. by Bosai Plus

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