仙台市資料より「居心地がよく歩きたくなるまちなか」のイメージ

ゆったり散歩を楽しめるまちは、災害にも強い! 「マチミチ(防災)会議」

コンパクトシティに続いて「ウォーカブル推進都市」。
かけ声に終わらせない、防災の視点

【 豊かな人間生活ファースト 経済効果優先ではないまちづくりを 】

●“まちづくり”構想が盛ん ただし、コンパクトシティでは
 浸水想定地区に住居構想も


 国土交通省は本年(2019年)3月、全国の街路・まちづくり担当者等が一堂に会する初めての全国会議「第1回 全国街路空間再構築・利活用推進会議」を開催した。この会議は、街路空間再構築・利活用に向けた取組みを全国に広げることを目的とする愛称「マチミチ会議」と呼ばれ、第2回「マチミチ会議」が来年・2020年1月24日に神戸で開催される。
 国土交通省によれば、世界中の多くの都市で、街路空間を車中心から“人間中心”の空間へと再構築し、沿道と路上を一体的に使って、人びとが集い、憩い、多様な活動を繰り広げられる場へとつくり変える取組みが進められている」とし、これらの取組みは都市に活力を生み出し、持続可能かつ高い国際競争力の実現につながるとしている。
 わが国では近年、「Q・O・L」(Quality of Life:人間らしい生活の質)が幸福感の尺度になり、また人口減・少子高齢化を背景に、より生活しやすいまちづくりとなるコンパクトシティ(持続可能な都市)構想が広がりを見せている。そして、国家戦略として、ITC(情報通信技術)やAI(人工知能)の進展を背景に「Society 5.0」という未来社会のコンセプトが提唱されている。近年のまちづくりの身近な例では、災害対策としての木造密集地区の解消に向けた区画整理や、景観の美化はもとより、電柱の倒壊による道路閉塞を避けるための無電柱化などの試みがあるが、東日本大震災後のこうした各種“まちづくり”で欠かせない視点は、「インフラとしての防災」であることに異論はないだろう。

 ところが、本紙が2019年11月18日付けで「コンパクトシティの災害リスク」を取り上げたように、コンパクトシティ構想の居住区が浸水想定区域に含まれているなど、“まちづくり”構想に防災の視点が抜けていることがあるのだ。
 かつて災害対策において防災と福祉の連携がないという状況があったが、いまではその連携は最重要課題のひとつとなっている。まちづくりは人びとの生活全般にかかわる計画であり、構想する側(行政の部署など)が分野別・縦割りであってはならないし、防災はまちづくりに欠かせないインフラとして、あらゆる視点から取り込まれなければならないのだ。

ウォーカブル推進都市一覧(国土交通省資料より)。2019年12月9日現在、201都市のエントリーがあり、さらに増えつつある
2020年1月24日開催の「第2回 マチミチ会議 in 神戸」のちらしより

●”WE DO”――「居心地がよく、歩きたくなるまちづくり」がキーワード

 「マチミチ会議」のような街路空間の再構築・利活用の取組みも、別表に見るように各地・各自治体で急速な広がりが見られる。とは言え、多くの自治体では、将来ビジョンの描き方や具体的な進め方など、どう動き出せばいいのか模索しているのが現状だという。
 「マチミチ会議」は、有識者の講演や先進的に取り組んでいる自治体担当者らのパネルディスカッションを通じて、街路空間再構築・利活用に関する知見を深め、新たなまちづくりを全国に展開していくことをめざすシンポジウムだ。そしてこの取組みが、都市に活力とイノベーションをもたらし、持続可能かつ高い国際競争力の実現につながるともする。さらに、「マチミチ会議」は、”WE DO”(Walkable、Eyelevel、Diversity、Open=「ゆっくり歩ける、人の目の高さ、多様性、開けている」などのイメージを表す英語の頭文字からの造語で、「行動する」の意味)を「居心地がよく、歩きたくなるまちづくり」のキーワードとして掲げ、国土交通省が募集する「ウォーカブル推進都市」(2019年12月9日現在・201都市)とともに、新たなストリートづくりを進めているところだ。

>>「マチミチ会議 in 神戸」(第2回全国街路空間再構築・利活用推進会議)

 わが国の場合、この種のプロジェクトが国際競争力といった経済効果の裏づけとともに語られるのには違和感があるが、Q・O・Lの追求に伴って派生する二次効果であればそれは歓迎すべきことだろう。しかし要は、人の豊かな暮らしの追求が先行すべきであり、卑近な例で言えば、狭い歩道の真ん中に電柱が屹立している状況や、商店街アーケードを自転車が行き来する状況は、豊かな暮らしとはほど遠い現実だ。
 先進諸外国の事例は学べるとしても、その真似ではなく、わが国ならではの豊かな暮らしのあり方への理念が問われる。その場合、生活のインフラとしての防災の視点があれば、おのずと方向性は見えてくるのではないか。

「次期仙台市都市計画マスタープラン」より。仙台市の次期マスタープランに「居心地がよく歩きたくなる(ウォーカブル)まちづくり」が取り込まれている。仙台市は東日本大震災の被災地で、かつ国際的な防災アジェンダ(行動計画)である「仙台防災枠組 2015―2030」が採択された第3回国連防災世界会議の舞台。現代・近未来の防災のあり方を策定したまちの「マチミチ会議」は防災の視点抜きには考えられない

●防災先進・仙台市の「次期都市計画マスタープラン/ウォーカブル」に注目したい

 ここでは具体的に、現在、「ウォーカブル推進都市」に名乗りを上げた201の都市のひとつ、仙台市を例に、その「次期都市計画マスタープラン」から「ウォーカブル」の理念を探ってみたい。仙台市では、市民と行政が都市づくりの目標像などを共有する趣旨で、2012年3月に「仙台市都市計画マスタープラン」を策定している。この現行のマスタープランの計画期間が2020年度末までとなっていて、現在、2021年度以降の次期マスタープランの策定に向けた検討を進めているところだが、これに「コンパクトシティ」とともに「ウォーカブルまちづくり」が取り込まれている。

 言うまでもなく仙台市は東日本大震災の被災地であり、これを受けて同市で第3回国連防災世界会議が開催され、その成果として、国際的な防災アジェンダ(行動計画)となる「仙台防災枠組 2015―2030」が採択された。
 この枠組には、女性や若者のリーダーシップの重要性や、市民・企業・NPOなどさまざまな主体による防災の取組みの必要性など、東日本大震災の経験や教訓、言うなれば現代・近未来の防災のあり方が盛り込まれており、わが国はもとより、世界各国の防災対策の指針となっている。また、「防災環境都市・仙台」として、震災と復興の経験と教訓を継承し、市民の防災文化として育てるとともに、地域・NPO・企業・研究機関等の取組みを海外に発信するなど世界の防災文化への貢献と、快適で防災力の高い都市としてのブランド形成をめざしており、まさに「Society 5.0」ならぬ「まちづくり5.0」ともなるマスタープランを期待したい。

 この次期マスタープランでは、“ウォーカブル”は「居心地がよく歩きたくなる(ウォーカブル)まちづくり」の見出しとともに、次のように記している。「世界の多くの都市で、まちなかを車中心からひと中心の空間へと転換し、人びとが集い、憩い、多様な活動を繰り広げられる場へと改変する取組みが進められている。まちなかの官民のパブリック空間(街路や広場、民間空地など)をエリア一体的にとらえ、居心地がよく歩きたくなるまちなかへの修復・改善を推進する。本市は、ウォーカブルなまちづくりを国と共に推進する「ウォーカブル推進都市」に名を連ねている(2019年8月に賛同)」

 いまのところ、国土交通省の提唱の域を超えていないようだが、防災先進市ならではの「ウォーカブル推進都市」がどのような“ウォーカブル”を進めるか、注目されるところだ。

>>仙台市:次期仙台市都市計画マスタープランの策定を進めています

〈2019. 12. 21. by Bosai Plus

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