SDGsのロゴ 「世界を変えるための17の目標」

人間の危機管理「SDGs」――
一歩ずつ進めたい「持続可能な歩み」

【 経済・社会・環境 3側面の調和ある開発をめざして 】

●持続可能性(sustainable / sustainability)が世界を理解するキーワードに

 近年、”持続可能(な)、持続可能性”(英語では sustainable / sustainability)という用語をよく聞く。翻訳調の言い回しで、事実、わが国にはなかった用語・概念だが、いまでは社会的な課題提起から企業戦略まで、”持続可能(な)、持続可能性”は、現代から近未来の世界を理解するためのキーワードとして欠かせないものとなりつつある。

 用語例として”持続可能な社会”を取り上げてみよう。それはどういう社会か――一般的には、「地球環境や自然環境が適切に保全され、将来の世代が必要とするものを損なうことなく、現在の世代の要求を満たすような開発が行われる社会」と定義される。

 私たちの生活は経済発展、技術革新によって物質的には豊かで便利なものとなってきたが、いっぽうでこの便利な生活を維持するために、私たちの生活の基盤である地球環境の悪化を引き起こしている。産業革命以降、温室効果ガスの排出量の急激な増加は気候変動をもたらし、環境汚染物質は水、大気、土壌を汚染し、鉱物・エネルギー資源の消費は、環境破壊にとどまらず、その奪い合いのための紛争・戦争を引き起こす。

 そして、地球の扶養力を表す指標「エコロジカル・フットプリント(ecological footprint)」によれば、1970年頃には地球1個分でかろうじて人間活動をまかなえていたものの、2010年にはすでにキャパを超え、2050年には地球3個分の扶養力が必要と試算されているという。さらに現代では、人間活動を主な原因として地球上の生物・生命の多様性を危機に陥れており、「第6の大量絶滅時代」を迎えつつあるというのだ。

 「第6の大量絶滅時代」とは、地球の歴史の過去5億年間で地球上の生命は「5大絶滅」と呼ばれる5度の大量絶滅を経験したという学説に基づく。気候変動、氷河期、火山の噴火、そして6500万年前にメキシコ湾に落下し恐竜をはじめとする多くの生物を絶滅させた隕石――絶滅のきっかけとなった原因はさまざまだ。

 いずれにしても地球上の生物は過去5度の大量絶滅を経験し、いまこの世界は6度目の大量絶滅に直面していて、現在のペースで絶滅が進めば、今後数百年で人類を含む動物種の4分の3が絶滅するとの研究がある。そして、その原因をつくっているのは、ほかでもない、私たち人類だという。

 こうした人類の存続にかかわる課題を、世界規模で、持続的かつ強靱(レジリエント)な道筋に移行させるための”野心的な手段”として、経済・社会・環境の3側面で調和ある開発をめざそうというのが「SDGs」である。

持続可能な開発目標(SDGs)の詳細(外務省資料より)
持続可能な開発目標(SDGs)の詳細(外務省資料より)

●SDGs――持続的かつユニバーサル(普遍的、包摂的)な開発目標

 地球の持続可能性への危機意識を背景に、国連を中心とした国際的な取組みとして、”持続可能”を組み込んだ「SDGs」という言葉を最近よく耳にする。SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略で、”エス・ディー・ジーズ”と読む(”ズ”はGoalsの”s”)。

 SDGsは、2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年9月の国連サミットで国連加盟193カ国によって採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された「2016年から2030年までの国際目標」のことである。”持続可能な世界”を実現するための「17のゴールと169のターゲット」から構成され、「地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)」と、その理念を高らかにうたっている。

 SDGsは、”開発”に関連する政策や計画策定において、発展途上国だけではなく、先進国自らも取り組むべきユニバーサル(普遍的、包摂的)な目標であり、もちろん国連主要メンバーであるわが国政府においても、積極的に取り組むべき目標・課題となっている。

 ちなみにわが国では、総理大臣を本部長、官房長官・外務大臣を副本部長、全閣僚を構成員とする「SDGs推進本部」が2016年5月に設置され、そのもとに広範な関係者(行政、NGO・NPO、有識者、民間セクター、国際機関、各種団体等)が集まって意見交換を行うSDGs推進円卓会議が設置されている。

 2018年12月の第6回SDGs推進本部で「SDGsアクションプラン2019」が策定され、「Society(ソサエティー)5.0」(狩猟社会1.0→農耕社会2.0→工業社会3.0→情報社会4.0→IoT、AIなどによる革新社会を5.0としている)の推進や、次世代・女性のエンパワーメントなどがプランに盛り込まれた。

上:SDGsアクションプラン、下:今後の政府対応
上:SDGsアクションプラン、下:今後の政府対応

>>首相官邸:持続可能な開発目標(SDGs)推進本部

>>SDGs推進本部:SDGsアクションプラン2019

●SDGs――「17のゴール」と「169のターゲット」で構成

 SDGsの「17のゴール」は次の内容で構成されている(以下、SDGsロゴに示される課題テーマ。タイトルカットの図版説明を参照)。

SDGsのロゴ 「世界を変えるための17の目標」
SDGsのロゴ 「世界を変えるための17の目標」

1. 貧困をなくそう

2. 飢餓をゼロに

3. すべての人に健康と福祉を

4. 質の高い教育をみんなに

5. ジェンダー平等をみんなに

6. 安全な水とトイレを世界中に

7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに

8. 働きがいも経済成長も

9. 産業と技術革新の基盤をつくろう

10. 人や国の不平等をなくそう

11. 住み続けられるまちづくりを

12. つくる責任 つかう責任

13. 気候変動に具体的な対策を

14. 海の豊かさを守ろう

15. 陸の豊かさも守ろう

16. 平和と公正をすべての人に

17. パートナーシップで目標を達成しよう

 これら「17のゴール」は次の5つの特徴を持つ(外務省のまとめによる)。

①普遍性:先進国を含め、すべての国が行動

②包摂性:人間の安全保障の理念を反映し「誰一人取り残さない」

③参画型:すべてのステークホルダーが役割を

④統合性:社会・経済・環境に統合的に取り組む

⑤透明性:定期的にフォローアップ

SDGsとは(5つの特徴)(外務省資料より)
SDGsとは(5つの特徴)(外務省資料より)

 例として「目標1.貧困をなくそう」をあげると、「あらゆる場所であらゆる形態の貧困に終止符を打つ」とあり、「2030年までに、世界中の極度の貧困を終わらせること、そして各国内のあらゆる次元の貧困を半減させる」ことを打ち出しており、「さまざまな形で貧困状態にある人たちが、必要な社会サービスを利用でき、基本的な生活水準を維持し、誰もが本来持っている自分の力を十分に発揮できる仕組みを整えることをめざす」とあるように、それぞれの目標は、めざすべきゴールを”高らかに”打ち出している。

 一見すると発展途上国に配慮した開発目標と思われがちだが、決してそうではない。わが国の現状を顧みても、「目標1.貧困」では、例えばわが国の子どもの6人から7人に1人が貧困状況にあるとされていることや、「目標5.ジェンダー平等」での、女性の政治・経済の意思決定への参加、妊娠と出産に関する女性の権利などが主要指標において先進主要国では最下位、世界的(149カ国中)にも110位に低迷する(世界経済フォーラム「世界ジェンダー・ギャップ報告書2018」)など、現実的に大きな課題が数多く立ちはだかっている。

 「169のターゲット」は「17のゴール」達成に向けた具体策として各項について約10ずつ設定され、さらに232の指標が決められているので、一度目を通しておきたい。

>>国際連合広報センター:持続可能な開発目標(SDGs)とは

>>外務省:持続可能な開発のための2030アジェンダ

●SDGsと防災――「仙台防災枠組2015-2030」と呼応

 国連は2015年に2つの国際的な目標を採択している――防災・減災に関する国際的な指針「仙台防災枠組2015-2030」(2015年3月/「第3回 国連防災世界会議 仙台」で採択)と、これまで述べてきた「SDGs(持続可能な開発目標)」(2015年9月)である。
 本特別企画では”人間の危機管理”の視点からSDGsを中心に取り上げているが、SDGsには当然のことながら、防災の重要課題も含まれる。

2015年3月、「第3回国連防災世界会議 仙台」が開催された。上写真は、開催当時の仙台駅2階コンコースのバナーと雑踏 Photo by H. Takahashi
2015年3月、「第3回国連防災世界会議 仙台」が開催された。上写真は、開催当時の仙台駅2階コンコースのバナーと雑踏 Photo by H. Takahashi

 SDGsにおける防災への言及はまず、「目標1.貧困をなくそう」の「ターゲット1.5:2030年までに、貧困層や脆弱な状況にある人びとの強靱性(レジリエンス)を構築し、気候変動に関連する極端な気象現象や、その他の経済、社会、環境的ショックや災害に晒される危険性や脆弱性を軽減する」にある。また、「目標11.住み続けられるまちづくりを」は、災害からの回復力が高い安全な都市や居住空間をつくるという目標であり、同「ターゲット11.5」には、「2030年までに、貧困層および脆弱な立場にある人びとの保護に焦点をあてながら、水関連災害などの災害による死者や被災者数を大幅に削減し、世界の国内総生産比で直接的経済損失を大幅に減らす」として、「ターゲット 11.b:仙台防災枠組2015-2030に沿って総合的な政策や計画を導入し、災害リスク管理を実施する」ことが推奨されている。

「国連世界防災白書2019(GAR 2019)」ホームページより。「GAR(The GAR:Global Assessment Report on Disaster Risk  Reduction2019)」は去る5月15日に公表された。同白書は、国連国際防災戦略(ISDR)による総合的な報告書で、2002年から2年ごとに改定されており、今回が第6版となる。なお、UNISDR(国連国際防災戦略事務局)は2019年5月1日以降、UNDRR(国連防災機関/United Nations Office for Disaster Risk Reduction)に名称を変更している。
「GAR 2019」の公表記者会見にあたって、水鳥真美・国連事務総長特別代表(防災担当兼国連防災機関 (UNDRR) ヘッド)は、「このままだと、私たちの生存(可能性)が問われることになる(our very survival is in doubt)」と述べている
「国連世界防災白書2019(GAR 2019)」ホームページより。「GAR(The GAR:Global Assessment Report on Disaster Risk Reduction2019)」は去る5月15日に公表された。同白書は、国連国際防災戦略(ISDR)による総合的な報告書で、2002年から2年ごとに改定されており、今回が第6版となる。なお、UNISDR(国連国際防災戦略事務局)は2019年5月1日以降、UNDRR(国連防災機関/United Nations Office for Disaster Risk Reduction)に名称を変更している。
「GAR 2019」の公表記者会見にあたって、水鳥真美・国連事務総長特別代表(防災担当兼国連防災機関 (UNDRR) ヘッド)は、「このままだと、私たちの生存(可能性)が問われることになる(our very survival is in doubt)」と述べている

 いっぽう、「仙台防災枠組2015-2030」に盛り込まれた7つのターゲットには、開発と関連して以下の項目が含まれている。

 「ターゲット3:2030年までに地球規模でのGDP(国内総生産)に関連し、災害を直接の原因とする経済的損失を減らす」、「ターゲット4:2030年までに、保健や教育施設など重要なインフラへの損害や基本的サービスの崩壊を、レジリエンス(回復力・強靭性)の向上を通じて、実質的に減らす」、「ターゲット6:2030年までに本枠組の実施に向けた国レベルの活動を補完するために、発展途上国への十分で持続可能な支援を通じた国際協力を実質的に強化する」。

>>防災情報新聞2015年4月5日付け:「安倍イニシアティブ」と「仙台防災枠組2015-30」

 このように、日本政府においても、国際協力や国内政策を通じてSDGsや「仙台防災枠組2015- 2030」を誠実に、着実に実施していくことが求められているのだ。

●不確実で不安定化する世界――”野心的なSDGs”で、絶滅危機回避を

 2019年6月に発表された最新の「SDGs達成ランキング」(情報元:ベルテルスマン財団/持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)で、日本は162カ国中15位となっている。17の目標のうち、達成されていると評価されたのは「目標4.質の高い教育をみんなに」と「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」で、ジェンダー平等(女性国会議員の数の少なさ、男女の賃金格差など)や全エネルギー消費のうち再生可能エネルギーが占める割合などに大きな課題があると指摘されている。ちなみに1~5位はデンマーク、スウェーデン、フィンランド、フランス、オーストリアの順。最下位は中央アフリカ、米国は35位、中国は39位。

「Sustainable Development Report Dashboards 2019」より。同ホームページ・サイトでは地図上の各国の「達成度」が色分けされているほか、各国をクリックすると「達成度」が数値で表示される
「Sustainable Development Report Dashboards 2019」より。同ホームページ・サイトでは地図上の各国の「達成度」が色分けされているほか、各国をクリックすると「達成度」が数値で表示される

>>サステナブル・ブランド ジャパン:世界のSDGs達成度ランキング

>>Sustainable Development Report Dashboards 2019(Dashboards) *英語版

 わが国では、2020年には”SDGsオリンピック”ともみなされる東京オリンピック・パラリンピックが行われ、2025年には大阪万博があり、SDGs達成についての関心度は、目標達成年となる2030年に向けて、これから年々高まるものとみられる。

 いっぽう、直近の世界は不確実で不安定化に向かっているように見える。トランプ米国大統領による温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」からの離脱表明や中距離核戦力(INF)全廃条約からの離脱方針、英国の欧州連合(EU)離脱など、国際協調体制からの離反の動き、そして経済政策に見られる保護貿易・自国第一主義への傾斜傾向など、このところ、政治経済分野で国際協調の軽視姿勢が目立つ。これに感化されるように、世界的に、内向き・分断・排除の思想傾向が強まっている感を否めない。不平等も広がるいっぽうであり、2030年までには1%の富める者が地球上の富の3分の2を支配するとの予測もある。

 それらはまさに、SDGsにとって逆風となる。しかし、繰り返すが、SDGsは世界を変革する”野心的な指針”であり、人間・人類の危機管理である。包摂性と多元主義、そして”人間の安全保障”を中心に置くものだ。人間の安全保障とは、人間一人ひとりの保護と能力強化を通じて持続可能な個人の自立と社会づくりを促そうという考え方で、国連が提唱し、わが国においても、多様性と包摂性が持続可能な経済成長や平和と安定につながるという確信のもと、政治、経済、社会システムの根本的な再編の指針としている。

 人類の“自滅装置”とも言える核兵器について、全廃はもとより、削減ですら困難を極めているように、国益と国益がぶつかり合う国際政治のリアリズムのなかで、SDGsを理想論と言い捨てることは簡単だろう。しかしSDGsは、「第6の大量絶滅時代」を避けるために、国際的にいまもっとも広く合意・共有された「開発の目標・理念」であることも明らかなリアリティなのだ。まずはSDGsの「目標・理念=志」を共有・共感しよう。そして、国・民族・宗教・ジェンダーなどあらゆる壁を超えて、共振・共鳴し得る志へと“強靭化”したいところだ。

〈2019. 08. 21. by Bosai Plus

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