大阪府社協の「eコミ」操作研修会で

 防災科学技術研究所「eコミュニティ・プラットフォーム」(以下、「eコミ」)の社会実装の一例(ケーススタディ)として、大阪府社会福祉協議会(以下、「大阪府社協」)地域福祉部が先ごろ(5月24日)、「WEBツール eコミ『情報集約・連携・管理』の2019年度新規モデル事業希望社協の研修会(4市町村)」を行ったので、その趣旨と研修会の模様をリポートする。

●目標は「情報連携強化」、「福祉活動の充実と活性化」、
「災害時にも地域に寄り添う時間を生み出す」

 大阪府社協地域福祉部は、都道府県社協として府内地域福祉推進と、市町村社協が取り組む地域福祉活動・事業への支援を行っている。なお、府内市町村社協(政令指定都市を除く)は4つのブロック――北摂(豊中市など7市3町)、河北(守口市など7市)、河南(東大阪市など9市2町1村)、泉州(岸和田市など8市4町)に分けられ、その連絡会(市町村社協連合会)を中心として市町村社協の連携強化の促進が図られている。

大阪府社協の「eコミ」研修会で。オリエンテーション
大阪府社協の「eコミ」研修会で。オリエンテーション
操作の実技指導の様子
操作の実技指導の様子

 大阪府社協では2015年度から、「eコミ」を活用した地域福祉活動支援モデル事業を実施している。これは、全国各地で多発する災害への支援活動において「迅速かつ適切な情報集約と発信」、「関係機関・団体との連携強化」、「ICTの効果的な活用による災害VC運営の省力化」が課題となってきたところから、「平時の見守り活動や要配慮者支援体制の充実」、「大規模災害に備える情報の収集・発信システムの構築」を図ることを目的とするものだ。

 その活用においては、「平時と災害時のサイクルをしっかりと意識」し、「ふだんの地域福祉活動との連動性を持つ」ことが重要とし、小地域での「見守り活動(要配慮者者の把握)や福祉防災学習などにも活用」できる支援ツールにしたい、としている。
 また、「eコミ」活用で、平時の情報連携の強化と同時に、災害時でも被害状況やボランティアの募集状況などの把握が可能になるとし、目標として次の3点をあげ、ふだんから使い慣れたツールでないと災害時にも使えないとしている。

①見える化:府域での効果的な情報集約と発信、内部の情報連携強化

②活性化:小地域福祉活動の充実と活性化

③省力化:災害時にも地域に寄り添う時間を生み出す

 2015年度から17年度の同「実践報告書」によると、具体的な活動としては、例えば阪南市によるeコミマップへの防災情報の落とし込み、”見える化”としての「まちあるき&マッピング」作成や同市地域福祉推進計画にeコミ活用を明記(15年度)、河内長野市の「台風21号時の被災状況や社協・災害VCの位置情報の落とし込みなどによる災害VC機能の省力化、VC閉所後の被災・福祉ニーズ把握でのeコミ活用」(17年度)など、注目すべき成果があげられている。

 いっぽう、災害時は被災者支援対応で地元社協職員の負担が大きくなることから、データ入力などで外部支援の活用・人材養成への課題なども指摘されている。

●災害に備えて、eコミマップで地域の社会資源を可視化する

 研修会には大阪府社協地域福祉部の職員4名と「モデル事業希望社協」から担当者が参加、またアドバイザーとして桒原(くわはら)英文・コミュニティ・エンパワメント・オフィスFEEL Do代表、福祉分野の若手人材の採用と育成・定着を支援するFACE to FUKUSHIの岩本恭典・事務局長、そして防災科研から水井良暢・研究員が研修講師として参加した。

 今回の研修では、これまでのeコミ実践報告書をレビューし、各モデル事業希望社協の「事業実施計画(イメージ)→本年度スケジュール→次年度スケジュール」の共有を図った。

 モデル事業実施計画例としては、災害ボランティアセンター(VC)設置運営訓練でのeコミ活用や、民生委員児童委員の高齢者調査で得た情報(現在、紙で管理)のeコミマップ機能を活用しての管理、生活支援コーディネーターが作成する「高齢者お出かけ集」(体操の催しや集まりなど高齢者の居場所)の更新でeコミマップ機能を活用、また、2018年台風21号でのVCの支援状況をeコミマップに反映させ、eコミ活用訓練を行う、地域の社会資源をeコミマップで可視化するなどがある。

 各「希望社協」では本年度はこうした実施計画を実践中で、その状況報告が行われ、さらに次年度計画への展望が語られ、参加者間で情報共有が図られた。

大阪府社協「eコミュニティ・プラットフォームを活用した地域福祉活動支援事業」(表紙より)
大阪府社協「eコミュニティ・プラットフォームを活用した地域福祉活動支援事業」(表紙より)

 次に「操作研修会」が行われたが、その冒頭、水井・防災科研研究員から「今後の広域災害を見据える」と題して、大阪で起こり得る災害への対応について、想定される南海トラフ巨大地震を中心に概説があり、大阪府の社協ポータルサイトから地域防災Webで、自分の地域での「起こり得る災害」や「災害特性」を知ることができること、「広域災害・局所災害」や災害事象ごとのリスクを知ることができるとの説明があった。

 そして災害に対応するプレイヤー(国、都道府県、市町村、VC、住民)の対応をタイムラインに即して解説、「どのタイミングで誰とどのような情報を共有するか、前倒しで対処することが重要」とした。

 また、2018年度における大阪府での災害情報の利活用の実態をまとめ、社協が平常時から見守りや関係者連携で支援ツールの利用を意識しておくことが重要で、大阪府北部の地震では、発災初期から被害範囲の特定や救援作業の進捗状況、避難所運営状況、インフラの状況などの迅速な把握が可能となった。台風21号でも風水害、土砂災害、高潮など大阪南部の地域で活用が図られたという。

 水井氏は「防災科研では東日本大震災から主に宮城県内の社協の災害ボランティアセンター(VC)や被災者見守り活動にかかわり、支援ツールの開発をしてきた。社協のみなさんは支援者や団体を導き統括する運営側の主役として期待される。防災科研としてはより成果を高める支援システム・手法の開発に努めたい」としている。

 操作研修会では、eコミマップ作成について機能操作(情報登録、画像、地図の追加作成など)の実地研修が行われた。

>>大阪府社会福祉協議会

>>大阪府社会福祉協議会 地域福祉部

>>本紙関連記事「地域防災の情報ツール 防災科研の「地域防災Web」
(2019. 07. 03.)

防災科学技術研究所は、地域の防災力向上を考え、実践し、支える人の科学的情報に基づく活動を支援するために、地域防災Webの研究開発を行っている。その一環として、基礎自治体職員向けに「地域防災診断体験会」を下記日程で開催する。
・期日:2019年7月12日(金)
・会場:防災科学技術研究所東京会議室(東京 都港区西新橋2-3 マークライト虎ノ門6階)
・対象:基礎自治体職員
>>防災科学技術研究所:地域防災診断体験会

〈2019. 07. 03. by Bosai Plus〉

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です