PDA-惑星衝突、最悪想定

最悪想定のイメージトレーニングとしての「惑星防衛会議」。「確率1%」で”臨戦態勢”

【アニメーション映画『君の名は。』が触発する「地球防災」】

●宇宙・地球科学からアプローチする「地球防災」

 「新海誠監督のアニメーション映画『君の名は。』。この映画は空前絶後の世界の話だと思っている人は多いだろうが、実は十分に起こりうる現実に即した話題だ」――(後述)

 自然災害の最悪想定は、もしかすると、巨大地震でも破局噴火でもカテゴリ6の暴風雨でもないのかもしれない。隕石、あるいは地球接近天体(地球近傍物体)の地球への衝突も、自然災害だと言っていいだろう。そしてそれこそが、最悪ともなり得る。

 隕石の衝突は恐竜の大量絶滅を引き起こしたと考えられている。その証拠となる「巨大隕石の痕跡」がメキシコのユカタン半島に残る。隕石の衝突は地球環境を急激に、一挙に激変させてしまうが、現代でもその危険がなくなったわけではない。地球に隕石や小惑星が衝突する可能性は、だれも否定できないばかりか、確実に存在している。しかもそれがやっかいなのは、「Collision Course(衝突進路)」が年単位で予測可能なことだ。もし、万が一、衝突不可避となると、映画『アルマゲドン』や『ディープ・インパクト』の人間ドラマが現実となる……

「プラネタリー・ディフェンス・カンファレンス」(以下「PDC」:Planetary  Defense   Conference/惑星(地球)防衛会議)と呼ばれる国際会議が去る4月29日~5月3日、米国ワシントンDCで開催された。

上図は「プラネタリー・ディフェンス・カンファレンス」(PDC/惑星(地球)防衛会議)と呼ばれる国際会議(2019年/米国ワシントンDC開催)での資料から、「小惑星衝突模擬コース」。万一、小惑星が地球に衝突すると地球的規模での大災害が起こり得る。小惑星の規模が小さくても都市部への落下だと数百万人、数千万人の事前避難が想定される。まさに「地球防災」が現実の課題となるのだ

  PDCとは、天体(小惑星)の地球衝突がもたらす超巨大災害を人類共通の危機として対策を話し合うもので、2年に1回開催されている。2017年の第5回PDCは、欧米以外で初めて東京・日本科学未来館(東京都江東区)で開催された。当時の模様は下記リンクからうかがい知ることができる。
 ちなみに同会議では、共催者として、JAXA 宇宙科学研究所(JAXA/ISAS)、国立天文台(NAOJ)、日本スペースガード協会(JSGA)、日本惑星協会(TPSJ)といったわが国の主要研究機関が名を連ねている。天体衝突は、宇宙・地球科学からアプローチする地球防災上の重要課題でもあるのだ。

>>2017 5th IAA プラネタリー・ディフェンス・コンフェレンス

PDC資料より、「2019年3月26日に小惑星が発見された2019PDCと地球の軌道、およびそれらの軌道が交差する地点を示す。小惑星は発見と潜在的な影響の間に太陽のちょうど3回以上の軌道をつくる

●「衝突確率1%」で”臨戦態勢”

 PDCでは、科学者、エンジニア、米国連邦緊急事態管理庁(FEMA)代表のような意思決定者らで構成する国際チームが、小惑星が地球に直撃する軌道に出現した場合を想定した現実味のある模擬訓練を実施する。過去にも生物兵器によるパンデミックの発生を想定した同様の訓練が実施されている。

 先ごろワシントンDCで行われた模擬訓練では、シミュレーションで「2019PDC」と命名された小惑星が地球に衝突する可能性を、100分の1(この確率は、現実において対策行動が採られる確率とされる)とし、グループのリーダーたちが参加者たちに状況を報告、事実認定ミッションへの対処、小惑星の軌道をそらせる対策の可能性、地球への直撃が避けられない場合の被害の可能性の最小化方法などについて、アイデアやフィードバックを募っていく。そして、この100分の1 の確率は、2日目には10分の1に急上昇する……

 会議参加者に実際に配られるシナリオは下記のようである(抜粋)――

 「小惑星は2019年3月26日に21.1等級で発見され、翌日に確認。最初の計算は、2019年のPDCの軌道が地球の軌道の0.05au以内に十分接近していることを示している(単位「au」は「天文単位」、太陽からの地球の平均距離149,597,870.7km)。小惑星の絶対的な(固有の)大きさHの初期推定値は21.7なので、潜在的に危険な小惑星(PHA)としての資格」

 「この小惑星が潜在的に地球に影響を与える可能性があるいくつかの将来の日付を特定。最も可能性の高い影響が2027年4月29日に8年以上かけて発生しそうだが、その影響の可能性 は非常に低く、50,000分の1の確率」

 「最初に検出されたとき、小惑星は地球から約0.38au(57百万km)であり、約14km/s)で私たちの惑星に近づいており、ゆっくり明るくなっている。2019年のPDCは発見後数週間にわたって広範囲に観測され、観測データセットが大きくなるにつれて、2027年の衝突確率は増加する」

 「小惑星の物理的性質についてはほとんどわかっていない。見かけ上の等級に基づいて、その絶対的な(固有の)大きさは約H=21.7 +/-0.4であると推定。しかし、そのアルベド(反射率)は未知で、小惑星の平均サイズはおよそ100mから300m以上のどこか」

 「2019年のPDCは発見されてから1カ月以上かけて地球に接近し、5月13日に0.13auの最接近点に到達」

 「天文学者は毎晩小惑星を追跡し続け、2027年の衝突確率は上昇し続けている。2019年惑星防衛会議の初日である2019年4月29日現在、影響の確率は約1%に上昇……」

 そしてシナリオの残りの部分は会議で行われる、となっている。

>>6th IAA Planetary Defense Conference

 ちなみに、現実的には衝突の危険はなく「ニアミス」に終わることが確認されているものの、10年以内に地球の近くを通過する小惑星の観測が続けられているという。その小惑星は「99942アポフィス(Apophis)」と名づけられていて、直径が340mあり、2029年4月13日(金曜日!)に、地球の上空3万1000kmの高度を通過するという。実際に通過するところも見られる可能性が高いというから、この日付けをメモしておこう(?)。

2017PDC資料より、「東京お台場がグランド零になった場合、直径3.8kmのクレータが形成され、直径42km圏内はトラス橋が崩壊する爆風、直径98km圏内の木造建築は爆風で倒壊、112km圏内の窓ガラスは吹き飛び、3700万人が被災する。今から10年間でこれだけの人間を退避させなくてはならない。被害想定ができているので、直接の死者数ゼロが設定目標となる」

 火山の破局的噴火は、発生は1万年に1回ほどとされ、日本では北海道と九州で過去12万年間に10回起きたという。直近では約7300年前に鹿児島県南方の鬼界カルデラの噴火で発生している。本紙も取り上げたが、神戸大学(巽好幸教授)は今後100年での破局的噴火の発生確率は1%と予測しており、「その準備段階に入った恐れがある」と発表した。「確率1%」は、まさに防災上、”臨戦態勢”に入るべき確率のようである。

 余談だが、2017PDCに参加した日本大学理工学部・阿部新助准教授は「新海誠監督の映画『君の名は。』は空前絶後の世界の話だと思っている人は多いだろうが、実は十分に起こりうる現実に即した話題であり、クレーターサイズなども物理的にリーズナブルなサイズで、統計的に見ても、いつ起きてもおかしくないありふれた小天体の地球衝突現象」だとしている。

〈2019. 05. 23. by Bosai Plus〉

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