埼玉県 かて飯

Date: 2019年4月7日Author: bjsmitz0 コメント— 編集

埼玉県の郷土料理「かて飯」                

Photo by くにろく

文・料理:大塚 環(本紙特約ライター/防災士)

 埼玉県は緑豊かな奥秩父山地を西側に有し、中央部分は比企丘陵や吉見丘陵、東側と南側には武蔵野台地や中川低地が広がる西高東低の地形で、県の中央には秩父山地に源流を持つ荒川が流れています。熊谷地方気象台の「埼玉県の気候の特徴」によれば全体的には太平洋側気候に属しており、冬は北西の季節風が強く吹いて晴天が多く、夏は高温となってしばしば雷や雹(ひょう)が発生します。また秩父山地は山岳気候で冬に-15℃を記録したこともあります。

 埼玉県の歴史的災害といえば、やはり地震です。地震調査研究推進本部は当県の地震の特徴を①相模湾~房総半島南東沖にかけたプレート境界付近で発生する地震、②陸域の様々な深さの場所で発生する地震という2つのタイプに分類しています(地震調査研究推進本部「埼玉県の地震活動の特徴」参照)。
 しかし818年に関東地方を襲ったマグニチュード(以下、M)7.5の地震や、江戸市中で1万人以上の犠牲者を出した「安政江戸地震」(1855年、M6.9。埼玉地方は推定震度が大宮5、浦和6で人家被害多数)などの古い地震は、プレート境界型か陸域型かがはっきりとは分かってはいません。

 プレート境界型地震としては「近代化した首都圏を襲った唯一の巨大地震」(内閣府防災情報のページ 報告書 1923 関東大震災から引用)といわれる「関東大震災(関東地震)」(1923年、M7.9)が挙げられます。全国で犠牲者10万5385名、全潰全焼流出家屋29万3387棟という凄まじい被害の中、埼玉県内の犠牲者は316名、行方不明者95名、負傷者497名、家屋全壊9268棟と発表されています(埼玉県ホームページ、以下HP「埼玉県地域強靱化計画」参照)
 そのわずか8年後には陸域型の浅い場所を震源とする「西埼玉地震」(1931年 M6.9)が発生しました。余震が20日以上続いて地面が液状化現象を起こし、重い屋根に壁を押し潰された家屋が多く見受けられました。犠牲者11名、負傷者114名、家屋全壊172棟の記録が残っています。熊谷地方気象台HP「西埼玉地震」参照)。

 埼玉県は想定する大規模自然災害として、「関東平野北西縁断層帯地震」、「東京湾北部地震(首都直下地震)」の2つの地震と、利根川などの一級河川の堤防決壊(洪水)、国内最大級(F3)の竜巻の発生、平成26年の大雪被害を挙げています。
 これらの災害に対し、「事前に備える目標(行動目標)」と「起きてはならない最悪の事態」を具体的に抽出して脆弱性評価を行い、「埼玉県地域強靭化計画」を策定しました。

料理名:かて飯(埼玉県)

 埼玉県全域、特に秩父地方に伝わる郷土料理「かて飯」は「糅飯」とも書き、「糅」は混ぜるという意味を持っています。お米が貴重だった時代にお米のかさを増すために季節の野菜や山菜を入れています。ひな祭りの節句、八十八夜、お盆入りの時に作っていた料理だそうです。
 ちなみに八十八夜とは、童謡「茶摘み」の歌詞「夏も近づく八十八夜~♪」(作者不明)とあるように春と夏の間の時期で、二十四節気の立春から88日目のことです。この日を境に徐々に気候が穏やかになる縁起の良い日といわれ、種まきやお茶摘みに適しています(2019年は5月2日)。昔は、かて飯はハレの日の一品だったようですね。

 現在は県内の小学校給食にたびたび郷土料理として登場しています。学校によって様々な野菜や具を入れているのがとてもユニークです。春には山菜、夏にはずいき(芋がら)を入れるレシピもあり、野菜の旬を知る食育に適したご飯です。
 かて飯の面白い点は炊き込みご飯ではないところ。ご飯は白米として炊き、それとは別に鍋で野菜やきのこを鰹だしの煮汁とみりん、醤油で煮込み、最後に炊きあがったあつあつご飯に具を混ぜ合わせます。炊き込みご飯よりも野菜それぞれの持つ味が引き出され、しっとりとしたご飯になります。
 今回は埼玉県HPわくわくキッズクッキング「8月のレシピ(秩父の郷土料理 かてめし)」を参考にしました。

根菜ならなんでもぴったり!?のかて飯

 かて飯には根菜をはじめとした野菜やきのこが何種類も入ります。今回のレシピでも混ぜご飯には普段あまり入れない大根まで入っています。私は枝豆の代わりにスナップえんどうを刻んで入れてみました。ごぼうや人参、油揚げや椎茸など香りが強い野菜もたくさん入りますが、煮るうちにとても味わい深くなります。根菜は基本的に何を入れても美味しく、あとはお好みで豆や油揚げを入れるといいでしょう。

 子ども向けのクッキングレシピでは包丁ではなくピーラーを使っていますが、大人が作る際には野菜は包丁でみじん切りが適していると思います。色とりどりの野菜を刻みながら、薬膳の五味五色(酸・苦・甘・辛・鹹/青・赤・黄・白・黒)を思い出しました。野菜は持つ色によって性質が異なり、食べた時の体への影響(効果)も変わってくるため、できるだけバランスよく多くの色を食べる、あるいは体質を考えながら食べると良いといわれています。
 苦手な野菜があってもこれだけ小さく刻めば子どもたちにとっても食べやすく、栄養のバランスもばっちりです。季節によって野菜の組合せを変えるのも楽しそうです。見た目も綺麗ですので、お祝い事の日に出しても喜ばれると思います。

〈2019. 04. 07.〉

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