熊本県の防災啓発動画「くまモン棋士の'必殺3手'」より

防災啓発活動の素材は豊富
備えの活性化、あの手・この手

「防災の日常化」に無関心層を引き込む防災啓発
 ――家族、友人、趣味仲間を啓発する素材ガイド

【 日常の防災啓発活動がマンネリ化? 教材の目先を変えてみる 】

●子ども、家族向け啓発素材から、
 おしゃれ・実践ガイド、学習センターなど素材はいろいろ

   熊本県のゆるキャラ「くまモン」は、押しも押されぬ人気No.1のゆるキャラとなっていることに 異論はないだろう。そのくまモンが、熊本地震の経験を踏まえて、県民に自助の取組みを推奨する県の啓発動画『災害に対する自助力アップ!くまモン棋士の”必殺3手”~とめて・ためて・きめて~』に将棋の棋士に扮して登場する。

熊本県の防災啓発動画「くまモン棋士の必殺3手」より
熊本県の防災啓発動画「くまモン棋士の必殺3手」より

 去る2月7日に公開された同動画がそれで、くまモンは熊王戦を女流棋士と戦うが、“とめて・ためて・きめて(”家具の固定、水・食料の備蓄、避難場所・経路の事前確認)の必殺3手(キーワード)を駆使して緊迫の攻防を展開。その対局のさなか、突然地震が……続きは動画を見てのお楽しみ(約11分。英語版=解説キャプション付きもある)。

>>熊本県:災害に対する自助力アップ!くまモン棋士の”必殺3手”

 この種の啓発動画は、本紙でも折に触れて紹介しているが、くまモンは内閣府(防災担当)が制作する啓発動画にも多く起用されるスーパースターだ。食料の備蓄や家具の固定など、家庭で日頃から取り組める『地震への備え』や、共に助け合う被災地支援などについてくまモンが説明する『くまモン特別講座』の講師なども務めている。

 くまモン棋士の動画は、本紙が防災イベント情報で連携する「TEAM防災ジャパン」サイトから同動画のダウンロードもできるので、地域の子どもたちへの防災啓発活動で使えるので、活用してみたい。

>>内閣府(TEAM防災ジャパン):「くまモン特別講座!くまでもわかる!?地震への備え

 また、2015年の「津波防災の日」に向けて制作された動画では、ふなっしー、ちっちゃいおっさんとも共演している。下記サイトで閲覧できるが、このサイトには南海トラフ巨大地震や首都直下地震のシミュレーション動画もリスト化している のでURLを保存版としたい。

>>内閣府防災:YouTubeチャンネル

●「インフォグラフィックス」系イラストの防災ガイドブック

 2月1日付けで「防災に効く“インフォグラフィックス”」を取り上げたので多少かぶるが、防災ガイドブックの挿絵がだいぶおしゃれな感覚が主流となり、イラスト自体だけでも防災のポイントを伝えるインフォグラフィックス手法が目立つようになってきた。

 東京都が2015年9月に、都内の全世帯に配布した防災ブック『東京防災』のイラストは岡村優太氏が担当し、本の全体デザインとともに話題を呼んだ。NPO法人プラス・アーツの阪神・淡路大震災の被災者の体験をまとめた“キモチの防災マニュアル『” 地震イツモノート』のイラストは、防災関係者にはそのタッチは広くおなじみとなっている寄藤文平氏による。

 直近の報道で、宮崎日日新聞(2月4日付け)が、「おしゃれな防災冊子」と題して、『宮崎県民の為の防災BOOK』を紹介した。「肩を張らずに……手描きのイラストと雑誌のようなレイアウトで親しみやすいと好評」とあった。同BOOKの製作者は宮崎市のイラストレーター「スナワチ・スコブル」さんで、もともと家族用にまとめたものだという。地震や津波の概要、備蓄品などを柔らかいタッチで紹介している。

『宮崎県民の為の防災BOOK』本文見開きより
スナワチ・スコブル著・絵『宮崎県民の為の防災BOOK』本文見開きより

>>宮崎日日新聞:おしゃれな防災冊子

 本紙はなにか心惹かれて「スナワチ・スコブル」(Sukoburu     Sunawachi=ペンネーム)さんに連絡をとり、同書の表紙や本文の見本画像掲載を快諾していただいた(左画像参照)。

 スナワチ・スコブルさんは、「自分自身含め、家族の防災意識が低かったけれども、災害について心配はありました。私のように、防災が頭の片隅にはあるけれど、対策行動ができていない、いざ備えを調べてみても情報が多すぎて知りたい情報に辿り着けない――そんな人に向けて、知っておきたいポイントをイラストで分かりやすく紹介しました」と語る。

 防災に関心が薄かった一人の市民の目線で、防災への一歩を踏み出すときのガイド役としての“やさしい”防災BOOKだと言える。

 ちなみに宮崎県のホームページによれば、南海トラフ巨大地震で、避難者は全国で約950万人、宮崎県でも約40万人が避難所内外で避難生活を送ることが予想されている。県が2015年度に実施した県民意識調査で、「災害に備えている」人は43.4%と、災害への備えは十分とは言え       ず、県は危機感を抱いていて、「災害に備えている県民の割合100%」をめざしているという。

 『宮崎県民の為の防災BOOK』は、宮崎県民のための……と銘打ちつつ、広く南海トラフ巨大地      震の想定被災地にもアピールする防災BOOKだと言えそうだ。

 『宮崎県民の為の防災BOOK』は定価300円。宮崎市内の古書店KIMAMA BOOKSでの委託販売のほか、市内各種イベントで出展販売されている。

 昨年(2018年)8月、自衛隊・防衛省と株式会社マガジンハウスが協力して、『自衛隊防災 BOOK』を発行したことは記憶に新しい(本紙でも既報)。同書は、YouTubeで公開されている『自      衛隊 LIFEHACK CHANNEL』をベースに編集されたもので、実用書としては異例のヒットを収めているようだ。

>>KIMAMA BOOKS(宮崎市):スナワチ・スコブル著・絵『宮崎県民の為の防災BOOK

● 『自衛隊防災BOOK』の次は、『防災カード』で自衛対策

>>自衛隊:LIFEHACK CHANNEL

 災害派遣で救助・救出からお風呂の世話まで、被災地の頼りになる危機管理のプロ機動部隊である自衛隊。私たちが日々の暮らしのなかで、万が一危機的な状況に遭遇したときに、身を守るための知恵・知識を自衛隊のノウハウから学べるとあって、テレビメディアなどでの紹介も多い。自衛隊も隊員募集の一助になると広報に積極的だ。

 その自衛隊が今度は、『自衛隊災害派遣カード(ゲーム)』を制作、去る2月1日公開した。製作し  たのは自衛隊岡山地方協力本部(岡山市)で、昨年7月の西日本豪雨を受け、地場企業も加盟する災害支援財団(東京)、日本安全保障・危機管理学会(同)とともに総合的な企画・製作に携わり。災害発生から都道府県による派遣要請、隊員らの配備といった一連の対応を題材としている。
 同カードゲームでは、「親子や友人との交流ツール」として遊び方を2パターン用意。1つは、低 年齢層向けのルールで、だれもが遊びやすい気軽に楽しめるカードゲーム。もうひとつは、一般的なカードゲームと同様のルールで、中・高生から大人までもが楽しめる奥深い構成になっているという。いずれも災害発生から派遣要請があり、自衛隊が被害を最小限に抑えるため、車両・艦 艇・航空機・装備品・隊員等を配備し、その対応要領で競う。

自衛隊岡山地方協力本部が西日本豪雨の経験を踏まえて制作した『自衛隊災害派遣カード』より、上画像はタイトル、下・左「隊員カード」、下・右「装備品カード」

>>自衛隊岡山地方協力本部:自衛隊災害派遣カード

●「マイ・タイムライン」で“逃げない人”をゼロに!

 本紙がめざすゴールは「災害犠牲者ゼロ」である。災害犠牲者をゼロにするキーポイントは、例えば地震では建物の耐震化と家具類の固定であり、津波や洪水では、水につからない場所、家が流されない場所への避難となる。

 それができれば災害犠牲者は限りなくゼロに近づく……というわけだが、そうはなかなか行かないのが現実であり、防災の最重要課題だ。そこで最近、「マイ・タイムライン」というキーワードが急浮上している。

 「タイムライン(防災行動計画)」は、行政など防災関係機関が災害の発生を前提に、起こり得る状況を想定して、いつ・どのような防災行動を・どの主体が行うかを時系列に整理しまとめた防災計画のことを言い、風水害対策としてとくに有効とされ、自治体で導入が進んでいる。

 この「タイムライン」の考え方は、個人・家庭においても有効であることから、「逃げ遅れ」での人的被害を防ぐことを主眼に、個人・家庭にも普及させようというのが「マイ・タイムライン」である。

 「マイ・タイムライン」は、2015年(平成27年)9月9日から11日にかけて関東地方と東北地方で発生した「平成27年9月関東・東北豪雨」(気象庁命名)を受けて、導入が急がれることとなった。鬼怒川と小貝川が氾濫したこの災害でとくに大きな被害を出した常総市が中心となって、「みんなでタイムラインプロジェクト 常総市モデル地区における検討の記録」がとりまとめられた。その後、「マイ・タイムライン」は全国の自治体、自主防災組織の地区防災計画でも次つぎと導入が検討されているところだ。

マイ・タイムラインの流れ

>>関東地方整備局下館河川事務所(茨城県筑西市):みんなでタイムラインプロジェクト

●「防災センター」がハイテク化、装いを新たに新設・改装

 本紙は以前、全国の防災学習施設である「防災センター」の概要をとりまとめたガイドを発行した。

>>《Bosai Plus》:保存版「Bosai Plus 全国の主な防災センター(防災啓発・学習施設)」 (PDF版/No. 141_2016年7月1日号にて掲載)

 館内は体験型防災学習エリア、親子で学習エリア、家庭で防災対策エリア、地域の災害特性エリアなどに分かれ、VRやプロジェクションマッピングなども取り入れて、家庭内のリスクや地域の災害特性、被災時の食事などを学べるようになっている。防災講座も各種予定されており、来たる3月5日には「家庭内の防災を進めよう」と題する無料講座が、3月24日には「春フェスタ2019」で防災に関する講座やワークショップを予定、楽しみながら「もしものとき」の備え方を学び、館内のガイドツアーも実施される。

 昨年(2018年)12月1日に、静岡県浜松市に「浜松市防災学習センター」がオープンした。同センターは市民自らが防災について「考え、備え、行動する」を基本理念に、多くの市民が防災の学習や体験をすることができる場所となる(市はセンターの愛称を市民から募集(1月いっぱいで締切り)、3月下旬に発表予定)。

静岡県浜松市・浜松市防災学習センターのフロア構成図より

>>静岡県浜松市:浜松市防災学習センター

 いっぽう、昨年(2018年)7月には、宮城県塩竈(しおがま)市に「塩竈津波防災センター」がオープンした。こちらは東日本大震災の記録の展示、とくに発災後の1週間に焦点をあて、そのときなにが起き、人びとがなにを求め、状況はどのように変化していったのかを中心に記録・展示している。

 同センターではこの展示により、当時の状況を振り返ることを通して次の災害に備えることが目的とし、もう2度と災害で大切なものを失わないために、いまできることはなにか考えてもらいたいとしている。

 なお、万一、津波発生時には、「マリンゲート塩釜」やマリンゲート塩釜と本塩釜駅方面をつなぐ遊歩道「津波避難デッキ」とあわせて、津波防災センターは一時避難場所として活用される。同施設には、通用口(1階マリンゲート駐車場側手動ドア)の脇と2階マリンゲート塩釜連絡通路側壁に大きな揺れを検知すると自動的に解錠されるキーボックスを設置し、建物の中に入る鍵を取り出して中に入ることができる。屋上には非常用発電機を設置しているほか、館内に食糧や毛布、飲料水を備蓄している。また、塩竈市営汽船欠航時は、浦戸諸島島民の一時待機場所として活用される。

>>塩竈市津波防災センター

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