●ダボス会議――経済人も世界の幅広いリスクを議論

 世界経済フォーラム(WEF。本部スイス・ジュネーブ)は去る1月15日、1月22日から開催される年次総会(通称「ダボス会議」)に向け、「グローバルリスク報告書(The Global Risks Report)2019」を発表した。

 WEFは世界の大手企業などで組織する民間団体で、毎年1月にスイスのダボスで開催される年次総会・ダボス会議には、世界の主要な企業家や各国政財界人、学者、非政府組織NGOが集まり、世界が直面する問題を明らかにして意見交換し、経済人もまた世界の幅広い問題に目を向け、課題解決に向けて取組みを促すことを目的としている。本年のダボス会議には、日本の安倍晋三首相が2014年以来5年ぶりに出席、1月23日、「『希望が生み出す経済』の新しい時代に向かって」と題する演説を行った。

 WEFは毎年、このダボス会議のタイミングに合わせて「グローバルリスク報告書」を発表しており今回が14回目。同報告書は、ダボス会議での討議に活用されるほか、各国の政府や企業らの長期戦略策定にも影響を与えるとされている。

世界経済フォーラム「グローバルリスク報告書-2019年版」より「2019年グローバルリスクの展望」

 報告書は、約1000人の専門家と意思決定者を対象に毎年実施するグローバルリスク意識調査(2019年および今後10年間に世界を混乱させる可能性のある主要な脅威に焦点)の結果をマーシュ・アンド・マクレナン・カンパニーズをはじめとしたパートナー機関の協力のもとで集約・制作されている。調査票には30のリスクが挙げられており、それぞれのリスクについて今後10年での発生可能性と負のインパクトの2つの観点について回答を求めた。

●政治環境に起因するリスクと環境悪化リスク

 今年の報告書において特筆すべき点は次のようになる――

◎地政学的・地経学的な緊張は、2019年の最も緊急性の高いリスク

 上位10のリスクのうち、7つは政治環境に関連する。回答者の90%以上が、2019年には主要国間の経済的対立と経済摩擦の悪化、多国間貿易の規制や協定の崩壊を予想

◎環境悪化は現代を特徴づける長期的リスク

 報告書が注視する全5つの環境リスク「生物多様性の喪失」、「異常気象」、「気候変動の緩和や適応の失敗」、「人為的な災害」、「自然災害」は、今回も影響と発生の可能性の両方で上位に位置づけられた。気候変動に関連したリスクは、2019年に最も影響を与える上位5つのグローバルリスクのうち4つを占める。

▼今回の報告書で最も発生可能性が高いとされたリスク

異常気象/気候変動緩和・適応への失敗/自然災害/データ詐欺・盗難/サイバー攻撃

▼今回の報告書で最も負のインパクトが大きいとされたリスク

大量破壊兵器/気候変動緩和・適応への失敗/異常気象/水の危機/自然災害

●グローバルリスクが、個人レベルでは「充足度の減退」リスクに

 環境リスクは、都市インフラとその開発に対しても問題となる。例えば、海面上昇により多くの都市は地下淡水の採取や高潮用防壁などの対策を講じるために巨額の資金を投じる必要に迫られている。輸送などの重要インフラへの投資を怠れば、流通システム全体の崩壊を招くとともに、それに伴う社会、環境、健康に関連するリスクを悪化させかねない。

 報告書はこのように、異常気象と気候変動は、多くの企業の予想を超えており、より復元力のある対策が必要とされるだけでなく、見込まれる規制動向や顧客からの否定的な反応を先読みする果敢な取組みも求められるとし、さらにこのような不安定さや不確実性が、職場や社会全体に与える心理的影響も大きいとしている。企業は、グローバルリスクが人間にもたらす影響から目を背けてはならないとも付言、企業人に複眼的な視点から企業戦略を展望することを促している。

 昨年、土木学会が日本で起こり得る巨大災害の被害想定を公表、ひとたびそれが起こればわが国は「最貧国化」するおそれがあるとしたが、当のわが国の政財界から特段の反応は見られなかった。企業、国には目先の経済成長ではなく、大局的な視点を持ったリスク評価と戦略が求められそうだ。

>>MARSH:グローバルリスク報告書2019年版

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